地球最古の生命の秘密が、オーストラリアの岩に生息する新種の古細菌に隠されていた
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 オーストラリアのシャーク湾の浅瀬に沈む岩のような塊の中に、地球最古の生命の謎を解く微生物が生息していた。

 ニューサウスウェールズ大学の研究チームがDNAを解析したところ、数十億年前に別の微生物と共生関係を結び、動物や植物など複雑な生物の細胞の祖先を生み出した可能性がある古細菌の新種であることが判明した。

 この研究成果は『Current Biology[https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(26)00330-1]』誌(2026年4月20日付)に掲載された

地球最古の生命が息づくオーストラリアの浅瀬

 オーストラリア西部のインド洋に面したシャーク湾は、1991年にユネスコ世界遺産に登録された海域だ。

 絶滅危惧種のジュゴンや十数種のサメが生息し、異なる気候帯と植生が交わる生物多様性の宝庫として知られている。

 だが、この湾で最も希少な存在は、砂地の浅瀬に沈む岩のような塊の中に隠れている。

 シャーク湾の浅瀬は塩分濃度が通常の海水の約2倍以上という極めて高い環境で、その特殊な条件がストロマトライトと呼ばれる構造体を育てている。

 ストロマトライトとは、シアノバクテリアなどの微生物が層状に積み重なり、堆積物と固まってできた岩状の塊だ。

 地球上で最も古い生命活動の証拠とされ、約35億年前の地層からも同様の構造が発見されている。

 動物も植物も存在しなかった時代から地球に生き続けてきた、生命の生き証人である。

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岩の中から発見された新種の古細菌

 ニューサウスウェールズ大学のレンダン・バーンズ教授率いる研究チームは、シャーク湾のストロマトライトからサンプルを採取し、含まれる微生物のDNAを解析した。

 するとそこに、「アスガルド古細菌」に属する新種の微生物が発見された。

 アスガルド古細菌とは、北欧神話の神々の住む世界「アスガルド」にちなんで名づけられた古細菌のグループだ。

 古細菌は細菌とも動植物とも異なる第3の生命グループで、見た目は細菌に似ているが、遺伝子の構造は動物や植物など複雑な生物に近い。

 アスガルド古細菌はその中でも特に、核を持つ複雑な細胞である真核細胞の祖先に近いと考えられており、生命の進化の謎を解く存在として世界中の研究者が注目している。

 真核細胞とは遺伝情報を管理する核を持つ細胞のことで、動物・植物・菌類はすべてこの細胞でできている。

 新種の古細菌には、マルガナ語で「古代の家」を意味する「Nerearchaeummarumarumayae」という学名が与えられた。

 マルガナ語とは、3万年前からシャーク湾に暮らすアボリジナルの先住民族が話す言語だ。

 3万年という歴史も十分に長いが、ストロマトライトが地球に存在し続けてきた35億年という時間の前では、ほんの一瞬にすぎない。

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細菌と古細菌は管を通じて助け合っていた

 研究チームはクライオ電子トモグラフィーという最先端の撮像技術を使い、ストロマトライトの内部構造を詳細に観察した。

 クライオ電子トモグラフィーとは、試料を極低温で凍結した状態で電子線を当て、1mmの100万分の1というナノスケールの3次元構造を可視化する技術だ。

 この観察によって、古細菌と細菌の間に極めて細いナノチューブが伸びていることが確認された。

 両者はこの管を通じて、それぞれが必要とする物質を互いに送り合っていた。

 古細菌側からは水素や酢酸塩、ギ酸塩、亜硫酸塩といった化合物が渡され、細菌側からはアミノ酸やビタミンが送られていた。

 アミノ酸はタンパク質の材料となる物質で、どちらも生命活動に欠かせないものだ。

 強烈な紫外線と高い塩分濃度という過酷な環境の中で、2つの微生物は一方だけでは補えないものを補い合いながら生き延びていた。

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複雑な生命が誕生した謎に迫る手がかり

 地球上に生きるほぼすべての複雑な生物は、遺伝情報を管理する核を持つ真核細胞でできている。

 この真核細胞がどのように誕生したかは、生命科学における最大の謎のひとつで、今回の発見はその謎につながるかもしれない。

 現在有力な仮説では、数十億年前に古細菌と細菌が共生関係を結び、やがて一体化することで最初の真核細胞が誕生したと考えられている。

 今回観察されたナノチューブによる物質交換は、その共生関係がどのように始まったかを示す具体的な証拠になりうる。

 バーンズ教授は、今回観察された細菌と古細菌の共生の仕組みが、数十億年前に真核生物が誕生した過程を解き明かす手がかりになりうると述べた。

 どれほど小さな生物同士の結びつきであっても、地球の生命史に深い痕跡を残しているのだ。

 小さき者の世界には、まだ見つかっていないだけで、生命の謎につながる驚きの発見があるかもしれない。

 探し出すのは大変だけど、これまでの常識をまるっと覆す発見があるかもしれない。

References: CELL[https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(26)00330-1] / From Asgard to Earth: tiny discoveries hold clues to life’s greatest leap[https://www.unsw.edu.au/newsroom/news/2026/04/asgard-to-earth-tiny-discoveries-hold-clues-to-lifes-greatest-leap]

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