国民生活センターが、暗号資産(仮想通貨)への投資や、副業や投資、ギャンブルなどで高額な収入を得られると謳った情報商材の購入について注意喚起している。

とくに、10、20代の若者が巻き込まれるトラブルが増えているためで、国民生活センターでは「うまい話はありません。

安易に信じないようにしましょう」と呼びかけた。2021年6月3日の発表。

若者のトラブル、右肩上がり

国民生活センターによると、暗号資産をめぐる相談件数は、2017年度に2910件と、前年(847件)の3.4倍に急増。その後は、18年度に3455件に増加し、19年度が2800件、20年度2894件と、3000件を割った状態が続いていた。

しかし、10代、20代の若者が契約当事者になっている相談の割合は増加の一途をたどり、年度別にみると、16年度が9%、17年度に12%、18年度20%、19年度23%、20年度が25%となっている。

暗号資産は、インターネットを使って電子的に取引されるデータ。

代表的な暗号資産であるビットコインのように、さまざまな要因で価格が変動するリスクがある。つまり「価格が急落し、損する可能性がある」わけだ。

ところが、若者からの相談では、友人や知人、SNSや出会い系サイト、マッチングアプリなどで知り合った人に「もうかる」と勧められてリスクを考えずに投資。「損した」、「返金されない」、「出金できない」と泣きついてくるケースが多いという。

暗号資産について、次の2つの事例が紹介された。

◆ SNSで知り合った人に勧められて暗号資産の投資をしたが、返金してほしい。


「SNSで知り合った人に誘われてセミナーに参加した。『日本円を暗号資産に換えて海外事業者の専用口座に入金すると高い利息がつく』と説明され、40万円を暗号資産に換えて専用口座に送金した。しかし、後日出金しようとしたらできなかった。約束どお通り利息をつけて返金してほしい」(2020年10月受付、20代女性)

◆ 暗号資産で投資する契約をしたが、説明と違うので返金してほしい。
「大学の先輩から、いい話があるとセミナーに誘われた。『海外の事業者に暗号資産で投資をするとAIが自動運用し、月々10万円の配当がある。

人に紹介するとさらにお金が入る』と説明を受けた。先輩に約50万円を預けるよう言われ、『お金がない』と言ったら『学生ローンを組めばよい』とローン会社に連れていかれた。10万円借り、残りは貯金から先輩に渡した。後日、事業者のホームページで入金を確認した。その後、さらに100万円を借りて投資したが全く配当は入らず、『現在出金手続きを停止している』という連絡がきた。投資したお金は3万円程になってしまい、説明と違うので返金してほしい」(2021年1月受付、20代女性)

国民生活センターは、出会い系サイトやマッチングアプリなどで知り合った人に誘導される海外の投資サイトは、サイト自体が架空の可能性があると注意を促す。

「勧誘者や事業者と連絡が取れなくなると被害を回復することは困難」という。

また、暗号資産への投資に際には、投資先が暗号資産交換業の登録業者であるかを金融庁のウェブサイトで必ず確認するよう求めている。

クレカ作れと指示され...

情報商材への相談件数も、2017年度に6642件と、前年(2967件)の2倍以上にハネ上がり、18年度には8689件に増加した。その後は、19年度に7452件、20年度は6556件と減少しているが、10代や20代の若者が契約当事者になっている相談は増加傾向にある。

若者が占める割合を年度別でみると、16年度が21%、17年度は17%、18年度23%、19年度35%、20年度が46%となった。

情報商材をめぐる相談は、広告などを見て問い合わせ、「高額な契約を迫られ、断り切れずに契約してしまった」、「次々に別の情報商材などの高額な契約を迫られた」といったケースが目立つ。

2つの事例を紹介している。

◆ 「株取引でもうかる」という情報商材を契約したが、解約したい。
「インターネットで副業を探していると、株取引で1年後に2000万円もうかるというサイトを見つけた。もうかる株の情報をメールで提供するとのことで、20万円で情報を購入するよう勧められた。大学生なのでお金がないと伝えると、クレジットカードを作るように指示され、カードの番号を事業者に伝えて決済した。しかし、指示どおりにしても、株価の予想に必要なパソコンの設定ができない。

高額で支払えないので解約したい」(2020年10月受付、10代男性)

◆アフィリエイトの情報商材の契約をしたが、事業者と連絡が取れない。
「『アフィリエイトで簡単にもうかる』というインターネットの広告を見て、約3000円のマニュアルを購入した。マニュアルにはたくさんの有料プランが紹介されており、事業者から電話で『有料プランに入らなければもうからない。高額なプランほどいろいろなサポートが受けられる」と言われ、65万円のプランを契約した。指示どおりにブログを作り、毎日記事を書いたがもうからず、事業者と連絡も取れなくなった」(2021年1月受付、20代女性)

国民生活センターは「事業者にもうかることばかりを強調されたが具体的な仕組みがわからない、広告にはなかった高額な契約を勧められたなど、話が違うと思ったら契約しないできっぱりと断って」とアドバイスしている。

こうした10代、20代の若者がトラブルに巻き込まれる背景の一つには、2022年4月から民法の一部が改正され、成年年齢が20歳から18歳に変更されることがある。

これによりFX(外国為替証拠金取引)や暗号資産取引などの口座開設が、18歳、19歳の若者でも、保護者などの同意なしで、一人で契約が可能になるからだ。

国民生活センターは、この民法改正後に、これまで20代で多いトラブルが18歳、19歳でも増えることを懸念。「事前にどのようなトラブルがあるのかを知っておくこともトラブル回避のポイントになる」としている。