近年、海外旅行の選び方にも変化が見られる中、日本から安心して行ける距離感や、現地での過ごしやすさを重視する旅行ニーズが国内で高まっている。日本人にとってアクセスしやすく、海外でありながら安心感のあるリゾート観光地として、改めて注目されつつある旅先のひとつがグアムだ。
グアム政府観光局(GVB)の担当者にグアム観光の最新事情を聞いた。

○短期滞在・コスパ重視、手軽なリゾートとしてのグアム

コロナ禍と2023年5月の大規模な台風被害により、グアムの観光経済は大きな打撃を受けてきた。

近年、グアムを訪れる観光客数はLCCの直行便が多数運航されている韓国からの観光客が40%台で最大。しかし2025年2月以降、グアムへの日本人観光客数は前年比で二桁の伸びを示し、2025年の1年間でグアムを訪れた日本人観光客は計25万3,629人、グアムへの全訪問者の32.4%と、韓国に次ぐ数字となっている。

GVBの「出国時アンケート」プログラムから収集されたデータによると、グアムを訪れる日本人観光客は若年層カップル、ファミリー、学生旅行者で構成される。

コロナ禍を機に海外旅行のデジタル化が加速し、オンライン旅行代理店の利用率が高まっており、滞在期間は比較的短く平均3~4泊。日本人にとってグアムが「手軽な小旅行先」として位置づけられており、コストパフォーマンス重視の旅行者が多い傾向にあると分析されている。

その支出先は宿泊、飲食、ショッピング、オプショナルツアーなどが中心。コロナ禍以降、航空路の拡充を背景に、着実な回復傾向と関心の高まりが見られる日本人観光客は、依然としてグアム観光における主力市場のひとつのようだ。

○キャッシュレスやライドシェアが普及

ハワイなどよりも手頃な海外のリゾート地の選択肢となってきたグアムだが、コロナ禍以降のグアム観光の大きな変化としてはデジタル化/DX化を挙げる声も少なくない。Apple Payなどキャッシュレス決済に対応したお店が多く、実際に現地での出費のために両替の必要性を感じることはまずないだろう。

GVBが実施している電子クーポンプログラム「GOGO!GUAM PAY」も、そうした取り組みの一環だ。
グアム現地で使える30ドル分の特典がプレゼントされるキャンペーン(2歳以上対象)で、レストランやショップ、オプショナルツアーなどグアム島内の50以上の店舗が対象となっており、スマホから簡単に利用できる。

当初は2026年4月30日までの実施を予定していたが、好評を受けて、このほど2026年5月7日~2026年9月30日に実施期間の延長が決定した(8月中は実施期間から除外。アプリへのチャージ開始日は2026年5月1日)。

加盟店はマップ上でも確認でき、リピーターでもお店やサービスなど新たな発見の機会になりそうだ。

「『GUAM PAY』は日本人観光客向けの施策として、旅行代理店様と3年ほど前から検討してきました。現在はオンライン旅行代理店や航空会社へとパートナー(対象販売事業者)を広げ、団体ツアーやパッケージを利用していない、対象事業者の航空券や宿泊施設を個人で手配された個人旅行者にも30ドルの特典を付与しています」とは、GVB 日本担当シニアマーケティングマネージャーのレジーナ・ネドリック氏。

「GUAM PAY」と併せて、2025年12月1日から実施されている「GOGO!GUAM BONUS」の実施期間も2026年9月30日まで延長される。こちらは現地の参加店舗に設置されたQRコードをスマホでスキャンし、割引などが受けられる無料の旅行者向けプログラムで、加盟店やサービス内容はGVBの公式サイトなどでチェックできる。

グアムでは島内観光の際の公共交通機関という課題も存在した。若年層などの間では「STROLL Guam」というタクシーライドシェアサービスが、車でなければ行けない地元の人気スポットなどへの移動手段として浸透している。

「グアムの公共交通機関の課題はドライバー不足ですので、GVB主導でドライバー育成の教育プログラムをコミュニティカレッジと共同で行なっています。より快適な島内観光にはレンタカーの利用もおすすめです。
グアムは日本の有効な運転免許証があれば、到着後30日以内は国際免許証なしで運転できます。基本的には日本より道路事情がシンプルで、運転しやすく感じられると思います」

○最大の魅力は寛容で多様性に溢れる人々

デイリーのフライトがあり、日本と1時間しか時差がなく、緊急事態が発生しても3.5時間で日本に帰ることができるグアムはワーケーションでの人気も高いという。治安の良さから、親子や英語初心者が本場のUS英語を学ぶ留学先としても有名なようだ。

「グアムの一番の魅力はホテルや空港のスタッフ、ドライバーなど接客サービス上のホスピタリティを超えた人の優しさです」とは、15年以上にわたって現地に暮らし、現在はGVBで働いている日本人の言葉。

「グアムの現副知事はゲイを公表して選出された全米初の副知事なんですよね。選挙の時からカミングアウトしていましたが、とくにそのことで注目を浴びるようなこともなく、ごく自然に島の人たちに受け入れられていました。グアムで結婚式を挙げたゲイカップルで、「こんなに恐怖を感じなかった地域は、グアムが初めて」という日本の方も過去にいらっしゃいましたね」

南国特有の穏やかでおおらかな空気が漂うグアムだが、アジア圏も含めて多種多様な個性を持つ人々が多く訪れてきた地域性を象徴するエピソードかもしれない。海外旅行のハードルが心理的にも経済的にも国内で上がっている中、そんなグアムの魅力も見直されているようだ。

「障害のある人やどんな国籍・人種の人とも垣根がなく、気さくで懐が深い現地人が多いです。チャモロ文化に根ざした温かいおもてなしカルチャー「ハファアダイ・スピリット」に触れ、現地で友人ができてリピーターになる旅行者も少なくないですよ」

なお、現地では「以前よりグアムへの台風到来は減っている」との声もある。夏は日本の都市部などよりも涼しく過ごしやすいとのこと、ネドリック氏は日本市場への期待を次のように語っていた。

「グアムは小さなお子様連れにも安心・安全な地域で、世代を超えて何度もグアムを訪問してくれるリピーターの方も少なくありません。
そうした馴染み深い旅先となっていることが、とても嬉しいです。日本との関係性は非常に強く、グアム観光の完全復活は日本人観光客の回復なしではあり得ないというのが我々の共通認識と言っても過言ではありません。友人として皆さんをお待ちしています」

"日本人にもう一度選ばれる海外リゾート"として、グアムは静かに輝きを取り戻しつつあるようだ。

伊藤綾 いとうりょう 1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催 @tsuitachiii この著者の記事一覧はこちら
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