9月上旬、セガの名作アクション・アドベンチャー『シェンムー』のアニメ版「Shenmue the Animation」が発表されました。
制作は、セガサミーホールディングス株式会社のグループ企業のテレコム・アニメーションフィルム。監督は「ワンパンマン」2期を手掛けた櫻井親良氏で、それ以外の情報は公開されていません。
公式サイトやSNSなどは今後随時公開予定であるとのことですが、ファンとしては一体どんな内容が描かれるのか気になります。
そもそも「Shenmue the Animation」は、『シェンムー 一章 横須賀』全編を描く予定なのか、それとも前編後編と、ある程度分けるのか、最新作の『シェンムーIII』の展開も考えているのか……などなど、考えだしたらキリがありません。
そこで筆者は、PS4向け『シェンムー I&II』を実際にプレイし、その様子をあらすじ風に書いて、アニメ版ではどれくらいのストーリーが進むのか自分なりに考えてみました。でも、ただの『シェンムー』寄り道日記になったような……いやいやそんなことない!……はず。
第1話「藍帝襲来」
主人公の芭月涼は自宅に向かって走っていた。唐突に嫌な予感がしたのだ。
その虫の知らせは正しかった。厳格でありながらも優しさを忘れない父、自室に格ゲーのポスターが貼られている福さん、毎日500円のお小遣いをくれる稲さん……涼の家族は藍帝の理不尽な暴力によって地に伏せていた。
藍帝は、涼の父に手をかけ、家に隠された「鏡」を奪い去っていく。
涼は、「…愛すべき、友を、持て…」という父の最期の言葉を受け取り、悲しみに暮れるのであった。
父の死を引きずりながらも事件の背後関係を調査しようと思い立った涼は、まずは自宅を物色した。
クローゼットや冷蔵庫の中をあけたり、父の部屋の掛け軸を取ったり戻したり、レディの稲さんの部屋に踏み入ったりした。
しかし、事件の真相は全く掴めないのであった。やはり家の外から出るべきだろう。
第2話「ガチャガチャ襲来」
涼は、自宅から飛び出し、住人たちに聞き込み調査を始める。住人たちと涼はほとんど知り合いであり、事件前は今よりも明るく気さくな少年であったことがわかる。
住民たちから断片的な情報を集めながら、少しずつ事件の真相に迫っていた。
しかし……調査は不運にも中断される。「阿部商店」のガチャガチャと遭遇したからだ。
ガチャガチャには、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』のキャラクターフィギュアが入っていたのだ。これはやるしかないと思った涼は、ひたすらレバーをまわす。
「ひたすら」というのは誇張表現ではない。ガチャガチャの前で跪き、同じ姿勢で4時間以上もレバーをまわしていたのだ。
気がつくと午後11時をまわった。急いで帰宅すると玄関の前に稲さんが待ち構えており、もっと早く帰ってほしいと怒られてしまう。しかし、まだフィギュアのコンプリートは終わっていない。コレクターとしての戦いはまだ始まったばかりなのだ。
第3話「対決!湯川専務!」
前回のガチャガチャの続きをした後、涼は、阿部商店の中に入っていった。そこで対象商品を買うと豪華賞品が当たるくじが貰える「シェンムーくじ」というキャンペーンが実施中であることを知る。
涼は、2等の「湯川専務 ハッピバージョン」が無性に欲しくてたまらなくなった。昨晩、ガチャガチャに熱中したせいで、手持ちは8,000円まで減ってしまったが、流石にそのくらいあればお目当てのものは手に入るだろうとたかをくくる。
そんな楽観的な涼の考えは、後に不幸をもたらすことになる。
ポテトチップスやチョコレート、キャラメルを大人買いする涼だったが、阿部商店のおばちゃんは何もいわずただ見守るだけであった。
所持金が4000円を切った折、ようやく3等の「湯川専務 スーツバージョン」を当てる。手応えを感じた涼だったが、すでに閉店時間。ここは一旦帰宅して、明日に備えるのが上策だろうと判断する。
しかし、涼は、残金のことを忘れるほどヒートアップしていると自覚していなかった。
第4話「最大の敵は『貧困』と『ゲーセン』」
恐れていた事態が起きてしまった。いや、阿部商店で遊んでいればこんな日が訪れることはわかっていたはず。しかし、涼は目を背けていたのだ。
所持金が底をつきた。1円もない。明日からは稲さんにもらう500円のお小遣いが生命線だ。
少なくともこれで欲望に囚われず事件の調査を再開できる。
事件の真相に近づくべく中国人を探す涼であったが、ここで調査を妨害する宿敵が現れる。
ゲームセンターである。
店の前には、新たなガチャガチャがあり、中には人気アーケードゲームなどが置かれているのだ。これは入って遊ぶしかない。
しかし、所持金は稲さんから貰った500円のみ。ここは慎重にプレイするゲームを選ばなければならない。『スペースハリアー』か、『ハングオン』か、『QTEタイトル2』か『エキサイトQTE』か……『ダーツ』なんてものもある。
涼は、一体何のゲームから手を付けるのだろうか……。
第5話「激闘!『スペースハリアー』」
涼が最初に選んだのは3Dシューティングゲーム『スペースハリアー』だった。
涼は、若き戦士ハリアーを操作し、目の前に迫ってくる数々の敵を倒していく。しかし、シューティングゲームに慣れていない涼は、ステージ2の途中でゲームオーバーに……。
今まで味わったことがない屈辱感によって、涼の金銭感覚はさらに狂っていくのであった。
涼は、戦いながら成長していた。
2回目はステージ2をクリア、3回目はステージ3のボス直前に到達し、4回目になるとステージ3のボスを倒せた。しかし、5回目のプレイでは4回目と同じ結果に。所持金もゼロになってしまう。
さらなる成長には追加料金が必要だ。世界の危機を救うまで金を手に入れるのだ!涼!
6話「チャーリーという男」
駄菓子屋やガチャガチャ、ゲームセンターなどの障害によって事件の調査は思うように進まなかったが、所持金がゼロ円になったことでようやく進展し出す。
どうやらチャーリーという密輸ブローカーが何か知っているらしい。涼は、これからチャーリーの居場所を調べなければならない。
チャーリーは、サングラスをかけていて黒い革ジャンを羽織っているらしい。あと腕に入れ墨があるのだとか……。
これだけの情報を頼りに涼はどぶ板の人々に聞き取り調査を進めていく。
その後、チャーリーの手がかりを掴めてきた。どうやら奴は夜の七時に出没するようだ。
<cms-pagelink data-text="次のページ:『ハングオン』に挑戦したり、チャーリーにがっかりしたり、自宅でラジカセ聴いたり……でも物語は進展!" data-page="2" data-class="center"></cms-pagelink>
7話「QTEとチャーリー」
涼は、チャーリーという男を探しながらもゲーマーライフをエンジョイしていた。
今回挑戦するのは『QTEタイトル2』。ルールはシンプルで、指示されたボタンをいち早く押すだけだ。そんなルールが功を奏して初プレイでもハイスコアを記録。記録を更新するたびに店主の親父に讃えられた。
さらに調子に乗った涼は『エキサイトQTE』をプレイする。基本的なルールは、『QTEタイトル2』と同じだが、『エキサイトQTE』は迫ってくる標的にパンチをしなければならない。まるで体感型アクションゲームのようなプレイ感覚が楽しめるのだ。
しかし、こっちは何度挑戦してハイスコアを記録しても店主の親父は褒めてくれなかった。もっと修業が必要なのだろうか?
夜の七時を過ぎ、あたりは暗くなってきた。そろそろチャーリーが出現する時間帯だ。
ゲームセンター付近でチャーリーを探していると、以前バーの前で絡んできた船員たちが仲間を引き連れて襲いかかってきた。涼は、お得意の古武術を繰り出して応戦。見事撃退するのであった。
そしてチャーリーの有力な情報を手に入れる。どぶ板のタトゥーショップならなにか知っているかもしれないらしい。明日は早速そこに向かおうとする涼であった。
8話「ダーツとハングオン」
朝起きてすぐにタトゥーショップに向かった涼であったが、まだ開店時間ではなかったため、ゲームセンターで時間を潰すことになった。もうすっかり常連である。
今回は『ダーツ』をプレイ。ぶっちゃけルールはよくわからないが、的の中心の赤い部分を狙えばたぶん高得点だろう。実際に中心の赤い部分に刺さりそうになったこともあり、それなりのスコアを記録したようだ。しかし、いまいちルールがわからないためゲームに熱中できず、涼は他のゲームをプレイすることになる。
そしてついに涼は、『スペースハリアー』と同じくらいの時間泥棒『ハングオン』をプレイするのであった。
涼は、筐体のバイクにまたがり体を傾け、グリップを握る。この時、涼は父親を殺された悲劇の少年ではなく、プロのバイクレーサーの目つきになっていた。
同作はバイクレースものだが、制限時間内にゴールしなければゲームオーバーになるというルールがあり、制限時間内にゴールするとすぐに次のステージに切り替わる。ある意味『スペースハリアー』のようなアクションゲームをプレイしている感覚だ。
しかし、涼はライバルと頻繁にクラッシュを起こし、コースから大きく外れ、自機を爆散させるのであった。
9話「リベンジ!『ハングオン』!」
『ハングオン』で惨敗を喫した涼だったが、その後着実にプレイヤースキルを向上させていった。カーブ時は、減速をしてコースアウトに警戒しなければならない。かといって、減速ばかりしているとタイムアウトしてしまう。絶妙なさじ加減が求められる。
トライ&エラーを重ねていくうちにスコアが上がり成長していく涼だったが、残金がゼロに。こればかりはどうしようもないのだ。
金もなくなり、タトゥーショップも開いたので行ってみると、ようやくお目当てのチャーリーと遭遇した。
正直なところ、第一印象はがっかりである。遭遇した際に一悶着あったが、やはり弱い。最初にチャーリーだと勘違いしてしまった男の方が強そうだと思った。
いずれにしても、明日、チャーリーは中国の組織の人間と会わせてくれるという。
涼は、今日やることは全て終え残金もゼロになったので、大人しく帰宅するのであった。
10話「久しぶりの自宅」
チャーリーの件が意外にもあっさり片付いたため、夕方には帰宅できた涼であったが、正直なところやることが全くない。
しかし、こういう何もしない時間こそ自分にとって必要だったのかもしれない。父が殺されてから殺伐とした世界に足を踏み入れ、心休まる時間がなかった。今こそ自室で無心になるときではないだろうか。
そんなことを考えていると、自室の机に置いてあったカセットテープを目にする。そういえば引き出しにラジカセがあった。せっかくなのでひたすらラジカセの曲を聴いてみようじゃないか!……と思ったら最終的に電池が切れてしまう。
ラジカセには電池が必要だと学んだ涼であった。
翌日、涼は、稽古相手の福さんにこれから中国の組織の人間と会うことを告げる。そのやり取りを聞いていた稲さんは、事件の真相のことは諦め、道場に残り父の意志を継いで欲しいと懇願するが、それでも涼の心は揺れず、ついに根負けし、事件の手がかりとなる手紙を渡す。その際、涼に「危険なことをしない」と約束を強いるのであった。
実質ヒロインである稲さんの制止を振り切り、それでも飛び発とうとする涼に待ち受けているものとは――
さて、ただの寄り道だらけの『シェンムー』のプレイ日記になってしまいましたが、本作の魅力はまさにこの寄り道。残念ながら今回は書けませんでしたが、スロットマシーンやフォークリフトレースをはじめとしたミニゲームも待ち受けています。もちろん、本筋のストーリーもクライマックスを迎え、さらに面白くなること間違いなしです。
ちなみに、アニメなら1クールの13話まで書くべきだと思ったのですが、文字のボリュームがすごいことになったため、キリの良い10話までにしておきました。でも、最後の10話が日常回っぽかったのは、最終回に向けて急展開を迎える前の僅かな安息みたいで意外とアニメっぽく思えました。
なにはともあれ、こうやって改めて書くと、『シェンムー』の映像化は非常に難しいのではないかと感じました。ストーリーの本筋だけでも魅力的であるのは間違いないのですが、やはり寄り道的な要素も描かなければファンは納得できないかもしれません。
その部分がどのように描かれるのか注目されそうです!