アニメ映画において、俳優を起用する動きには賛否がつきまとう。俳優と声優では演技のアプローチが異なり、その差に違和感を覚える人も少なくないためだ。
しかし一方で声優顔負けの表現力を発揮するケースもあり、近年は俳優起用であっても好評に結びつく例が増えている。

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その一例として、まず『ズートピア2』に日本語版吹き替え声優として出演したHey! Say! JUMPの山田涼介を挙げたい。本作は2016年の大ヒット作『ズートピア』から約10年ぶりとなる続編で、動物たちが人間のように暮らす楽園「ズートピア」を舞台に、ウサギの警官・ジュディとキツネの相棒・ニックの奮闘を描く。

山田が演じたオオヤマネコのパウバートは、ズートピア創設者一族の御曹司。柔和で社交的、かつ表情豊かなキャラクターで、作中でも屈指の振り幅を求められる役どころだった。この難役をUS本社の厳正なオーディションで勝ち取った点も特筆に値するが、実際の演技はさらに印象的。事前に配役を知らなければ判別がつかないほど、ほかのキャストのなかに溶け込んでいる。

映画上映後に公開されたインタビュー動画によれば、山田はパウバートを演じる上で"声の演じ分け"を強く意識したという。実際のアフレコ映像でも、嬉しげな表情を見せたり、真剣な面持ちでマイクに向かったりと、その佇まいからは役に応じた感情の切り替えがうかがえた。

そうした観点で見れば、山田と対照的だったのがビーバーのニブルズを演じた江口のりこだ。ポッドキャスト配信者という設定のニブルズは、陽気でフレンドリーな性格。感情表現の幅も広いキャラクターだが、演じている江口は大きく表情を動かすことなくアフレコに臨んでいた。


ニブルズの独特なあいさつ「やあども やあども」でさえ、ほぼ真顔のまま。それでも声にはしっかりニュアンスが乗っており、キャラクターの魅力を損なわない。むしろ、その魅力を何倍にも引き上げていたとさえ感じさせる。今作が声優初挑戦とは思えないほど、確かな爪痕を残していた。

『ズートピア2』の江口のりこのように、声優初挑戦ながら演技力を評価される俳優は少なくない。2026年3月公開の劇場アニメ『パリに咲くエトワール』に出演した門脇麦もその一例だろう。

本作は20世紀初頭のパリを舞台に、夢を追うふたりの少女の成長を描いた物語。門脇が演じたのはロシア出身の元バレリーナ「オルガ」というキャラクターで、バレリーナを目指すもうひとりの主人公・園井千鶴の師にあたる存在だ。

俳優が声優に挑戦する際、「棒読み」と評されがちな要因のひとつが、マイクへの乗り方の難しさにある。声の強弱や抑揚が適切に拾われなければ、どうしても平板に聞こえてしまうのだが、門脇の発声は明瞭かつ張りがあり、威勢のよさが際立つ。師匠としての厳しさを備えたオルガ像に、見事に重なっていた。

また声優初挑戦ではないものの、同年2月公開の『劇場版 転生したらスライムだった件 蒼海の涙編』にゾドン役として出演した堂本光一も衝撃的。
ゾドンはいわゆるヒール役で、堂本は低くじっとりした語り口で表現しているのだが、普段テレビなどで耳にする声とはまるで別人の響きなのだ。言われなければ本人と気付かないほどで、声質もキャラクターに自然と溶け込んでいた。

そして、この手の話題で欠かせないのが『名探偵コナン』。近年の劇場版シリーズではゲスト声優の起用が恒例となっており、出来栄えについては毎回賛否がつきまとう。中でも『緋色の弾丸』の浜辺美波、『絶海の探偵』の柴咲コウ、『純黒の悪夢』の天海祐希は評価が高く、とりわけ天海が演じたキュラソーは「歴代断トツ」という声も少なくない。

現在公開中の『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』には、俳優の横浜流星と畑芽育がゲスト出演。いずれも声優初挑戦ながら、おおむね好評を得ている印象だ。さらに前作『隻眼の残像』の山田孝之、前々作『100万ドルの五稜星』の大泉洋なども評価されており、ここ最近は好例が続いている。

先述の通り、専業声優ではないキャスティングは賛否が分かれがち。それでも最終的に評価を左右するのは、プロかどうかではなく、演技そのものの出来だろう。たとえ本業でなくとも、実力さえ伴えば称賛は集まる――今回紹介した例はそれを裏付けている。

アニメ作品全体のクオリティが底上げされ、ファンの目がひと際厳しくなった昨今。
今後はゲスト声優であっても、"質"が問われる時代となりそうだ。

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