介護保険料の見直し案とは?

10月31日、厚労省の介護保険部会で介護保険料見直しの議論が行われました。対象となるのは“現役並み”の所得を得ている高所得者層です。具体的にどの程度の引き上げになるかはまだ不透明ですが、2024年度介護報酬改定では実施される公算が高いと報じられています。

背景にあるのは介護費用の増大

介護保険にかかる費用は、65歳以上の「第1号保険者」と40~64歳の「第2号保険者」がそれぞれ50%ずつ負担する仕組みになっており、第1号保険者の介護保険料は、全体の費用に応じて市区町村で定められています。

そのため、要介護者が増えて介護保険にかかる費用が増えると、第1号保険者の介護保険料も比例して高くなります。

介護にかかる費用は、2022年の予算ベースで13.3兆円。2000年度の介護保険制度創設当時から約3.7倍にまで膨らんでいます。

そのため、第1号保険者の介護保険料も増大傾向にあります。2000年度には全国平均で2,911円でしたが、2021~2023年度は6,014円にまで増大。厚労省の試算では、2040年までに9,000円を超えると見込まれています。

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出典:『給付と負担について』(厚生労働省)、『2040年を見据えた社会保障の将来見通し』(内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省)を基に作成

介護保険料の段階

介護保険料は、これまでも収入を9つの段階に分けて計算されていました。収入に応じて第5段階の保険料基準額に一定の倍率をかけていく仕組みです。

高齢者の介護保険料がアップ!?所得に応じた引き上げが議論に

基準額より高くなるのは第6段階からで、第1号保険者の約40%を占めています。現行の段階が採用されたのは2015年からですが、市町村によっては、すでに独自の段階を採り入れていることも多く、最高で25段階を設けている自治体もあります。

というのも、年間所得が320万円以上になると一律負担になっているからです。例えば、所得が527万円に達すると保険料負担は12万円程度で上限になります。つまり、1,000万円以上でも527万円の人と負担が変わらない仕組みになっているのです。

そのため、高所得層にはより負担を大きくしてもらい、低所得者層からの介護保険料を引き下げる案も視野に入れられています。

すでに高所得者の負担額を引き上げている自治体も

今回は町田市の介護保険料について、町田市医療と介護の連携支援センターのセンター長である長谷川昌之さんに話を伺いました。

町田市の基準額は5,750円(年額69,000円)で、以下の15段階で設定されています。

町田市の第1号被保険者(65歳以上)介護保険料

今回の議論のように改正された場合、財源に効果はあると思いますが、40歳以上の保険料を納めている方の負担がどれぐらい増すのかを見極める必要があると思います。どの程度財源に影響するか不明です。

また、財源がないからと場当たり的に保険料を引き上げるのではなく、引き上げたことによるメリットをもっと発信しなくてはならないのではないでしょうか。引き上げられた分の介護保険料がどのように使われているかを見える化といったことも必要だと思います。

介護職員などの処遇改善は行われていますが、相談援助職は対象外です。介護保険事業にはさまざまな職種の方がかかわっているため、引き上げをした部分を現在の処遇改善に当てはまらない職種にも充当してほしいと考えます。

介護サービスの利用費負担アップは見送りに

高所得者層への介護保険料引き上げが実現すると予想される一方で、これまで議論されてきた介護保険サービスの一律2割負担は先送りされる見込みが高くなっています。

介護サービスの自己負担額は、これまでも所得に応じて引き上げられてきました。現行の制度では合計所得(年金を含まない)が160万円以上から自己負担額が2割に引き上げられています。

65歳以上の人のうち約20%が当たりますが、全体の費用に対する自己負担割合は約7.4%となっており、従来からほぼ横ばいです。

つまり、膨らみ続ける介護費用に充てる財源としてはぜい弱で、所得160万円未満の残り約80%の方からの税収を増やさなければ、焼け石に水。そのため、65歳以上の世帯で2割負担を一律にするという案が議論されていたのです。

しかし、厚労省の調査によれば、自己負担額が2割になった層は経済的な理由で介護サービスを控える傾向が強いことがわかっています。

介護サービスの利用控えが起こり、健康状態が悪化すると、今度は医療費を圧迫しかねません。そこで、2024年度介護報酬改定では一律2割負担は見送られる公算が高くなっています。

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