そんな宇野さんが30代女性として等身大の思い、ちょっとズッコケな日常をお届けするエッセイ連載。今回は宇野さんが人間ドックを受けた際のエピソードを綴ります(以下、宇野さんによる寄稿)。
30年後の己に思いを馳せる
人はなぜ、家族が病気になるとわが身を振り返るのでしょうか。皆様ごきげんよう、最近お米をもりもり食べている、宇野なおみです。鮭フレークと味のりは一緒に買ってはいけませんね。
さて、今回は人生初の人間ドック(健康診断)を受けてきた話です。
実は先日父が入院しまして。無事に退院しましたものの、係累(けいるい)のほとんどが60代で何かしら発病したことになり、30年後の己に思いを馳せる日々です。
まあ、残るひとりの90歳近い祖母は未だにからあげだの春巻きだの揚げながら一人暮らしをしていますが……。もうちょっと間を取れないのか、と思います。
いくら祖母にそっくりだとか、生命力が強そうとか言われていても、ビビリのわたくしとしてはさらなる健康への留意を心掛けたい所存。ということで、人生初のがっつり人間ドックを受けてきました。
不安がつのって体調がすぐれなくなる
何度も言いますがビビリのため、予約の日が近づくにつれ、なんと、体調がすぐれなくなってまいりました。本末転倒では……。ちょうど忙しいタイミングも被り、外食or適当ごはん、寝つきが悪くて寝不足、さらに不安でドカ食いをするという嫌なサイクルに陥ってしまっていました。本末転倒(2回目)。
婦人科健診も怖ければ、鎮静剤を使用する胃カメラも怖い。痛みはなさそうですが、意識がぼんやりするという状況自体が不安。
そもそも何時間かかるのか……。人生で入院したことのないそこそこ健康体ゆえにふくらむ不安! ふくらむなら資産額とかにしてください!
寝不足だと体がてきめんにだるいので、仕事も進まないという絵に描いたような悪循環でした。なぜゆえ、たかが人間ドックでここまで大騒ぎできるのか。
とにかく空腹がつらい!!
おなか……すいたな……。
エッセイをお読みくださっている方なら皆様ご存じかと思いますが、わたくし、生粋の食いしんぼう。橋田賞(橋田文化財団で行われている授賞式。パーティーがある)でお邪魔するリーガロイヤルホテル東京では、毎回ローストビーフをもりもり食べておりました。
食べないダイエットなどできたためしがありません。バレエを10数年続け、最近は大人になってトウ・シューズを履き直すという挑戦を行っているので、普通に食生活は気を付けています。
でも、例えば原稿の合間にチョコレートをかじるとか、軽食に甘いパンを選んじゃうとか、友達とピエール・マルコリーニやル・サロン・ド・ニナスに行って甘いものを食べることは制限していません(私含めお酒をあまり飲めない・飲まない友人が多いので、ちょっと高級な甘いものが会うときの贅沢時間なのです)。
なので、いざ行けば不安より「おなかがすいた」で頭が占領されていて、ラーメンだの、アルフォートホワイトだの、ハンバーガーだの、明太子のっけご飯だの、食べ物が浮かんでは消えていました。たかが10数時間の断食でこのありさま。
いざ健診へ!未知の感覚に振り回される
いろいろ受けたのですが、知らない経験が次々に襲い来るので驚きました。朝井リョウ『イン・ザ・メガチャーチ』を合間に読んでいましたが、そこまで進まなかったですもの。人間ドックで読むべき本だったかはさておき……。私は“のし梅”(水戸の名物。大好物)じゃないんですよと言いたくなるマンモグラフィー、どんどん抜かれていく血液、超音波検査中の、暗くて眠くなるけど不思議な感覚が現実に引き戻してくる揺り戻しの感覚。
エッセイのネタとして書き溜める間もなく、次々と検査が続きます。それにしても、「回転しながら椅子が上がります」とかいうアナウンス、ディズニーランド以外で初めて聞いた気がいたします。
ショックだったのは視力の低下。
ヘッタクソだったのは肺活量。舞台に立っていた人間とは思えない体たらくでした。体重はちょっと増えていましたが、筋肉量を確認しておこうと思います。もともと筋肉がつきやすくて、ビリーズブートキャンプを「大腿四頭筋(前ももの筋肉)が太くなるなコレ」と判断して数日でやめた経験があります。
ありがたいことに、ずっと習っているバレエの先生に丁寧にご指導いただけて、筋肉の使い方を徹底して変えているところなんですよ~。
懸念の胃カメラへ。記憶にございません!
さあ、ラストは鎮静剤と胃カメラです。1時間ほど休まなければならないため、最後にやることになっていました。最初に胃洗浄のため、薬を溶かした水を渡されました。全部飲みましょう、とのこと。
……この……激マズウォーターを……飲み切れと……?(口が悪い)
バリウムの薬がまずい、とは聞いていましたけれども、なんですの、この片栗粉と障子のりを混ぜたような微妙な液体は。
全然飲み切れません。しわっしわの顔になり、泣き言を言う私。看護師さんは応援はしてくれますが容赦はしてくれない(当たり前)。
何とか飲み切り、お次は喉麻酔です。
看護師さん「ちょっとむせるかもしれま「オフェアアアアアッ」
本当にこんなむせ方をしました。ショートコント:患者、みたいな反応速度でした……。看護師さん結構苦笑いされていました。歯医者の麻酔~喉バージョン~のような感覚になりつつ、いざ処置室へ。マウスピースをくわえさせられます。
なんか自分の胃の中見られるとかいう話聞いた……こと……が……。
そこで記憶が途切れております。
その後起き上がって休憩所に戻り、横になったはずなんですが、そのあたりの記憶もほぼなし。ぐっすり眠っていました。1時間後に様子を見に来た看護師さんが、さらに30分ほど寝かせてくださったようですが、これもまたぼんやり記憶でして。
気が付いたら、帰り支度していました。あの大騒ぎと不安は何だったんでしょうねえ……。
へろへろでおにぎりを貪る
日本橋のクリニックでしたので千疋屋さんに行って、カレーでも奮発して食べようと思っていました。
しかし、胃袋による「おなかはすいているけど、あんまりヘビーなもの食べられないよ! これから電車に乗って帰るんでしょ!」という要求により断念。体の声に耳を傾けながら生きています。そうでないとすぐ体調崩すので……。
というわけで、念のため持ってきていた、自前のおにぎりを食べることにしました。お米っておいし~い。普段早食いなんですが、さすがにのんびりかじりました。
帰ってからはこれ幸いとアップルパイをあたため、カフェラテを飲み、チーズをかじり、マイブームであるレコルト(いろいろ作れる調理器具)で牛乳をたっぷり入れたポタージュを作りました。乳製品が摂れるって素晴らしい……!
できる限り気を付けて
「36歳元子役」のフレーズで、このエッセイを連載しておりますが、今年で37歳です。ガタが来るよと脅されつつも、毎日ぐっすり、もりもり食べて生きております。こはただ、自らがラッキーなのだと噛み締める日々です。とにかく、やみくもに怖がっていても仕方ない。知ることが第一歩。去年婦人科を初受診した時も思いました。
自分を大切に、できる限り健康に、楽しく、ほのぼのと生きていきたい。食いしんぼうでい続けるには元気あってこそです。
30代半ばを過ぎればルッキズムよりも気になるのは元気ズム。ある日突然、病気やケガは襲ってくるものですが、できる限り、気を付けて、日々を楽しく過ごしたいものです。
健康診断は人生のチェックリスト! また来年も頑張って受けます。
……次回は鎮静剤の量を少し減らしてもらおうかな……。
<文/宇野なおみ>
【宇野なおみ】
ライター・エッセイスト。TOEIC930点を活かして通訳・翻訳も手掛ける。元子役で、『渡る世間は鬼ばかり』『ホーホケキョ となりの山田くん』などに出演。趣味は漫画含む読書、茶道と歌舞伎鑑賞。よく書き、よく喋る。YouTube「なおみのーと」/Instagram(naomi_1826)/X(@Naomi_Uno)をゆるゆる運営中
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