物事の“ほつれ”に独特のユーモア

 今月5日、「永野映画CHANNEL」(BS-TBS)がスタートした。同番組は、YouTubeチャンネル「永野CHANNEL」でも熱く映画愛を語ってきた“シネフィル”の永野が、かつての名作・怪作映画を独自の視点で解説。

オープニングで見どころをガイドし、放映後に番組演出・新井勝也氏との“感想戦”を展開する徹底したプログラムだ。


 記念すべき1回目は、アレックス・コックス監督の商業映画デビュー作「レポマン」(1984年)。勤務先のスーパーマーケットを解雇され悶々としていたパンク青年のオットーは、やがてレポマン(ローン未払いの客の車を強引に取り立てる闇業者)の男と知り合い、そこで働くことに。


 ある日、1台の車に高額な賞金が掛けられたことを知り、オットーたちは目の色を変える。商売仇との駆け引きの末に回収に成功したものの、その車には宇宙人の死体が積まれていて……といった物語だ。


 感想戦では、警官の男が車のトランクを開けた瞬間に光に包まれ足元だけを残し姿を消してしまう名シーンのほか、「beer」とだけデザインされた缶ビールのお洒落感に触れ、カーチェイスの迫力のなさをイジるなど永野節が炸裂。とりわけ印象的なのは、永野が映画のラストシーンに深く共鳴していたことだ。


 オットーを乗せた車が、UFOのごとく発光し夜のビル群の上空を飛び回る。永野は、この衝撃的なフィナーレに「スポーツとか恋とか夢とかの逃げ場がない人は、UFOで飛んでいくしかないんだろうな」と口を開きこう続けた。


「自分も芸人として何十年も……ビックリされるんですよ、『なんで(芸人を)辞めなかったんですか?』と。それ現実逃避なんですよ。辞めたら待ってるんで、(落ちこぼれの)オットーみたいな生活が。

宮崎帰ったら。もうそれしかないんですよ」


 2015年、芸歴20年超にして「ラッセンネタ」でブレークした永野。その後バラエティー露出は減少したが、斎藤工主演の映画「MANRIKI」で原作・脚本を担当し、トークライブや配信番組などに出演する中で、“本来の永野”の面白さはコアなファンから支持され続けた。


 コロナ禍の2020年6月に「永野CHANNEL」を開設。当初、再生回数は伸び悩んだが、アメリカのミクスチャー・バンド「リンプ・ビズキット」を紹介すると数字が跳ね上がった。以降、音楽や映画にまつわる語りだけでなく、特異なコメントや振る舞いでも脚光を浴び、配信メディアを席巻。永野自ら「配信王」と名乗り、再びテレビで活躍するようになった。


「まだ疑ってるんすよ、僕アレックス・コックスの才能を」などと笑って語る姿は、店のメニューに不満を漏らしつつ連日足を運ぶ常連客のようで実に人間臭い。紆余曲折を経た永野ゆえに、物事の“ほつれ”に独特のユーモアを示せるのではないか。


(鈴木旭/お笑い研究家)


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