帽子をかぶって、考えるだけで文字が入力できる。そんな夢のようなデバイスが、2026年末にも登場する。
アメリカのスタートアップ企業Sabiが開発した帽子型の脳波読み取りデバイスは、頭皮に当たる内側に極小センサーを最大10万個搭載し、脳波を解析して思考をテキストに変換する。手術も、声を出す必要もない。
帽子をかぶって思考するだけで文字が入力できる
キーボードを叩かなくていい。声を出さなくていい。ただ帽子をかぶって、頭の中で言葉を思い浮かべるだけで、スマートフォンやパソコンの画面に文字が現れる。
そんなデバイスを、アメリカのスタートアップ企業Sabi[https://sabi.com/]が開発中だ。
Sabiはカリフォルニア州シリコンバレーのパロアルトに拠点を置く新興企業で、2025年にステルスモードを解除し、初めてその存在を公表した。
ステルスモードとは、スタートアップ企業が製品の詳細を伏せたまま開発を進める段階のことで、その解除は「いよいよ世界に向けて動き出す」というサインだ。
開発しているのは帽子型の脳波読み取りデバイスで、SabiのCEOは「地球上で最も装着しやすいBCI(ブレイン・コンピューター・インターフェース」と表現している。
脳コンピューターインターフェースとは、脳から出る電気信号をコンピューターに直接送り、文字入力や機器操作などに変換する技術の総称だ。
センサーとAIが脳波を言葉に変える仕組み
帽子の内側には、レンズ豆より小さな極小センサーが最大10万個びっしりと並んでいる。
センサーの正体は、脳波の計測に使われるEEGセンサーだ。
EEGとは脳が活動するときに生じる微弱な電気信号を頭皮の上から記録する技術で、病院での脳の検査にも古くから使われてきた。
Sabiはこのセンサーを自社設計のチップで動かし、取得した脳波データを独自のAIモデル「Brain Foundation Model」で解析する。
このAIは100人のボランティアから集めた約10万時間分の脳波データで訓練されており、特定の言葉を思い浮かべたときに脳がどんな信号を出すかを学習している。
そのため、異なる人が同じ言葉を思い浮かべたとき、脳波のパターンに多少の個人差があっても、画面には同じ言葉が表示されるように設計されている。
入力速度は英語で1分間に約30ワードで、プライバシー面ではデータを暗号化した状態でクラウドに送信し、AIも暗号化された信号のまま学習しているという。
脳に埋め込まなくても精度を保てる理由
脳波を使って文字を入力するという発想自体はこれまでにもあった。
イーロン・マスクが設立したニューラリンク(Neuralink)は、頭蓋骨に穴を開けて脳に直接チップを埋め込む手術型のBCIとして知られている。
脳に直接触れることで非常に強い信号が得られる反面、手術そのものへのハードルは当然高い。
Sabiのニット帽は頭皮の外側から脳波を読み取るため、信号の強さではNeuralinkに及ばない。
しかし10万個という圧倒的な数のセンサーと、膨大なデータで訓練されたAIが弱い信号を補うことでその精度を保つことに成功した。
また従来の脳はを利用したデバイスの多くは「右を向く」「手を握る」といった限られたコマンドにしか対応できなかった。
だが、SabiのAIは連続した自然な発話に相当する脳波を読み取ることができるとされている。
キーボードも声も必要としない未来へ
音声入力はここ数年で急速に進化したが、職場や公共の場では声を出すこと自体がはばかられる場面も多い。
Sabiのデバイスなら、声を一切出さず、手も動かさず、思考だけで文字を入力できる。会議中でも、図書館でも、周囲に気を使わずに使えることになる。
さらに大きな可能性を秘めているのが、身体的なハンディキャップを持つ人々への応用だ。
病気や事故で手足が不自由になった人にとって、手術を必要とせず帽子をかぶるだけで文字入力や機器操作ができるようになるのは、生活の質を大きく変えうる。
Sabiのニット帽は2026年末の発売を予定しており、野球帽タイプや、ハットタイプも続いてリリースされる見込みだ。
価格や文字入力以外の機能については現時点では未公表だが、手軽に試せるBCIとして、テクノロジーの世界に新しい扉を開こうとしている。
References: SABI[https://sabi.com/] / This mind-reading beanie could make keyboards obsolete[https://newatlas.com/wearables/sabi-mind-reading-beanie-typing-eeg/]











