ブラックホールのジェットの強さを物理学者たちが初測定。そのパワーはなんと太陽1万個分!
Image credit:<a href="https://www.icrar.org/dancing-jets/" target="_blank" rel="noreferrer noopener">ICRAR/Curtin University</a>

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 ブラックホールが宇宙空間に噴き出す高速ガスの柱「ジェット」のパワーを、物理学者たちが初めて直接測定することに成功した。

 そのパワーは太陽1万個分に相当する途方もない大きさだった。

 オーストラリアのカーティン大学が主導したこの研究では、地球規模に広がる電波望遠鏡を駆使し、恒星の風に押されて踊るようにしなるジェットの動きを観測することで、これまで不可能だった瞬間的なパワーの算出を実現した。

 この研究成果は『Nature Astronomy[https://www.nature.com/articles/s41550-026-02828-3]』誌(2026年4月16日付)に掲載された

ブラックホールのジェットとは何か

 ブラックホールは強力な重力で周囲の物質を引き寄せるが、吸い込まれた物質はそのまま一直線に落ちるわけではない。

 物質はブラックホールの周囲で渦を巻きながら「降着円盤」と呼ばれる巨大な円盤状の構造を作り、そこで圧縮・加熱されることで強力な磁場が生まれる。

 その磁場と回転エネルギーが組み合わさることで、物質の一部が円盤の上下方向に光速に迫る速度で噴き出される。これがジェットだ。

 今回の研究対象となったのは、地球から約7,200光年離れた連星系「はくちょう座X-1」だ。

 史上初めてブラックホールの存在が確認されたこの天体は、太陽の約21倍の質量を持つブラックホールと、太陽の約40倍もの大きさを誇る超巨星が互いの重力で引き合いながら軌道を周回している。

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恒星風がジェットを曲げるしくみ

 ブラックホールのジェットのパワーを測定するうえで、カーティン大学の研究チームが注目したのは伴星である超巨星が放つ「恒星風」だった。

 恒星風とは恒星の表面から絶えず吹き出す高速の粒子の流れで、太陽にも「太陽風」として同じ現象が見られるが、超巨星のそれは桁違いに強力だ。

 ブラックホールが軌道を周回しながら超巨星に近づいたり遠ざかったりするたびに、この恒星風がジェットに横から吹きつけ、ジェットを繰り返し異なる方向へと曲げていく。

 研究チームはこの動きを「踊るジェット」と表現した。地球上で強風が噴水の水を押し流す様子に似た現象だ。

 恒星風のパワーはすでに別の観測から判明していた。

 そこでジェットがどれだけ曲げられたかを測定すれば、ジェット自身のパワーを逆算できる。

 研究チームはこの発想を実証するため、地球上の遠く離れた複数の電波望遠鏡を同期させ、事実上「地球サイズの巨大望遠鏡」として機能させる超長基線電波干渉計という技術を用いて、踊るジェットの連続画像を撮影した。

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初めて測定された瞬間のパワーは太陽1万個分

 研究の解析結果によると、はくちょう座X-1のジェットのパワーは太陽1万個分の出力に相当することが判明した。

 またジェットの速度は光速の約半分、秒速約15万kmであることも確認された。いずれも数十年にわたって科学者たちが直接測定できずにいた値だ。

 従来の手法ではジェットのパワーを数千年から数百万年にわたる平均値としてしか算出できなかったが、今回初めて瞬間的なパワーを測定できたことで、ブラックホールに物質が落下する際に瞬間的に放出されるX線エネルギーとの直接比較が可能になった。

 さらに、物質がブラックホールに落下する際に放出されるエネルギーの約10%がジェットによって周囲の宇宙空間に運び出されていることも明らかになった。

 この値は科学者たちが宇宙の大規模シミュレーションモデルで長年仮定してきたものだが、実際の観測で裏付けられたのは今回が初めてだ。

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今回の測定値が宇宙研究の基準になる

 今回の測定値は、今後の天文学研究における重要な基準値となる。

 ブラックホール周辺の物理法則は質量の大小によらず非常に似通っていると考えられているため、太陽の10倍から1000万倍の質量を持つさまざまなブラックホールのジェット研究にも、この測定値を応用できる。

 現在、西オーストラリアと南アフリカで「スクエア・キロメートル・アレイ[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%82%AD%E3%83%AD%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%A4]」という世界最大規模の電波望遠鏡群の建設が進んでいる。

 完成すれば遠方の数百万の銀河でブラックホールのジェットを検出できるようになる見込みで、今回得られた基準値はそれらのパワーを算出する際の校正にも役立つ。

 ブラックホールのジェットは周囲のガスや星の形成に直接影響を与えており、銀河がどのように進化してきたかを解き明かす重要な手がかりになっている。

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References: ‘Dancing jets’ from black hole reveal their immense power[https://www.curtin.edu.au/news/media-release/dancing-jets-from-black-hole-reveal-their-immense-power/] / ‘Dancing jets’ from black hole reveal their immense power[https://www.icrar.org/dancing-jets/]

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