出荷を目前に控えた6月上旬、生産者が3年間、丹精込めて育てた10センチサイズのアカウニ約3万個が、何者かによって半分の5センチほどの小さなアカウニにすり替えられていた。


「まさかこんなことが起こるなんて思ってもいなかった。

手塩にかけて育てたのに……」と憤るのは熊本県天草市の水産会社「丸徳」代表の橋本与さん(60)。


 橋本さんが異変に気づいたのは6月3日のこと。通常、1つのカゴに約170個のアカウニを入れて育てているが、中にいたアカウニは明らかに小ぶりで数も250~300個に増えていた。パッと見ただけですり替えられたことが分かり、カゴを結んでいたヒモも普段とは違う結び方になっていた。1個2000円と見積もって被害総額は6000万円に上り、会社は6月上旬、熊本海上保安部に被害届を提出。現在、窃盗事件として捜査が進められている。


 天草産のアカウニは地元を代表する特産品で、クリーミーで甘く濃厚な味わいが特徴だ。初夏から8月までが旬で出荷先は九州の一部や東京・豊洲市場などに限られ、流通量が少ないことから「幻のウニ」と呼ばれている。丸徳では通常2年で出荷するところを3年以上かけて成育させ、「3年もの」として販売している。


 丸徳がアカウニを養殖していたイカダは、天草漁協五和支所から沖合100~150メートルの位置にあり、岸から養殖場は見えない。窃盗犯はどんな手口で3万個のアカウニをすり替えたのか。


■「同業者しか知り得ず、やれる人物も限られる」


 橋本さんはこう話す。


「ウニがカゴに付着した海藻などを食べて味が変わってしまわないように、定期的にカゴを取り換えています。替えたばかりのカゴにはウニが張り付いていないので、盗んでもバレにくい。そのタイミングを見計らって中身をすり替えていた。カゴは1日10個もよう替えんから、すり替えは数カ月にわたって夜間に行われていた。どの列のどのカゴを替えたかは、身近なヤツじゃないと分からない。自分のところの養殖場のカゴにいるウニを取り出さなければ盗んだウニを入れる場所がないから、すり替えたのでしょう。時間を稼いで発覚するのを遅らせようとする狙いもあったのではないか。こんなことは同業者しか知り得ず、やれる人物も限られる。3年ウニをごっそり持っていかれ、届くのを楽しみに待ってくれているお客さんに申し訳なく、本当に困っている」


 盗まれた3万個の「養殖アカウニ」は、すでに「天草五和産天然アカウニ」と偽装され、市場に出回っているという。


 同業者が育てた天草の特産品を横取りして金儲けするとは、やることがあくどい。


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