「2日ほど前に、関係者からのんちゃん(小原乃梨子さん)が亡くなったことを聞きました。ここ数年、闘病され、施設にも入られたそうですが、メールをしても、電話をしても、まったく連絡が取れていなかったから、どうしたのかずっと心配していたんです。

でも、3月くらいに知人からイベントに参加している元気なのんちゃんの写真が届けられて、“元気でよかった”と安心したばかり。まさかの訃報があり、本当に驚きました」

アニメ『ドラえもん』で野比のび太役を演じた小原乃梨子さん(享年88)の死を悔やむのは、しずかちゃんを担当した声優の野村道子さん(86)だ。小原さんについては、7月23日、同月12日に亡くなっていたことが所属事務所によって公表された。

小原さんはのび太のほかにも、「やっておしまい!」「スカポンタン」などが決め台詞だったタイムボカンシリーズ『ヤッターマン』のドロンジョなどにも命を吹き込んだ。

かつて小原さんは本誌取材で、代表作となる『ドラえもん』の出演経緯を次のように語っている。

「最初『ドラえもん』は日本テレビで放送していて、私はのび太じゃなくて、なぜかママ役。でも、たった26話で打ち切りになってしまって、藤子・F・不二雄先生もがっかりさてたんです。それでもアニメで成功させようと、6年後にスタッフが再結集。最初に決まったのがドラえもんの大山のぶ代さんと、のび太役の私。大山さんと私でコンビを組んだ『ハリスの旋風』というアニメが、スタッフの目に留まったんですね」

放送局がテレビ朝日に決まり、記念すべき1回目の録音の日のことは忘れられない思い出だったとも語っていた。

「あのとき風邪を引いて、全然声が出なくて延期に。偉い人もみんな集まっているのに……。

なんとものび太らしいでしょ。でも、そのおかげで予定変更して、スタッフみんなで東京飯店で食事会ができたんですよ(笑)」

録音現場ではベテランの集まり。簡単に台本を読んだ後は、テストにも入らず、いきなり本番に入るほど、緊張感が漂っていたという。

「大山さんには“自分がドラえもんを守る”という強い責任感があったから、作品のためなら歯に衣を着せないタイプ。映画のときは有名なタレントさんも出演されますが『あなた、この本、ちゃんと読んでいるの』と厳しいのです。私たちの気持ちも代弁してくれました」

だが、現場を離れると仲間。とくに小原さん、大山さん、野村さんの女性陣3人は、海外旅行へもよく出かけたそう。

「みっちゃん(野村さん)は気が使える人、私は交渉したりしゃべる人で、それで大山さんは食べる人。バランスが良くて、四六時中一緒にいても、一度もケンカしたことがありませんでした」

26年間、ドラえもんの世界を作り上げた5人が若手にバトンタッチしたのは、’05年4月のことだった。

「大山さんとかべ(ジャイアン役のたてかべ和也さん)は『なんで終わらせるの!』って反対していたけど、今考えれば、いいタイミングでした。みんなでラスベガスに“卒業旅行”にも行けたんです」

番組から離れても、交流は続いた。晩年、たてかべさんががんと闘病しているときも、小原さんは気にかけていた。

「かべは独身だし、心配していて……。入居している施設に『ちゃんと温めて食べなさいよ』ってレトルトのおかゆを届けたり、マネージャーにお見舞いにいってもらったりしていました」

しかし、’15年にたてかべさんが亡くなり、翌’16年にはスネ夫役の肝付兼太さんも亡くなった。次々に仲間を失い、認知症を公表した大山さんとの連絡は取れず、小原さんは寂しがっていた。

その気持ちは、前出の野村さんも同じだ。

「26年間、『ドラえもん』で一緒に仕事をしていた仲間はみんな同年代ですからね。次々に仲間が亡くなって、ついにのんちゃんまでも……。あまりに長く一緒にいすぎて、言葉が見つかりません。天国でかべさんや肝さんと再開しているのではないでしょうか。私もすぐに行くので、待っていてね」

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