香りと人間の関係を明らかにする研究を行っている財満信宏氏が、香とはなんなのか、なぜ香りを吸うと心と体が整うのか、気になる症状に効くのはどの香りなのかを徹底解説した書籍『香りをかぐという最強の健康法』(アスコム)から一部を抜粋してご紹介。今回のテーマは『香りが認知機能を向上させる』。

○香りが認知機能を向上させる

脳と香りが密接な関係にあることがわかる、面白い話があります。

それは、私たちの意識によって、嗅覚の感度は変動するということ。

例えば、誰かに「臭くない?」と言われたとき、「言われてみれば、確かに臭いかも……」と、それまでに感じなかったにおいを感じるようになったことはありませんか?

これは決して、気のせいではありません。

そのにおいを「嗅ぎたい」という探求の意識が入ると、嗅覚の感度は自然と上がるようにできているのです。

例えば、ソムリエやバリスタ、調理関係の人は、一般的に嗅覚が鋭いといわれています。

それは、様々な食材のにおいを意識的に嗅ぎ分け、それぞれの香りを「知ろう」という探求心があるから。日常的に「におい」と深く接している彼らは、嗅覚が優れており、その機能が低下しにくい傾向があるそうです。

一方で、通常の人の嗅覚は、主に加齢によって低下していきます。

なかでも、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などを患う人は、早期から嗅覚障害の傾向があるというデータがあります。

実際にアメリカで行われた研究では、においの識別スコアが平均点以下だった人は、平均点以上だった人に比べて、5年後にMCI(軽度認知障害、認知症の一歩手前の状態)になるリスクが1.5倍になると報告されています。

また別の実験では、アルツハイマー型認知症の人を対象に嗅覚テストを行ったところ、約35%しかカレーのにおいが認識できなかったそうです。

つまり、嗅覚が低下している人は、正常な人に比べて、アルツハイマーなどの加齢性の疾患が発症しやすいサインともいえるのではないでしょうか。


鼻が悪いと認知症を起こしやすいってこと?

と、驚いたかもしれませんね。

嗅覚を正常に保つことは、今を豊かに生きるためだけでなく、未来の認知機能を健全に機能させるためにも必要なことなのです。

そこで重要になるのが、香りを意識して嗅ぐ習慣をつけることです。

ソムリエは、そのワインの産地がどこで、どのような香りの特徴があるのかを常に考え、嗅覚で感じています。

また、料理人は食材のにおいに敏感で、どのスパイスをどの程度入れるかで変化する香りに気を配っています。

想像してみてください。

目を閉じた状態で、バラとわからずにバラの香りを嗅いだときと、バラの写真を見ながら「これはバラの香りです」と知らされた状態で香りを嗅ぐのでは、感じ方が違うような気がしませんか?

カレーが食べたいなと思ってカレー屋の前を通りすぎるときと、何も意識せずに通りすぎたとき、どっちがカレーの香りを強く感じられるか。当然前者です。

同じような香りがダクトから流れ出ていてもです。

そのものの存在を意識することで、より嗅覚が敏感になり、そしてそれが嗅覚のトレーニングになるのです。

実際に、1日2回、数種類の香りを意識的に嗅ぐというメソッドを嗅覚トレーニングとして推奨している医療機関もあるほどです。

そこで、生活に香りを取り入れる際にも、ぜひ「何の香りか」ということを意識するクセをつけてみてください。


それによって嗅覚が鍛えられ、香りから受ける恩恵も、さらに強力なものになるはずです。

ちなみに、ローズマリーに含まれる香気成分は、交感神経に働きかけ、記憶力を助ける作用があると言われています。

うまく活用すれば、認知機能を活性化させる香りといえるかもしれません。

○『香りをかぐという最強の健康法』(財満信宏/アスコム)

本書『香りをかぐという最強の健康法』は、「香り」が人体に及ぼす驚くべき作用を、最先端の科学的知見から解き明かした一冊。クローブや黒胡椒に含まれる香り成分「β‐カリオフィレン(BCP)」の吸入によって血管を保護する効果を発見し、国際誌『Biomedicine & Pharmacotherapy』にも掲載された著者が、その研究成果をわかりやすく解説している。本書では、症状別に有効とされる香りや、日常生活に無理なく取り入れる方法まで具体的に紹介。運動や食事と違い、「手軽で続けやすい健康習慣」としての“香り”の可能性を提示している。
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