レビュー

ウイルスを擬人化し、それを屈強な男がなぎ倒すイラストがある。新型コロナウイルスではない。

江戸時代に描かれた、はしかをモチーフにした作品だ。人類は天然痘やペストなど、数々の疫病に悩まされてきた。アートの歴史を紐解けば、人類がいかにして自然の脅威と戦ってきたかがよくわかる。江戸時代に描かれたはしかの猛威に右往左往する人々の姿は、驚くほど現在の我々と似通っている。そこには何百年経っても変わらない人間の姿がある。
本書は、これまで疫病がどのようにアートに描かれてきたかを紐解きながら、アートを取り巻く様々な社会状況を分析し、さらにアートの今後を論じる構成となっている。カラーの図表を交えて豊富な作例を紹介しながら論が進められるので、読み物としても見ごたえのある内容だ。
本書を読み進めていくと、現在見られるアートの変化は、必ずしも新型コロナの流行によって引き起こされたものではないことに気づかされる。社会は絶え間なく変化し続けており、それが新型コロナ感染拡大というきっかけを得て、可視化されたのではないかと思え、興味深い。
人の原動力となるのは「想い」である。それを形にするアートを考えることは、私たち人間がどういう存在であるかを考えることにほかならない。政治や経済とは一味違った、「アート」という視点から新型コロナウイルスが社会に与える影響を考えてみると、これまでにない、新しい視野が開けるはずだ。

本書の要点

・現在のアート市場をけん引しているのは、世界の富の半分を有するトップ1%未満の富裕層である。新型コロナ感染拡大に伴い、一時的にアート市場は縮小する可能性があるが、じきにそれまで以上の水準まで回復するだろう。
・新型コロナ感染拡大にともない、バーチャル・ミュージアムへの移行など、テクノロジーを利用した変化が起きているが、その収益性が課題だ。
・アートは「ポスト人間中心主義」へと移行している。人類がどんな危機に瀕しても、それと対峙するアーティストと、アートを求める心は変わらない。アートは死なない。



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