* * *
テレビ番組を放送する時期というのは視聴率に大きく影響する。
早すぎるというのもダメだけど、遅すぎるというのはもっとダメだ。
だが、ディレクターはどちらかというと「どう作るか」を優先している。どんな番組であっても「もう少し時間をかけたい」と思っているのだ。だから後手になることが多い。
ではいつが良いのか? 大勢の人間が取り掛かかってでも早く作る番組が良いのか、多少時間がかかっても一人の人間が取り掛かるのが良いのか、これは悩ましい問題でもある。
1998年の5月にロックバンド「X-JAPAN」のhideが死んだ。
突然の死だった。これはすべてのニュース番組が取り扱うということは容易に想像できた。どこも深堀がしたい、深堀できる追跡ネタを求めたのは当然のことだ。
たとえば「死の真相が知りたい」というのがある。
死んだ第一報が入った時に、撮影用にカメラを一台出した。その先はある少女の家だった。実は我々は以前から彼女を撮影していた。その時に彼女はショックで泣き続けていた。そんな状況だから、それ以上の撮影が出来たわけではない。もちろん、そこにhideの死の真相があるわけではない。
その映像はニュース用ではないので放送時期が決まっているわけではなかった。しかし、すぐに「放送できるならやりましょう!」という案が出た。そして放送に向かって準備が始まるのだが、大勢が参加して短時間で作るというのは既にニュースでどこも作っている。
当日か、あるいは葬儀の日に十分すぎるほど放送される。
それはゴールデンウィークの中での判断だった。本当に満足できるような内容になるのか、ならないなら「撮れただけ」を葬儀の日に出すほうが賢明である。しかし、数週間かけて作ろうということになった。どこまで撮れるものがあるのか、難しい読みである。それでも「放送しないといけないな」と思っていた。
少女は難病でhideに一度会いたいという夢を持っていた。それは適うのだが、私たちはその後もhideは取材とは離れて彼女と交流を続けていた。単独コンサートに招待し、楽屋でも会ったりしていた。コアなhideのファンの間では彼女は有名でもあった。
築地本願寺でのhideの葬儀には5万人以上が列を作った。
担当ディレクターは彼女を通じてhideのイメージを持っていた。「良い奴だ」と。率直にそれを表現したいと。新聞にもhideに熱狂するファンたちを理解しようとする解説、投書がいくつも載った。取材はファンたち、そしてその親たちを中心に行っていった。ファンはどちらかというと「強者」というより「弱者」といえる人が多かった。
その取材はほとんど一人のディレクターが行った。もちろん、編集も。その番組の放送はhideが死んでほぼ一ヶ月後に行われた。結果的には、視聴率も高かった。
X-JAPANもhideも知らないスタッフが参加した番組だったが、皆「何だ、良い奴じゃないか」という印象を持った。
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