【画像】6月12日放送の第8話「瀧昌に他の女の影が!?芙美子と深見はついにお見合いへ」
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木曜は忙しい。理由は『波うららかに、めおと⽇和』(フジテレビ系)が放送されるからだ。22時のオンエアに合わせて、朝から自分の行動を逆算して考える。19時までに仕事を終えて、適当に夕食を済ませて、20時半までには入浴。女は風呂上がりが大変なので、30分間のインタバールが欲しい。ここまで済ませたら21時半過ぎにビール缶とスマホを握って、テレビ前に着座。レコーダーに録画をすればいいし、動画配信サービスもあるし、外出先でも見られる。でもこの作品ばかりはどうしても大きな画面でリアタイをしたいのだ。
◆少女漫画の世界観におばさん、酔う
『波うららかに、めおと⽇和』について、皆さんに読んでほしいネタは、手から溢れてしまうほどある。
第一話の放送を見終えて、脳内に浮かんできたのは漫画『はいからさんが通る』だった。1970年代に女子中高生たちの間で、紙媒体の漫画として人気を獲得。さすがにこの時期は知らないが、その後、南野陽子主演の映画など次々にドラマ化、舞台化を重ねていく。私は映画から知った。物語は大正時代が舞台で、主人公の花村紅緒が許婚により、それまで全く面識のなかった伊集院忍と夫婦になる。『波うららかに、めおと⽇和』も同じく、主人公の江端なつ美(芳根京子)が帝国海軍の中尉・江端瀧昌(本田響矢)と、親の勧めによって強制的に結婚。時代は昭和11年ではあるが、お互いを全く知らない、異性とも話せなかったスーパー純情なふたりが、心通わせて家族になっていく物語だ。
大正ロマンをテーマにした少女漫画は今でも人気。でも昭和生まれの女性たちにとっては、大正が身近な元号であり、硬派な男性に憧れる傾向も高かったので、今よりもずっと認知度が高かった。そんなドラマが急に木10に飛び込んできたのだから、今から数十年前に乙女だった女性が心震わせて見るしかない。
ちなみに『はいからさんが通る』の夫役は、なんと今『キャスター』(TBS系)で主演を務める阿部寛で、彼の俳優デビュー作だった。
さて『波うららかに、めおと⽇和』に、おばさんたちだけが熱狂していると思いきやそうでもなく、その娘世代もよく見ているのが分かる。人気になった理由は“母娘同世代の視聴”もある。例えば放送中のS N S。ハッシュタグを追うと、ドラマアカウントではない人たちが「瀧昌さま~」「なつ美ちゃん可愛い!」「もうリピ決定!」「放送が終わらないでくれ」と思いの丈を次々に叫んで楽しそう。これぞ令和のドラマ視聴スタイルであり、読むのが面白い。
さらにすごいのは放送後だ。江端夫妻にの虜になった視聴者たちは、放送中ではなくてもずっと「#めおと日和」のハッシュタグでポストを続けている。法律的にはアレだが、気に入ったシーンを自分で切り抜いて、Xに貼り付けて。ムーブメントが完成している。
「ドラマってほとんど見ないんですけど、これはS N Sによく上がってきたから見たよね~。ドラマってどれ見ても同じに見えるけど、このドラマは二人が会えなかったりするのが、逆に新鮮。昔のドラマってそこがいいよね。スマホ持ってないし」
とは、私が通っている立ち飲み屋の20代の友人。そうだよなあ、深夜は人間関係がドロ沼化した同じようなドラマ(深夜ドロマ化現象、と命名)が並んでいるし、ゴールデンタイムのドラマはどうしたって既視感がある。それに若者たちの中心は地上波ではなく、動画配信サービス。テレビ画面ではなく、スマホの中にエンタメが詰まっている。そんな世代に毎週追っかけなくてはならない、連続ドラマとはいささか面倒かもしれない。
そんな最中、『波うららかに、めおと⽇和』は新しい風を吹かせた。キャストの妙、スキンシップの重要性、婚活女性に向けた教示と、ハッシュタグ並みに書きたいネタはまだまだあるけれど、待て次回。
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