フィリピン・パンパンガ州アンヘレス市で発生した9階建てビル崩落事故をめぐり、現地主要メディアは5月30日朝までに相次いで新たな事実を報じた。報道の焦点は、内務地方省(DILG)のジョンビック・レムリャ長官が国家警察(PNP)の犯罪捜査班(CIDG)に対し、施主への公式召喚状(Subpoena)発付を命じた点に集まっている。
これにより、事故は自治体レベルの行政対応から、国家警察による刑事事件捜査へと完全に移行した。

その他の写真:Googleストリートビュー 2024年5月、 この写真からも柱が細いことがわかる。

 Inquirer(フィリピン・デイリー・インクワイアラー紙)は、CIDGが29日付で召喚状を準備し、週明け5月31日から6月1日にかけて正式送付される予定だと伝えた。これまで代理人を通じた接触にとどまっていた施主への追及が、直接的な身柄確保と取り調べへと進む「最終段階」に入ったと強調している。

 DZRH News(ラジオ・ウェブ大手)は、28日夜から29日未明にかけて回収された5人目と6人目の犠牲者が「51歳の父親と26歳の息子」であることを家族が確認したと報じた。さらに、この親子は施工業者が当局に提出していた公式の行方不明者リストに記載されていなかった事実をスクープ。ずさんな労務管理や不法雇用の疑いが浮上し、市民の怒りが一層高まっている。最新の公式発表は「死者6名、救出27名、行方不明14名」とされる。

 ABS-CBN Newsは、雇用労働省(DOLE)が中部ルソン地域を管轄する局長を職務停止処分にしたと伝えた。当該ビルは2025年9月に安全違反で業務停止命令を受けながら、わずか1ヶ月後に再開を認められていた経緯があり、行政側の監視や審査に重大な過失、あるいは業者との癒着がなかったかを調査するための措置だと報じている。

 GMA Newsは、アンヘレス市のカルメリート・ラザティン・ジュニア市長が会見で「逃亡を続ける施主や施工業者に対し国外逃亡は不可能だ」と警告したと伝えた。市長は法務省(DOJ)に出国禁止命令(Hold Departure Order)の即時発付を要請しており、港湾や空港の監視網を強化していると強調した。


 Philippine News Agency(国営通信)は、DOLEが被害労働者や犠牲者遺族に対し緊急の現金支給支援を開始したと報じた。救出された労働者の生活費や医療費、犠牲者の葬儀費用を国費で賄い、統一コマンドによる救済措置を迅速に進めていると伝えている。

 こうした報道を総合すると、現地メディアの論調は一昨日までの「代理人を通じた接触」という緩やかな姿勢を完全に突き放し、名簿にない作業員が犠牲となった事実や、国家警察CIDGによる召喚状発付を通じて、施主・施工業者への刑事責任追及が最終局面に入ったことを強調している。行政側の監督不備や業者の不法行為が次々と露呈し、社会的な怒りと不信は拡大している。

 フィリピンでは、主要新聞社やテレビ局、ラジオ局がそれぞれ独自の取材を展開し、事実を多角的に報じている。これは国家による統制が強い中国とは異なり、民主主義の下でマスメディアが機能している証左でもある。今回の事故をめぐる報道は、行政の責任追及と市民の声を反映し、透明性を確保する役割を果たしている。現地社会は、犠牲者救済と責任者処罰を求める世論の高まりの中で、重大な局面を迎えている。
【編集:Eula】
編集部おすすめ