テレビ朝日の開局45周年記念スペシャルドラマとして2004年11月に放送された「弟」は、石原プロモーションが製作し、石原裕次郎と兄・慎太郎兄弟の生涯を描いた大作である。同作のスタッフが再結集して2005年9月に放送されたのが、「祇園囃子」だ。
⒞石原音楽出版社
本作はタイトルの通り、京都の祇園祭を背景に描いた壮大なスケールのサスペンスドラマで、主演は渡哲也が務めた。「弟」でも渡は石原兄弟の父・潔と慎太郎の二役を好演したが、本作の演技はそれ以上で、主人公の北山秀彦役を見事に演じている。北山は25年前にアメリカで起きた産業スパイ事件で会社に裏切られ、無実にもかかわらず上司の代わりに犯人に仕立てられてアメリカで投獄される悲劇の男だ。物語の冒頭で、京都・山科にある江波電機綜合研究所の開発本部の入江五郎(舘ひろし)が、秘書室長から「ジョージ白州」という謎めいた男について調査せよと指示される。同社は、防衛庁にミサイル防衛計画を提出するなど、日本の電機工学の先端を行く企業。
⒞石原音楽出版社
謎の男・ジョージ白州を追う入江の動向を軸に、京大空手部の仲間で現在は新聞記者をしている友田勇夫(神田正輝)、入江が懇意にしている元祇園の芸妓・千野しのぶ(十朱幸代)とその娘・秀子(藤原紀香)、北山の元上司で、現在は研究所の専務となった江波和也(小林稔侍)らが絡み、ストーリーは複雑に展開する。
さらに本作の魅力は、やはり複雑な人物設定である主人公・北山を演じる渡哲也の演技の素晴らしさだ。抑制した芝居で、過剰になることなく難しい役どころをこなしているが、脚本の理解力の高さを伺わせるような役者としての「勘の良さ」を感じさせる。青山学院大学空手部の出身で、アクション路線で売り出したこともあり、肉体派俳優の印象が強い渡だが、若い頃から演技力には定評があった。倉本聰とは、日本テレビ系「大都会」シリーズでも組んでおり、相性の良さを本作でも存分に発揮している。
⒞石原音楽出版社
共演陣では、舘ひろしが誠実極まる実直な男・入江を好演。
実力派の俳優陣が顔をそろえ、京都の風景も楽しめる大作「祇園囃子」は、倉本聰の筆致が冴える一大サスペンスストーリーを、渡哲也ら豪華キャストの演技で堪能できる見ごたえ抜群の一作だ。
文=渡辺敏樹
放送情報【スカパー!】
ドラマスペシャル 祇園囃子
放送日時:5月18日(土)19:00~
放送チャンネル:テレ朝チャンネル2
※放送スケジュールは変更になる場合があります