レビュー

現代を生きる私たちは、朝から晩まで仕事や用事に追われて、ゆっくりと過ごす時間を持ちづらい。ふと気づくと、年月があっという間に過ぎていくのに、その間、たいしたことは何もできなかったと感じることが多いのではないだろうか。

老後になったら、のんびりやりたいことをして過ごそうと考えていても、定年や年金受給開始が先延ばしされていき、健康に過ごせる時間はほとんどなくなっているのかもしれない。
本書には、セネカの三つの文章が収録されている。知人に宛てた手紙である「人生の短さについて」の中では、多忙な職から身を引いて閑暇な生き方をするようアドバイスが送られている。便利な道具に囲まれてさまざまなかたちで時間を節約できるようになったはずの現代人は、むしろ節約した時間をまた別のかたちで費やし、ますます多忙になっている。時間のリズムが加速した生活を送る私たちが、本当の意味で人生の時間を充実させるために必要なものは何かと、セネカの言葉から考えさせられることも多い。
禁欲主義を掲げるストア派の哲学者であるセネカは、欲望と執着を捨てて、ネガティブな感情のゆらぎを抑え、不動の心の状態に至ることを、人間にとって最も幸福な生き方とした。
人間関係や仕事の悩み、将来への不安と、古代人も現代人も、心を揺るがす共通した原因を持っている。曇りのない澄み切った心で、穏やかに生きられるようになるために、現代の私たちにも役に立つ言葉をたくさん見つけられるのではないだろうか。

本書の要点

・人生において時間は十分に与えられていないと多くの人は考えているが、それは私たちが多忙に生きることで時間を浪費しているからだ。人生には有効に活用できるための十分な時間が与えられている。
・自分の人生を生きるためには、時間を他人に与えてはならず、自分自身のためだけに使わなければならない。閑暇な時間は、退屈潰しのために浪費するのではなく、過去の英知を学ぶために使われるべきだ。


・周囲と比較して心が不安定になるときには、今置かれた環境に慣れて、出来ることに力を尽くし、休息や閑暇とうまくバランスのとれた生き方をすると良い。



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