自民党総裁選が異例の展開になっている。


「コバホーク」こと小林鷹之元経済安保相が11日、総裁選への出馬を表明。

同日の勉強会後、報道陣の取材に応じ、16日にも会見を開いて経済政策などを説明すると明かした。


 ポイントは、野党に歩み寄る姿勢を見せたことだ。野党が主張する消費税減税について考えを聞かれ「消費税を含めて、さまざまなアプローチがある。聖域を設けることなく検討し、野党と誠実に向き合っていく」と強調したのだ。


 野党と距離を詰めているのは小林氏だけじゃない。前日に出馬表明した茂木敏充前幹事長も「新たな連立の枠組みを追求する」と話し、国民民主党日本維新の会の名を挙げていた。野党をことごとくバカにしていた自民が、ここまで歩み寄る理由は明白だ。


「衆参共に少数与党のため、今後、国会運営するには野党の協力が不可欠。新総裁には一部野党との連立交渉や、連立しないまでも調整する能力がなければ国会運営がままならない。そのため、野党と調整できるか否かが総裁選の争点になっている。野党との近さがアピールポイントになっているのです」(永田町関係者)


「野党争奪戦」の様相だが、一歩リードしているのは小泉進次郎農相だ。後ろ盾の菅義偉元首相は維新と親密。

進次郎氏も大阪・関西万博の視察で、維新代表の吉村洋文府知事と行動を共にし、蜜月ぶりを見せつけた。さらに、もう一人の後見役、森山裕幹事長は維新のみならず立憲民主党とのパイプも持つ。


「進次郎さんは10日には国民民主の榛葉幹事長と面会。農相として榛葉さんの地元・静岡での竜巻被害について陳情を受けた。榛葉さんが『総裁選に出ないんですか』と聞くと進次郎さんは『ふふふっ』と思わせぶりな態度を取った。お互いに蜜月ぶりをアピールした格好です」(官邸事情通)


 野党とのパイプの太さは随一というわけだ。



総裁選レースは進次郎農相が一歩リード

 来週にも出馬表明するとみられる林芳正官房長官も9日夜、維新の馬場伸幸前代表と会食。維新の連立入りなどについて協議したとみられている。“オレも維新と話ができる”と強調した格好だ。


「会食を仲介したのは、落選中ながら、菅元首相、馬場前代表と近い武田良太元総務相。彼の政界人脈は広いが、麻生太郎最高顧問とは犬猿の仲。この一件だけで、麻生派議員は『林はダメだ』となりかねない。

林さん自身は総裁選勝利にかなり手応えを感じているようだが、功を焦った可能性がある」(維新関係者)


 一方、11日出馬表明した小林氏は野党に秋波を送ったものの「パイプはほぼゼロ」(野党幹部)だという。それどころか「発言が慎重で社交性もイマイチ」(同前)。野党争奪戦で出遅れている。


 さらに絶望的なのはタカ派の高市早苗前経済安保相だ。


「高市さんは、民主党政権を『悪夢』と評した安倍元首相のシンパ。野党議員とはほとんど接点がなく、ハッキリ言えば嫌われている。総理総裁になっても協力を得られず、行き詰まるとみられています」(野党関係者)


 麻生氏は財務相時代、国会で「我々は野党と仕事しているんじゃない」と暴言を吐いていたが、これが自民の本音だろう。今さら、野党との蜜月アピールとはしらじらしい限りだ。


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