サハラ砂漠の大地に刻まれた直径約50kmの同心円状の地形「リシャット構造」が、2026年3月に撮影されたNASAの最新衛星画像により鮮明な姿を現した。
宇宙から見ると砂漠の中に巨大な目が浮かび上がるように見えることから「サハラの目」とも呼ばれるこの地形は、隕石クレーターでも火山でもなく、地下のマグマによって押し上げられた岩盤が長年の侵食を受けてできたと考えられている。
宇宙を見上げるサハラの目
2026年3月5日と6日、NASAの地球観測衛星「ランドサット8号」と「ランドサット9号」に搭載された観測装置OLIが、アフリカ北西部モーリタニアのサハラ砂漠に広がる巨大な円形地形「リシャット構造をそれぞれ撮影した。
4月16日に「今日の一枚[https://science.nasa.gov/earth/earth-observatory/eyeing-the-richat-structure/]」として公開されたこの画像は2枚の画像を組み合わせたもので、同心円状に連なる尾根が、オレンジ色と灰色のコントラストをなしながら砂漠の大地に刻まれている様子が写っている。
NASAの解説担当アダム・ボイランド氏によれば、色の違いは地形を構成する堆積岩と火成岩の種類の差を反映しているという。
同心円状に連なる尾根が砂漠の大地に刻まれたその姿は、まさに砂漠に開いた巨大な目だ。
冷戦の宇宙競争が生んだ発見
リシャット構造が初めて宇宙から写真に収められたのは、1965年6月3日のことだ。
米ソ冷戦のさなか、NASAはジェミニ4号[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%9F%E3%83%8B4%E5%8F%B7]ミッションで宇宙飛行士のジェームズ・マクディビット氏とエドワード・ホワイト氏を軌道に送り込んだ。
2人には地球を撮影しながら、隕石衝突跡である可能性がある大きな円形地形を探すという任務が与えられていた。
彼らはサハラ砂漠の上空を通過した際、砂の中から巨大な目が見上げるように存在するその地形を目撃した。
直径約50kmにも及ぶ同心円状の構造は、宇宙からでも一目でわかるほど鮮明だった。
このミッションでホワイト氏はアメリカ人として初めての宇宙遊泳も達成し、約21分間を宇宙船の外で過ごしている。
隕石でも火山でもない謎の円形構造
宇宙から発見された当初、リシャット構造は隕石が衝突してできたクレーターだと考えられていた。
しかし詳しく調べると、中心部が平坦であることに加え、強烈な衝撃によって変質した岩石が見つからなかった。
隕石衝突の決定的な証拠が存在しないため、クレーター説は否定された。
火山噴火説も検討されたが、これも後に退けられた。
現在有力とされるのは、地下に貫入したマグマが地表まで達することなく留まり、岩盤をドーム状に押し上げた後、長年の風や水による侵食で柔らかい岩が削られて環状の地形が形成されたという説だ。
カナダ人地質学者2人は、この形成が1億年以上前、超大陸パンゲアがアフリカと南アメリカに引き裂かれていった時代に始まったと推測している[https://www.businessinsider.com/the-eye-of-the-sahara-is-still-a-mystery-2016-7]。
それでも、なぜこれほど完璧な円形になったのかは、今も謎のままだ。
石器時代の人類も暮らした聖地
リシャット構造は地質学的な謎だけでなく、考古学的にも重要な場所だ。
この地では約170万年前から数十万年前の旧石器時代前期に、アフリカ、ヨーロッパ、西アジアで栄えたアシュール文化に属する石器が大量に発見されており、数十万年前の古代人類がこの地形の周辺で生活し狩猟していたことが明らかになっている
遺跡の多くは、石英という鉱物を含む岩盤が地表に出ている場所の近くに集中しており、初期人類が石器を作るための材料をここで調達していたと考えられている。
1974年頃から本格化した調査では、地形の北西側外縁部に考古学的遺跡が集中し、内部の窪地には人が住んだ痕跡がほとんど見られないことも判明した。
1965年にジェミニ4号の宇宙飛行士たちが初めて目撃して以来、リシャット構造は宇宙飛行士たちの目印であり続け、今なお地球から宇宙に向けて目を見開いている。
References: Eyeing the Richat Structure[https://science.nasa.gov/earth/earth-observatory/eyeing-the-richat-structure/]











