レビュー

特に2025年は、民主主義について考えさせられた年だったのではないか。アメリカにおけるトランプ大統領の就任や、それに伴う政治的な混乱。

日本に目を向ければ、2025年の参議院選で頭角を現した政党や、それと並行して起きたSNSでの意見の対立。同年後半には政局が揺れ、2026年の衆議院解散総選挙では与党が圧勝した。民主主義とはいったい何なのか。テクノロジー、暴力、平和、分断。さまざまな要素が民主主義の本質をより曇らせていく。こうした激動の時代にあって、子供と民主主義をテーマにしたのが本書である。
著者は現在、教育者育成事業に従事しているが、大学では政治学、大学院では公共政策学を学び、学生のころからいくつもの国を訪れ、見聞を深めている。ソニーでテクノロジー領域の戦略立案に携わったあと、「教育」にたどり着いたという類を見ない経歴は、本書の中でも活かされている。
本書のタイトルは『こどもと民主主義をつくる』だ。子供に対して民主主義を一方的に教えるのではなく、子供の発達段階に応じた教育理論と現場での実践から、民主主義をあらためて考え直すものである。
世界中で分断とポピュリズムが進むいま、教育に、そして大人には何ができるのか。すべての市民、大人たちが触れるべき一冊といえるだろう。

本書の要点

・アメリカの哲学者ジョン・デューイは「民主主義」をコミュニケーションに基づく共同的な生活様式とした。コミュニケーションが流動し、その中で人々は制度を柔軟に調整する。これがデューイの民主主義である。
・民主主義の精神を支える営みは、小学校に上がる前に始まっている。子供の意見は「(真剣に)考慮される」べきであり、意思決定に反映されなくてはならない。
・現代のティーンエイジャーはSNSの危うさも便利さも知りながら、連帯感と葛藤のなかで生きている。
・国際バカロレア機構では知識をどのように得たかを重視する。それを繰り返すことで、自分の「知識」を批判的に考察していく。



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