「『お水の花道』は、きらびやかに着飾った女性が活躍する夜のクラブが舞台ですが、ドラマの現場はかなり泥臭くて、撮影時間も“朝から朝まで”なんて当たり前。栄養ドリンクの差し入れがあっても『これじゃあ、足りないよね』って言い合ったりしていました」

こう語るのは、井上晴美さん(49)。

「私にとっては、まったく未知の世界だったから、撮影が始まる前に男性スタッフと一緒に銀座や六本木のクラブへ行って、見学したんです。それまでは暗くてドロドロとした世界をイメージしていましたが、学費を稼ぐために大学生のホステスがいたりして、地に足をつけて頑張って生きているのだと、考え方が変わりました」

接客の所作もつぶさに観察。

「男性客の話を聞いて、共感して、さらに質問されたら、しっかりと答えられる知識も求められます。内ポケットに手を入れたときにたばこの火をつける用意をしたり、お客さんの目を見ながらお酒を作ったりする動作のすべてが自然。それを演技に取り入れるのですが、マドラーでかき混ぜる手順を忘れてNGを出してしまったりと、なかなかうまくいきませんでした」

撮影の舞台はクラブであるため、薄暗い雰囲気。ここで活躍したのは照明スタッフだった。

「とにかく『華やぐ場所ですから』と、私たちがキラキラに映るよう、ほかのドラマでは考えられないくらい時間をかけてセッティングしてくれました」

そんな現場で、主役を務めた財前直見が全体を引っ張っていったという。

「姉御というかまとめ役。いつもきっちりされていてセリフも完璧、NGも少なかったです。上川隆也さんはいつどんなときでも平常心で変わらない。拘束時間が長い現場でしたが、疲れていても眠くても、いつもフラット。藤崎奈々子ちゃんや一色紗英ちゃんとは同じ楽屋だったこともあり、このドラマをきっかけに、今でも仲よくしています」

共演者の中には、連続ドラマに出始めたばかりの妻夫木聡もいた。

「すごく初々しいんです。『かわいい、たまんないっ!』ってお姉さん方に冷やかされると、顔が真っ赤に(笑)。ガチガチに緊張していたから、本番のときはわざと妻夫木くんのほうを見ないようにしていたほど。その妻夫木くんが出世して、すごい俳優になったことは、出演者みんなの自慢なんです」

『お水の花道~女30歳ガケップチ』(フジテレビ系、1999年)

六本木の高級クラブを舞台にホステスの世界をコミカルに描いた、30歳の元No.1・明菜(財前直見)のサクセスストーリー。水商売というテーマにもかかわらず、ドロドロした展開は皆無で、明るく楽しい雰囲気。キラキラ輝く瞳が印象的だった!

【PROFILE】

いのうえ・はるみ

1974年、熊本県生まれ。

1991年、桜っ子クラブさくら組の一員としてデビュー。ドラマ、映画のほかに、スキンヘッドのポスターや篠山紀信氏による写真集も話題に。故郷である熊本に拠点を移し、現在も幅広く活躍している。