日本初の女性弁護士・三淵嘉子さんの人生をモデルにした、NHK連続テレビ小説「虎に翼」。伊藤沙莉(30)演じる主人公の猪爪寅子の夫、佐田優三役を好演しているのが俳優の仲野太賀(31)だ。


 7月スタートのドラマ「新宿野戦病院」(フジテレビ系)で小池栄子(43)とW主演を務めるほか、2026年放送のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」で主人公の豊臣秀長役に抜擢されるなど、いま最も注目度の高い俳優の一人である太賀は、俳優の中野英雄(59)の次男で、言わずと知れた2世俳優でもある。


 父・英雄の当たり役といえば、古くは1992年放送の鈴木保奈美(57)主演ドラマ「愛という名のもとに」(フジ系)で演じたチョロ役だが、なんといっても映画やVシネでのヤクザ役だろう。北野武監督の「アウトレイジ」(10年)、「アウトレイジ ビヨンド」(12年)や「日本統一」シリーズなど、さまざまなヤクザ作品で存在感を示している。そんな英雄は、太賀の活躍に目を細めているという。


「SNSに太賀の出演情報をアップしたり、太賀について『最高だ!!』『今日の太賀良かった!!』と投稿したりと、息子の活躍がなにより嬉しい様子が伝わってきます。役者としての存在感はまだまだ父親に及ばないものの、民放やNHKで活躍する太賀はすでに役者として『父親を超えた』なんて声も聞こえてきます。

そんな2人の親子共演を期待するファンも少なくないようです」(スポーツ紙記者)


 民放の旅番組での共演のほか、英雄が監督、脚本を担当した短編ドラマに太賀が出演しているが、本格的な共演には至っていない。《ヤクザ作品で親子共演が見たい》なんて声もあるが、2人の共演がなかなか実現しない“ある事情”が囁かれているという。



ヤクザ映画で役者が避けて通れなかった「付き合い」

 東京都で暴力団排除条例(2011年10月)が施行された前年に、第1作目が公開された「アウトレイジ」に関して次のようなエピソードがあると映画関係者は話す。


「アウトレイジ第1弾が興行収入7億5000万円のヒットを記録したことで、北野監督は第2弾の『アウトレイジ ビヨンド』の企画に取り掛かりました。前作は主演の(ビート)たけし演じる大友が、中野扮する木村に刑務所の中で刺されて終わっている。大友が生きているという設定の第2弾では、中野は欠かせない存在でした」


 だが、「アウトレイジ ビヨンド」で欠かせないはずの英雄の出演が危ぶまれる事態になったという。


「第2弾は11年4月にクランクインの予定でしたが、その年の3月11日の東日本大震災で延期に。その間、同年10月に東京都で暴排条例が施行されました。90年代後半に当時、武闘派で知られる指定暴力団の組長宅で開かれた新築と誕生日祝いのパーティーに、清水健太郎安岡力也などと共に参加している動画が今でもYouTubeで見られるように、中野は反社との交際が疑われました。中野は他にも、出資法違反容疑で逮捕され懲役6年の実刑を受けた“闇金の帝王”と呼ばれた山口組の2次団体、当時の五菱会幹部と交際の噂があったのです」(前出・映画関係者)


 暴排法施行の前年から、芸能界やテレビ業界では暴力団と芸能人の“黒い交際”、反社チェックが始まったという。


「暴力団との交際が疑われた中野は、当時の北野映画のプロデューサーで、『オフィス北野』(現・TAP)社長だった森昌行氏に呼ばれた。結局、『週刊実話』(2011年10月20日号)で暴力団との交際をカミングアウトし絶縁宣言したことで、ビヨンドへの出演が決まったといいます。

今では許されないものの、昔のヤクザ映画に関わっていた、いかなる役者もこうした交際を避けて通れなかった事情もあります」(前出・映画関係者)


 戦後、暴力団が日本の芸能やプロレスなどの興行を仕切ったことで、映画業界や芸能界との関係を深めていたため、英雄に限らず、昔のヤクザ映画に出演していた俳優と暴力団が大なり小なり関係していたことは、否定しようのない事実だ。


 暴排法以降もヤクザコンテンツは日本のみならず世界的にも人気を集めているが、昔のように暴力団との交際はイコール廃業につながるため、実生活で付き合いのある役者はほぼ皆無といっていいだろう。


「ヤクザ役を演じることが多いと、どうしてもそのイメージが役者にまとわりついてしまうものです。しかし、親の七光りではなく自らの実力で頭角を現し、クリーンなイメージの太賀に悪影響が及ばないように、中野自身もそれを十分心得ているでしょう。太賀の所属事務所が2世売りを嫌がっているという噂も聞こえますが、ファンが望むような親子共演が実現するといいのですが……」(芸能ライター)


 父親を尊敬しているという太賀と英雄の共演作をいつか見てみたいものだ。


(本多圭/芸能ジャーナリスト)