姑息な手法にいたく寛大な措置だ。自民党総裁選で小泉進次郎農相陣営のステマ問題のこと。

動画配信サイトへの「やらせ」投稿依頼が発覚し、進次郎本人がすぐに認めて謝罪すると、ライバル候補は一斉に“おとがめなし”である。


 27日の総裁選ネット討論会では「候補自身も謝罪されている」(小林元経済安保相)、「責任を感じると話しており、“ワン自民”でやっていきたい」(茂木前幹事長)、「放っていてもそういう(進次郎称賛の)コメントは出ていた。もったいない」(林官房長官)とのんきなもの。これには〈ビジネスエセ保守〉〈仲間がいない〉と揶揄された高市前経済安保相も「(他候補と)同じ意見」とおおらかな態度を取らざるを得なかった。


 ステマ(ステルスマーケティング)とはレビューや口コミに見せかけた宣伝行為を指し、2年前から景品表示法により規制対象となっている。政治活動は対象外とはいえ、進次郎陣営が世論を欺いたことに変わりはない。公正を期すべき選挙への信頼を揺るがす行為だ。


■「普通の選挙と何が違うの」


 ところが、党内にはライバル陣営に限らず、ステマ依頼という恥ずべき行動を不問に付すムードが広がる。ある議員秘書は半笑い気味に言う。


「ネット空間も地上戦の延長というか。選挙のたび支援者に街頭演説への動員を呼びかけたり、議員本人のSNS投稿の拡散をお願いするのは常識ですから。『普段の選挙活動と何が違うの?』という感覚です」


 あきれたステマ容認の体質だ。

しかし街頭演説の動員を巡っては、2021年の衆院選で業界団体が参加者に日当5000円を支払い、選挙違反を指摘されてもいる。SNSに関しても、野党への誹謗中傷ツイートを投稿・拡散し、訴訟に発展したアカウント「Dappi」と自民の癒着疑惑もくすぶったままだ。


 これらの延長線上に今回の姑息な手法があり、見逃されるなら「ステマ体質」は放置できない。自民党内には「永田町の常識は世間の非常識」という使い古された言葉がまだ生きている。


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