【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#93


 アルバム『マジカル・ミステリー・ツアー』(1967年11月27日)①


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 1967年8月、ビートルズを育てたマネジャー、ブライアン・エプスタインが亡くなった。


 そもそも『マジカル・ミステリー・ツアー』とは、エプスタインの死後、ポールが中心となって企画したテレビ映画のことなのだが、エプスタインのビジネス的審美眼を通さ(せ)なかったことも大きく響いたのだろう。

失敗作品として酷評されることとなる。


 最近では、といっても14年前だが、2012年にフジテレビで放送された。そのとき、あらためてしっかりと見たのだが、正直、映像作品としてはレベルが低い。「映画」「作品」というよりは、ビートルズのMVとして流し見するべき映像だと、私も思う。


 しかし、それはそれとして、アルバムとしては、極上のポップソング集になっている。


 マニアのお歴々が絶対言わなそうなことを小声で言えば、どこか窮屈で、肩の凝る『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(67年)よりもポップ、というか、まさにマジカルで実に楽しいんだよ。


 なお現在、オリジナルアルバムとして扱われているのは、当時アメリカで発売されたもの。


 イギリスでは、アルバムの1~6曲目(LP時代のA面)が、シングル2枚組に収められて発売されたのだが、アメリカでは、当時のシングル盤を寄せ集めたB面を加えて、1枚のアルバムとして発売。こちらが定着したということ。


 このB面がいいのですよ。何といっても、私の思うビートルズ最高傑作曲が入っていて、アルバムのマジカル指数をぐんと押し上げるのだから。


 というわけで映像自体は「失敗作品」だったが、音楽、アルバムとしては、なかなかの聴き応えという感じで構えてもらえればよいだろう。


 それにしても、67年のビートルズのワーカホリックぶりに恐れ入る。


『サージェント・ペパーズ~』とこのアルバムと、さらに、あの最高傑作曲を発表しているのだから。途中で、彼らにとって最大の存在だったエプスタインが亡くなってしまったにもかかわらず、である。


 天才って素晴らしい。若いって素晴らしい。ゆえに若い天才って、めちゃくちゃ素晴らしい!


 余談。この「マジカル・ミステリー・ツアー」というタイトルは、よくパロディー化される。


 私の知る限り、日本における最高傑作はタモリのアルバム『ラジカル・ヒステリー・ツアー』(81年)だろう。逆に忌野清志郎率いるラフィータフィーのツアー名「マジカデ・ミル・スター・ツアー」は、ちょっと語呂が悪かったかな。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。

半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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