雨のニオイを嗅ぎ分けることができる人が存在する、その科学的理由
 雨のニオイを感じ取ることができる人が存在する。目をつぶっていても、耳をふさいでも、嗅覚だけ雨を感じ取ることができるのだ。
しかも中には、雨が降る前から雨の到来を予測できる人もいる。

 だが、本当にそんなことが可能なのだろうか? ただの思い込みじゃない?と思うかもしれないが、雨の嗅ぎ分けは可能であることを裏付ける科学的根拠があるという。

 ここでは、雨のニオイの科学について見ていこう。

雨がもたらす様々なニオイ植物由来のペトリコール 雨が降ってくると地面からふわっと立ち昇ってくるニオイには、いくつか種類がある。

 1つは「ペトリコール」というニオイだ。

 これは1964年に鉱物学者のイザベル・ジョイ・ベアとリチャード・トーマスが考案した造語で、ギリシャ語で「石」を意味する「ペトロス」と、ギリシャ神話の神々神々の血管を流れる液体「イコル」に由来する。


 ペトリコールの正体とされるのは、土の中で乾燥していた植物由来の油だ。これが雨が降ることで空中に巻き上げられ、それが雨のニオイとなって漂ってくる。

 こうしたニオイから安心感や懐かしさを感じる人は案外多く、そう思っているのは人間だけではないらしい。

 2020年の研究では、雨のニオイが人間以外の動物にとっても心地いいものであることを明らかにしている。

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photo by Unsplash細菌が生成するゲオスミン 動物が雨のニオイに魅せられる理由は、土の中に潜む「ストレプトマイセス属」という細菌が「ゲオスミン」(ちなみに大地のニオイという意味だ)という化合物を生成するからだという。

 この細菌がゲオスミンを作るのは、昆虫などを呼び寄せ胞子を広げてもらうためだ。


 だが、同様に胞子を遠くへ運んでくれるもっと大きな動物にとってもまた惹かれるニオイで、そこには私たちも含まれる。

 実際、人間の鼻はゲオスミンに対してとても敏感で、サメが水中にただよう血のニオイを嗅ぎ分ける力よりも強力なくらいだ。

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photo by Pixabay雨が降る前から雨のニオイは漂っている 一般的な人は雨が降ってから、そのニオイを感じることができるが、中には雨のニオイを雨が降る前から感じ取れる嗅覚の鋭い人もいる。

 遠くの雨が運んでくるニオイを嗅ぎ分けることができるのだ。

 2015年の研究では、雨の水滴が地面にぶつかると、地面の気孔に含まれていた空気を閉じ込めたエアロゾルが発生することを明らかにしている。

 エアロゾルとは気体中に液体または固体の微粒子が広がった状態のことだ。


 雨の前にそのニオイが感じられるのは、遠くで降った雨によって発生したエアロゾルが、風に乗って流れてくるからであるようだ。金属的なニオイがするオゾン 雨を告げるもう一つのニオイとして、やはり風に乗ってやってくる「オゾン」が挙げられる

 私たちを有害な紫外線から守ってくれているオゾンは、ペトリコールの土を感じさせるニオイよりも金属的な独特のニオイがする。

 ちなみにその名前の由来は、ギリシャ語で「匂う」を意味する「オゼイン」だ。

 これもまた雨を告げるニオイなのは、この分子が空気中の電気活動によって作られるからだ。

 雷によって大気中の酸素分子(O₂)が個々の酸素原子(O)に分解される。
このとき酸素分子と酸素原子がくっついたものがオゾン(O₃)だ。

 こうしてできたオゾンは雷雨によって地上に送り込まれ、風に乗ってただよう。だからそのニオイは、これから大雨が降るサインとして警戒すべきものだ。

 そんなわけで外出する際、風に乗っていつもと違うニオイがすると思ったら、きっと傘を持っていくのが正解だろう。

 もし犬や猫を飼っているなら、彼らの嗅覚をもってすればかなり事前に雨を予測することができているはずだ。それを教えてくれる方法を訓練するのもありかもしれない。


References:Can You Smell When The Rain Is Coming? | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo

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