日本中を幸せな気持ちにさせた南海キャンディーズ山里亮太と女優・蒼井優の結婚報道。2人を近づけたのが共通の趣味、アイドルグループ「アンジュルム」だった。
会見では「界隈(かいわい)の友達から“アンジュルム婚”と言われて幸せだった」と語った蒼井優。常々アンジュルムを全国民に知らせたいと思っている彼女の気持ちを尊重すべく、大きな注目が集まっているこの機会に改めてアンジュルムの歩みを5つの名曲とともに紹介する。
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彼女たちを紐解くには、まず、10年前へ遡らなければならない。2009年4月、ハロー!プロジェクトでデビューを目指すハロプロエッグ(現・ハロプロ研修生)から、和田彩花、福田花音、小川紗季、前田憂佳の4名で前身グループ・スマイレージが結成。同年6月にインデーズデビューシングルが発売され、2010年5月には「夢見る15歳」でメジャーデビューする。

今もライブで盛り上がるこのデビュー曲は、ちょっぴり背伸びした夏の恋への憧れが描かれている。そんな恋への期待とデビューへの喜びが重なり、真っ白なミニスカ衣装で歌い踊る4人の姿は、それまで以上にきらめいて見えた。

スマイレージメジャーデビューシングル『夢見る 15歳』(2010年5月26日発売)

その年末、日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞し、このままスター街道を突っ走ると思われていた彼女たち。実際、同時期にデビューしたももいろクローバーZ(当時はももいろクローバー)、東京女子流と並んでも、スマイレージは頭ひとつ抜けていたように思う。しかし翌2011年は彼女たちにとって波乱の1年となる。

まずプロデューサーのつんく♂により追加メンバーの加入が発表。追加メンバーというのは、
に関するニュース">モーニング娘。に新メンバーが加入すると決まったときから変わらず、なかなか受け入れられるものではない。しかもその年、初期メンバーの小川と前田が卒業したこともあり、さらにファンからの反発は大きくなった。

祝福だけではなく、否定的な声も聞こえる中で加入したのは中西香菜竹内朱莉勝田里奈田村芽実の4名。今思うと「めげないわ グチグチ言わない やるしかないもんね」と歌う、彼女たちが初参加した楽曲「タチアガール」は、2期メンバーの心を映していたのかもしれない。

スマイレージ7thシングル『タチアガール』(2011年9月28日発売)

そしてスマイレージは、2012年から和田、福田、中西、竹内、勝田、田村の6名に。新曲のリリースとライブツアー、アイドルイベントへの出演などをコンスタントに続けながらも、なかなか大きな成果に繋がらない厳しい時期が続く。

しかし、当初の可愛らしいイメージに加えて、他を寄せ付けない力強さを手に入れたのがこの時期だった。ライブを重ねるたびに、しなやかにパワフルに進化していった彼女たちは、2014年7月、初の武道館公演を成し遂げる。

しかし同年9月、和田と福田から3期メンバーの加入と、グループ名の改名が発表。紆余曲折がありながらも着実にキャリアを積み、「この6人がスマイレージ」と誰もが認めるようになったタイミングでの発表は、ファンを驚かせた。

3期メンバーはハロプロ研修生から選ばれた、室田瑞希相川茉穂佐々木莉佳子の3名。
そしてグループ名は中西が考案した、天使を意味するフランス語の“ange”と涙を意味する“larme”から作られた、ANGERME(アンジュルム)となった。

そんな怒涛の展開への戸惑いは、9人体制最初のシングル「大器晩成」で木っ端微塵に打ち砕かれる。彼女たちの持ち味であるパワフルさに、新メンバー3人のフレッシュさが加わり、ただただ輝かしい未来へのワクワクを感じさせてくれたのだ。初披露となったハロー!プロジェクトのコンサートで一気にファンの心を掴み、2015年のハロプロを代表する1曲となった。

アンジュルムに改名して最初のシングル『大器晩成/乙女の逆襲』(2015年2月4日発売)収録曲

そこからもグループは形を変え続ける。アンジュルムとなったその年に、和田とともにグループを支え続けた1期メンバー・福田の卒業、そして4期メンバー・上國料萌衣が加入。翌年にはグループの歌姫・田村が卒業し、6期メンバーとして笠原桃奈が加入した。2017年にはカントリー・ガールズで活動していた船木結が兼任という形で、ハロプロ研修生の川村文乃とともに6期メンバーに。同じ年にはユニークな愛らしさが魅力の3期メンバー・相川が卒業した。

そして2018年4月、リーダー和田彩花の卒業が発表された。そのリミットは翌年、2019年の春ツアー千秋楽。1年という長いようで短い時間を費やし、初期メンバーとして、そしてリーダーとして、守り続けたグループを離れる準備をすることになった。


加入と卒業を繰り返すなかで、決して立ち止まることはなく、それぞれの個性を爆発させながら走り続けたアンジュルム。和田の卒業は残るメンバーにとっては大きすぎる試練、しかしある意味チャンスともいえる出来事。

その年の10月に発売された「46億年LOVE」は、そんな彼女たちの背中を強く押すような、大きな勢いを持つ楽曲だった。ハロプロには馴染みのあるファンキーな曲調、そしてキャッチーな振り付けは瞬く間に拡散され、ハロプロファンによるイベント「ハロプロ楽曲大賞」で1位を獲得するくらいまでに、アツく支持される楽曲へ成長した。ちなみに蒼井優の結婚を祝うブログで、和田がタイトルにした「愛は超える 46億年」は、この曲から引用したフレーズだ。

アンジュルム8thシングル『タデ食う虫もLike it!/46億年LOVE』(2018年10月31日発売)収録曲

2018年の11月にはハロプロ研修生北海道から太田遥香、一般から伊勢鈴蘭が7期メンバーとして加入。天真爛漫な2人は、アンジュルムに新たな風を吹かせている。

そして今年4月、和田が参加する最後のシングルが発売。エスニック風の楽曲と衣装、ユニークな歌詞が話題になった「恋はアッチャアッチャ」と両A面で収録されたのが、「夢見た15年」だった。

これは、タイトルから分かるようにメジャーデビューシングル「夢見る15歳」を彷彿とさせる、そして彼女がこれまで歩んできた歴史をなぞる内容になっている。しかもその歌詞を書いたのは、和田とともに長きにわたりグループを支え、現在は作詞家として活動する福田花音。「ここからが本当のスタート」と、盟友・和田の、そして後輩たちの背中を押す言葉が綴られているのだ。


アンジュルム9thシングル『恋はアッチャアッチャ/夢見た 15年』(2019年4月10日発売)収録曲

5月にはアンジュルムの楽曲を網羅した、1stアルバム『輪廻転生~ANGERME Past, Present & Future~』が発売。この中には「わたしの夢見た15年」という、「夢見た15年」を一部改変した和田のソロ曲も収録されている。また、久しぶりにつんく♂が彼女たちへ書いた「帰りたくないな。」も、スマイレージ時代に引き戻されるような、必聴の1曲だ。

どんな試練にも真っ向から立ち向かい、戦い続けてきたアンジュルム。涙も怒りも笑顔とパワーに変え、ファンを魅了してきた。6月18日の和田彩花卒業を経て、残る11人のメンバーはさらにエネルギッシュに成長していくだろう。

新リーダー・竹内のもとでアンジュルムがどう変化するのか、和田が歌い続けてきた「夢見る15歳」の「イヤフォンで」というパートは誰に引き継がれるのか……。大きくグループが変容するこのタイミング、見逃すわけにはいかない。