リテラでは保守化と権力側に立った発言を散々批判しているダウンタウンの松本人志。しかし、1月1日に放送された『ワイドナショー元旦SP』では、「バラエティ番組のワイドショー化」「テレビが抱えるジレンマ」について語る場面で、珍しくいいことを言っていた。
「いや、僕ねー、でも、まあいろんな芸能ニュースがあるじゃないですか。で、やっぱり、いまだに事務所の力関係とか、事務所が大きい事務所のちょっと、なんかスキャンダルは扱えなかったりすることが、やっぱりあるんですね。でも、もうそんなん一般の人にバレてるから。なんであのニュースは扱わないの?っていうのは、もう今や、ネットで散々、あの上位に上がっているのに、ワイドショーでは一切扱わない。この違和感は、もうあの、テレビ業界の人たちも、もうそろそろ気づいてほしい。
「なぜあそこは扱わないの?っていったら、たいていの場合やっぱり、その事務所が大きかったり、いろんな問題が出てくるんですよ。でも、そこをしっかりと扱えるようになればいいと思うんですね」
たしかに、松本の言うように、ジャニーズ事務所やバーニングプロダクションはテレビでは完全にタブーになっている。 とくにこの1年はそのことが目立った年だった。SMAP解散報道ではジャニーズ事務所の批判が一切封印され、レコード大賞をめぐっては周防郁雄社長率いるバーニングプロダクションが三代目J Soul Brothers受賞の見返りに1億円の買収工作費を受け取っていた決定的不祥事を「週刊文春」にスクープされたのに、テレビは1秒も触れなかった。
タレントに対しても同様だ。Hey!Say!JUMP中島裕翔の痴漢事件から嵐・松本潤のAV女優との二股交際まで、ジャニーズやバーニング系のタレントのスキャンダルはまったく報じなかった。
松本はそのギャップに警鐘を鳴らしたわけだが、この発言には、番組の共演者たちは完全に凍りついていた。とくに、ゲスト出演していたウエンツ瑛士は自身がバーニングに所属しているということでかなりうろたえ、涙目になりながらこんな本音をもらしてしまった。
「いい面も悪い面も両方あると思うんですよ。もうそれは。あのー、それでうまく......まあ、うまく回るって言葉がすごく汚いとは思うんですけど、それで、テレビをより楽しみやすくしてる部分も絶対あると思うし、うーん、すっごい難しい」
「絶対自分だって、守られてる方の身なんですよ。
しかし、当然だが、ネットは「松ちゃんよく言った」という声であふれかえっている。「自分もタレントでありながら、ここまで踏み込むというのは、さすが」という評価が大勢を占めている。
だが、本当にそうなのだろうか。たしかに松本はこれまで誰も触れなかった大手芸能事務所タブーの問題には触れた。しかし、具体的に「ジャニーズ」とか「バーニング」の名前を挙げたわけではなく、結局、タブーを温存させたまま。
「僕らだってバカじゃないから、そんな好き勝手言えないもんね」
「触れないことの残念さというか、結局それって、一番損すんのはタレントやと思うんです」
「芸能界を誰も信用してくれなくなってくるっていうのが、僕は嫌やなって思います」
ようするに、松本はネットで話題になっていることを口にできないのは自分のせいじゃないといい、むしろ自分たちはテレビ局に恥をかかされている、と不満を語っていたに過ぎないのだ。これは明らかに責任転嫁というヤツだろう。
そもそも、松本くらいのポジションになれば、ジャニーズだろうがバーニングだろうが、何をいってもテレビ局から抑えこまれることはないはずだ。それを自主規制しておいて、自分がテレビの被害者のように語るのは、卑怯すぎないか。
しかも、決定的なのは、松本は自分自身が事務所に守られているということにまったく無自覚なことだ。
ところが、松本は今回の『ワイドナショー元旦SP』では自分が加害者の側にいることを完全に棚上げして、まるで被害者気取りで、テレビを嘆いて見せたのだ。
これなら、自分がバーニングに守られていることを自覚して、本音を漏らしたウエンツのほうが、正直な分、マシだろう。
いずれにしても、松本が芸能報道の偏りを本気で嘆いているのなら、今後、事務所にあの記事を潰せとか、あそこに抗議しろ、なんてことを一切言わないことだ。そして、『ワイドナショー』でバーニングプロのレコ大1億円買収問題や嵐・松潤のAV女優との二股交際を取り上げればいい。それができないなら、結局、今のテレビが変わることはないし、世間とのズレも埋まることはない。
(本田コッペ)