ミュージカル『神経衰弱ぎりぎりの女たち』が2026年6月7日(日)に日本青年館ホールで開幕する。
ヴェネツィア国際映画祭で脚本賞を受賞したスペイン映画の名匠ペドロ・アルモドバルによる1988年の傑作映画を原作とし、ブロードウェイでトニー賞3部門にノミネートされたミュージカルの待望の日本初演だ。
主演を務めるのは、圧倒的な歌唱力と表現力で観客を魅了し続ける望海風斗。マリア・カラス(『マスタークラス』)やエリザベートなど、"大きなものを背負う役"を演じてきた望海が今回挑むのは、感情をむき出しにしながら生きる等身大の女性・ペパだ。
今回は、主人公・ペパ役として作品に挑む望海に、稽古の現在地や役作り、共演者とのエピソードについて語ってもらった。
■"噛み合わない面白さ"と"沸騰寸前"の感情
――初めてこの作品に触れたときの印象を教えてください
「映画で初めて観て、大人な作品だなと思いました。すごくハッピーエンドで終わるとか、解決して終わるというわけではないけれど、観劇後はちょっとすっきりするような作品だなと思いましたし、多様な人間模様が描かれている点も、それもまた面白いなと思って観ました」
――コメディでありながらシリアスな葛藤も共存する作品です。稽古の中でその芝居をどのように表現しようとしていますか?
「本当にその瞬間、その瞬間に感じるものを大事にしたいと思っています。皆さんでやり取りする中で、あまりに綺麗に噛み合いすぎてしまうと、この作品ならではの面白さが削がれてしまう気がして。 "噛み合わない面白さ"がこの作品の面白さでもあり、コメディとして魅力だと思うんです。テンポ感はもちろんですが、爆発的なエネルギーや瞬間、瞬間のエネルギーっていうのもすごく大事な作品です。
もちろんみんなで積み重ねていくことも必要なんですけど、でもその瞬間に起きた自分の感情、役の感情が、それぞれどこかで鳴っていないといけないんじゃないかなとは稽古しながら思っているので、自分自身が常に"沸騰寸前"のような状態でいないといけないし、落ち着いてはいられないなと感じています」
――その"沸騰"する感覚は、登場する女性たちの生々しい悩みへの共感から来るのでしょうか?
「共感できる部分ももちろんあるのですが、その感情の発散の仕方が日本人の感覚とは少し違うのかもしれません。何か問題が起きた時に、電話を投げることがエネルギーになるという(笑)。私たちはどちらかというと、一度落ち込んだり感情を溜め込んだりする方向にいきがちですよね。でもこの作品では、その場で起きた感情を常にストレートに外へ向けることを意識しています」
――"沸騰する"方向に持っていくために意識していることはありますか?
「『頭で考えすぎない』ということが一番大切なのかもしれません。
噛み合わないけれど、お互いに火をつけ合う。そういう熱量は一人では決して作れないものなので、皆さんと刺激し合える今の稽古場は、本当に楽しいですね」
■等身大の女性・ペパ役で試される"自分自身"
――ご出演を決めた理由として、今の望海さんにとってこの作品に向き合うことはどういう意味を持ちますか?
「最近は歴史に立ち向かう役や、マリア・カラス(『マスタークラス』)のように芸術の中で闘う役など、大きなものを背負った壮大な人生を描く作品が続いていました。今回はより等身大でリアルな女性を演じるということで、今の自分自身のままでどこまで表現できるか、という挑戦になるんじゃないかなと思っています」
――4人の個性的な女性が登場する作品ですが、特に共感できるキャラクターはいますか?
「やっぱり一番はペパじゃないかなと思います。自分が演じることになりペパを一生懸命理解しようとしているので、一番近く感じる部分もありますし、職業的な面でも通じる部分があります。
(演出の上田)一豪さんと話したのですが、アフレコをしたりCMに出演したりするぺパは、当時のスペインにおいて、誰もが知る大女優というわけではないと思うんです。ガスパチョの宣伝をするような、『現場で重宝される、仕事の絶えない女優』。でも仕事に対してはすごく安定感がある。そういう職業人としてのペパには共感しやすいですね」
――マリア・カラスやエリザベートといった歴史上の人物を演じてきた中で、ペパという"等身大の人物"を演じることに、今回ならではの面白さを感じていますか?
「そうですね。まだ自分の中では何が出てくるかわからないところはあって。でもそれが面白さかなと思っています。マリア・カラスとかエリザベートって、ある程度その役に近づいていくというか、やっぱり皆さんの印象もすごくありますし、自分が持っている印象もあるし。
ぺパは皆さんの先入観があまりない分、自分自身を試せる役でもありますよね。今は作り込みすぎず、自分の中から自然に湧き上がるものを見せられたらいいなと、稽古を楽しんでいます」
■上田一豪(演出)と、刺激し合う稽古場
――演出の上田一豪さんと作品を作るのは二度目とのことですが、稽古場での発見はありますか?
「一豪さんは、演じる側の感情の流れとか積み重ねをすごく大事に丁寧に作ってくださる演出家でありながら、全体のイメージもすごくこだわりを持って作られていくので、安心して身を委ねることができる方だなと思っています。
今回ご一緒して、一豪さんの頭の中にあるディテールがとにかく面白くて。特に音にはものすごくこだわられていて、稽古場でも『こういう音が欲しい』とよく仰っていますね」
――その"音"へのこだわりは、実際に演じる側にも影響しますか?
「めちゃめちゃ助けられています!特にコメディはテンポが命なので、間(ま)を音で埋めてもらえることでリズムが生まれますし、それがそのまま作品の推進力に繋がっていると感じます。
そして、一豪さんが一番この作品に出てきそうなキャラクターだなと思います(笑)。あの"ぎりぎり"な空気感は、まさに一豪さんそのものだなって」
――上田さんへの信頼の源はどんなところにありますか?
「実際に演じていて、『ここ、感情が繋がっていないな』と自分で違和感を持っているところを、一豪さんは必ず見抜いてくださるんです。『あそこ、もう一回考えなきゃね』と言われるたびに、あぁ、ちゃんと見てくださっているんだなと。
見せ方だけでなく、役としての積み重ねを緻密に計算して作ってくださるので、ものすごく信頼しています。現場でみんなが試行錯誤しているときも、常に演じ手の近くに寄り添って、一緒に最善の形を探してくださる。そこが本当に心強いですね」
――共演者のみなさんの印象はいかがでしょうか?
「皆さんそれぞれ持っているものが違うので、毎日が刺激的です。和希(そら)さんは、本当に大変な役どころ。歌も難しいですし、ずっとテンションが切り替わり続ける役なので、彼女がどう作り上げていくのか私自身も楽しみです。
高嶋(政宏)(※「高」は正しくは「はしご高」)さんと秋山(菜津子)さんは、本読みの段階で既にキャラクターを完璧に提示されていて、そのプロフェッショナリズムには圧倒されました。
また、高嶋さんは、イバンという役を深く愛して演じられているので、お相手としてご一緒できるのがとても幸せです。これから稽古を重ねていく中で、お互いの関係性がより濃くなっていくのが楽しみですね」
――稽古の合間のリフレッシュ法はありますか?
「今すごいハマっているのがポタージュ作りなんです(笑)。それで、劇中にガスパチョが出てくるので、作ってみたら意外と簡単で、とても美味しくできたんです。
そこからスープ作りにハマって、帰り道、"今日は何のポタージュ作って食べようかな"って考えるのが今の楽しみです」
文=HOMINIS編集部 写真=MISUMI
ヘアメイク=yuto スタイリスト=加藤万紀子
衣装=ワンピース(wacca)/ピアス(アビステ)
公演情報
ミュージカル『神経衰弱ぎりぎりの女たち』
【東京公演】2026年6月7日(日)~21日(日)
会場:日本青年館ホール
【福岡公演】2026年6月26日(金)~28日(日)
会場:博多座
【大阪公演】2026年7月2日(木)~6日(月)
会場:SkyシアターMBS
【名古屋公演】2026年7月10日(金)~12日(日)
会場:御園座
製作 TBS ワタナベエンターテインメント

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