【あの頃、テレビドラマは熱かった】


 「華麗なる一族」
 (2007年/TBS系)


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 アメリカでiPhoneが発表された2007年1月。日本ではワンセグ搭載のガラケーでテレビを見るのが先端だった。

浦安の“夢の国”の行列では、おとなしくガラケーを見つめるコワモテ集団がいて、その光景は異様ですらあった。そんな時期にTBS日曜劇場で放送されたのが、山崎豊子原作、木村拓哉(当時34)主演の「華麗なる一族」だった。


 1960年代の神戸を舞台にした財閥の物語は74年に映画化、ドラマ化されているけど、キムタクを崇める層には縁遠い昔話ではある。それでも視聴率は初回27%台、最終回が30%超えでこの年最大のヒット作となった。関西では最終回が40%近い数字で、スポーツ紙には「キムタク紅白抜いた」の記事が躍ったのを覚えている。


 誰もが認める超超ウルトラスーパーアイドル・キムタク様も三十路を過ぎ、主演作は03年のパイロット、04年のアイスホッケー選手、05年のレーサーと“コスプレシリーズ”が続いていた頃。いや誰もシリーズとは言ってないけど。


 ただ、明らかに毛色の違う“昭和の財閥の息子”設定に意表を突かれたネット民からは《ネタ尽きたか?》なんて言われたりもした。それでも重厚な山崎豊子ワールドのヒーローを、昭和風スーツと作業着姿で演じきってヒットさせるのは、さすがとしか言えない。「キムタクをかっこよく」という縛りの中で、大人も見応えある作品に仕上げた制作陣にも心から拍手。


 ただ、正直なところ、僕はこのドラマの記憶といえば“人面魚みたいな鯉”ぐらいしか残っていない。TBS開局55周年企画だったのに、視聴率ダントツだったのに、ごめんなさい。

いや、確かにキムタクはかっこよかった。でも、「キムタクがかっこよければいい」のと原作の重厚さには、どうにもズレがあって。2Kのクリアすぎる画面も妙に嘘っぽくて。せめて往年の“土ワイ”みたいなざらついた画面だったら乗れたのかもしれない。


 そうそう、鯉の名は“将軍”。ちょいちょい意味深に出たのだけど、少し前の「シーマン」みたいなおっさん声で何か語り出しそうな雰囲気ではあった。ソフトバンクの“お父さん犬”の声でもいいけど。あっ、北大路欣也はキムタクの父親役やって、ドラマ終了後に“お父さん犬”になったんだったっけ。


 さて、キムタクコスプレはこの大ヒット作の翌年、首相にまで上り詰めていったん終了。40歳になった13年にはアンドロイドになるけど、数字はついてこなかった。もうiPhone5になってたし、そりゃキムタクもテレビも、見られ方が変わって当然だ。 


(テレビコラムニスト・亀井徳明)


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