ドイツの貴族女子修道院で見つかった400年前のガラス製いちもつ、その使用目的は?
<a href="https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Herne_Arch%C3%A4ologiemuseum89806.jpg" target="_blank">public domain / Wikimedia</a>

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 ドイツの町ヘルフォルトにある、かつての貴族の女子修道院の跡地から、敬虔なイメージを覆すような遺物が発見された。

 深さ2mもある古いトイレの遺構から、長さ20cmほどの薄緑色のガラス製の男性器を模した物体が発見されたのだ。

 16世紀から17世紀のものとされるこの遺物は、当時の貴族女性たちが宴会の席で楽しんでいたジョーク用のグラスだったという。

 厳しい戒律に縛られていると思われがちな修道院の中で、高貴な女性たちが豊かなユーモアを持って生活していたという、人間味あふれる実態を伝えている。

女子修道院の地下に眠っていた驚きの遺物

 考古学チームがドイツのヘルフォルト修道院の跡地で発掘を行った。陶器の破片や日用品などのありふれた遺物が見つかると予想されていた。

 ところが、居住区につながる古いトイレの穴を調べていたところ、驚きの物体が見つかった。それがヘルフォルトのガラスの男根(Glass Phallus of Herford)と呼ばれる、実に見事な職人技で作られた、薄い緑色のガラス製品だ。

 このトイレは、居住区から地下へと続く深い垂直の筒のような構造になっていた。2mもの深さがある地下の底に落ちたことで、この繊細なガラス器は、400年もの間、誰にも気づかれることなく、そして壊れることもなくひっそりと眠り続けていた。

 禁欲的で厳格なイメージのある、貴族女性たちが集う修道院で、いったいなぜこのようなものが発見されたのか?

 ルネサンス期の歴史を詳しく調べていくと、この遺物が持っていた本来の役割が見えてくる。

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宴会を彩ったユニークなジョークグラスだった

 専門家たちはこの遺物を、ルスティゲ・トリンクゲフェッセ(Lustige Trinkgefäße)という、ドイツ語で愉快な飲料容器を意味するカテゴリーの品だと結論づけた。

 これはお酒を飲むためのグラスそのもので、中が空洞になっており、飲み物を注いで使うことができる。

 16世紀から17世紀のヨーロッパでは、高品質なガラスは非常に高価な贅沢品だった。そのような素材でわざわざユニークな形の器を作り、それを使ってお酒を飲むことは、当時の貴族たちの間で流行していた最先端のエンターテインメントだったのである。

 あえて飲みにくい形の器でお酒を飲み、その場にいる人々と笑い合いながら、知的な冗談を楽しむための道具だったのだ。

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敬虔な修道女たちがワインを楽しんだ理由

 ここで、修道院でお酒を飲むなんて不謹慎ではないか、と疑問に思う人もいるだろう。

 その理由は、この修道院がたどった独自の歴史にある。

 西暦800年ごろに設立されたヘルフォルト修道院は、もともとはカトリックだったが、1533年の宗教改革によってプロテスタント(ルター派)の施設へと変わっていた。

 当時のプロテスタントの女子修道院は、一生を神に捧げる厳しい場所というよりも、未婚の貴族の娘たちが教養を磨きながら共同生活を送る、高級な寄宿施設(Damenstift)としての性格が強かった。

 ここに住む女性たちは、将来結婚するために施設を去ることも自由で、音楽やお酒を伴う華やかな社交を楽しんでいた。

 また、当時のヨーロッパでは、生水は細菌に汚染されていることが多く、病気を防ぐために殺菌効果のあるワインやビールが水分補給の主役だったことも、彼女たちがお酒を楽しんだ理由の一つだ。

 このユニークなグラスは、男性の目を気にすることのない女性だけの空間で、最高級の教養を持つお嬢様たちが内緒のパーティーを楽しむための秘密のアイテムだったのだろう。

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なぜトイレの奥で発見されたのか?

 この遺物がトイレで見つかったことについても、考古学的な視点から興味深い推測がなされている。

 当時のトイレは、人目を忍んで物を処分できるプライベートな空間でもあった。持ち主がこの品を使い終えたとき、誰かに拾われたり悪用されたりしないよう、あえて人目に触れない場所へ隠すようにして処分したのかもしれない。

 ドイツの有力誌デア・シュピーゲルの記者であり、科学・歴史分野の専門家として知られるグイド・クラインハバート氏は、こうした小さな遺物こそが、教科書には載らない過去の人々の本当の姿を映し出す窓になると述べている。

 歴史上の人物たちは、決して信心深さだけで生きていたわけではない。

 私たちと同じように笑い、冗談を言い、ときには大胆な悪ふざけを楽しんでいたのだ。

 この研究は、グイド・クラインハバート氏の著書『Düstere Geheimnisse』(2025/10/15)に掲載された。

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References: Ancient Origins[https://www.ancient-origins.net/news-history-archaeology/herford-glass-phallus-00102431]

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