なぜ海の覇者、バイキングたちは歯に溝を彫ったのか?その理由が判明
 9~12世紀、ヨーロッパ各地の海岸地帯で、海賊活動や交易を行っていた、スカンジナビア、バルト海沿岸地域の武装集団「バイキング」だが、歯に横向きの溝が彫ってある遺骨が数多く出土されている。

 それはいったいなぜなのか?その理由は長い間不明だった。


 だが、新たな研究でその謎がようやく明らかになった。一部のバイキング(ヴァイキング)たちは、自分たちが交易商人であることを示すための目印として溝を彫っていたのだという。

バイキングの歯に彫られた溝の謎 人体に意図的に手を加える行為は珍しいことではなく、世界各地で古くから風習として行われていた。

 スウェーデンやデンマーク各地の遺跡で発掘されたバイキング(ヴァイキング)の遺骨の歯には、横に溝を彫った後が見られ、こうした習慣が見られることは10年以上前から知られていた。

 大きな疑問は、それはなんのためなのか?ということだった。

 これまで、バイキング時代の歯を削った例がこれまで合計130確認されている。


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ゴットランド島から出土したヴァイキング男性の遺骨の歯。意図的に溝が刻み込まれているのがわかる / image credit:SHM/Lisa Hartzell SHM 2007-06-13商人である証として彫られた可能性 スウェーデン最大の島、ゴットランド島から出土した遺骨を集中的に分析した結果、65人の男性の歯にこの特徴的な横溝が見られた。こうした行為が習慣的に行われていたことを示す最大規模の遺跡だ。

 遺骨が見つかった場所から、彼らはかつて商人だったのではないかと研究者たちは考えている。溝がつけられた歯をもつ遺骨はすべて、交易場所に限定されていた場所から見つかったからだ。

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歯に溝がつけられ、骨折の跡が治癒した痕跡のある男性の頭蓋骨(ゴットランド島)/ image credit:SHM/Gabriel Hildebrand 2011-12-09後世のギルド制度の前身 この65人は集落から少し離れた小さな墓地に埋葬されていた。
つまり、彼らは地元の人間ではなく、集落を定期的に訪ねていたよそ者だったと考えられる。

 研究者はこう結論づけている。
歯に溝を刻む習慣は、プロの商人集団の交易活動と関係がありそうだ。ここから、交易商人限定のグループへの入会儀式、商人というアイデンティティの仲間意識の印として機能した溝だった可能性がある。これが後世のギルド制度の前身と言えるかもしれない
ゴットランド島からは頭蓋骨を意図的に変形させた女性の遺骨も ゴットランド島からは、ほかにも体に手を加えられた遺骨が出土している。

 頭蓋骨が意図的に長く引き延ばされ変形した3人の女性の遺骨が見つかったのだ。
こちらの理由もはっきりわかっていないが、この女性たちは子どもの頃に頭蓋骨をきつく縛るなんらかの施術をを受けていたようだ。

 人工頭蓋変形は歯よりもずっと稀だった。このような頭蓋骨変形はこの3人の女性だけで、すべてほぼ同じ時代のものだ。

 DNA分析の結果、ひとりは地元の人間で、あとのふたりはバルト海地方の人間であることがわかった。

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意図的に変形させたゴットランド島の女性の頭蓋骨 / image credit:SHM/Johnny Karlsson 2008-11-05

 いずれにせよゴットランド島では、頭蓋骨変形は極めてまれで、この風習がすぐに廃れてしまった理由は3つ考えられるそうだ。

 ひとつは施術を行われた女性たちは、頭蓋骨改変が一般的な習慣の地域出身だった可能性だ。


 2つ目はこの習慣が特定の家系でのみ受け継がれてきて、頭蓋骨を縛るという難しい技術を習得していた人物がその珍しいスキルを伝授する前に死亡した可能性である。

 3つ目の可能性は、女性たちがこうした行為を子孫に伝えるのを望まなかった可能性だ。

 この研究は『 Current Swedish Archaeology』に掲載されている。

References:Now We Know Why Vikings Filed Grooves Into Their Teeth ≫ Explorersweb / written by konohazuku / edited by / parumo

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