付加年金制度とは、付加保険料を上乗せして納付することで、将来老齢基礎年金に付加年金を加えた額を受け取れる制度のことです。2年受給すると納付保険料分は受け取れる点や、納付額は所得控除(社会保険料控除)の対象である点などが加入のメリットとして挙げられます。
個人事業主やフリーランスなどとして独立した際に、将来の年金額に不安を覚える方もいるのではないでしょうか。選択肢のひとつとして付加年金制度を検討できるように、制度の概要や他の制度との違いを理解しておくことが大切です。
本記事では、付加年金制度の概要を説明したうえで、国民年金基金やiDeCoとの違いについても詳しく解説します。
付加年金制度とは
付加年金制度とは、定額保険料に月400円の付加保険料を上乗せして納付することにより、老齢基礎年金(※)に付加年金を上乗せして受け取れる制度です。第1号被保険者や任意加入被保険者が、付加年金制度を利用できます。
なお、国民年金保険料と同様に、付加保険料はまとめて前払い(前納)することで一定の割引を受けられる場合があります。例えば、毎月付加保険料を納付すると年間で4,800円(400円 × 12カ月)かかるのに対し、1年前納した場合の納付額は4,700円です(2026年度・口座振替のケース)。
※老齢基礎年金:保険料納付期間や保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上ある場合に、受け取れる年金。年金の額は、20歳から60歳までの40年間の加入期間などに応じて計算される
付加年金に加入した場合の加算額
付加年金に加入した場合の加算額は、以下の通りです。
・付加年金の年金額(円) = 200円 × 付加保険料納付月数
例えば、50歳から60歳までの10年間(120カ月)にわたって付加保険料を納付した場合の付加年金額は24,000円です。つまり、年金受給開始年齢を迎えたときに、老齢基礎年金に加えて毎年24,000円を生涯にわたって受け取れます。
付加年金の加入条件
付加年金を納付できるのは、国民年金の第1号被保険者や、65歳未満の任意加入被保険者です。
第1号被保険者とは、20歳以上60歳未満の自営業者・農業者・学生・無職の方などを指します。そのため、70歳未満の会社員や公務員など厚生年金の加入者(第2号被保険者)や、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(第3号被保険者)は、制度の対象外です。
なお、任意加入被保険者とは、国民年金に任意で加入することで第1号被保険者と同じ扱いを受ける人を指します。
・20歳以上60歳未満で厚生年金や共済組合の老齢年金を受けられて、日本国内に住所がある
・20歳以上65歳未満で日本国籍をもち、海外に住んでいる
・60歳以上65歳未満で、日本国内に住所がある
・65歳以上70歳未満
付加年金に加入するメリット
付加年金に加入するメリットは、主に以下の通りです。
・2年受給すると納付保険料分は受け取れる
・納付額は所得控除(社会保険料控除)の対象になる
それぞれ解説します。
2年受給すると納付保険料分は受け取れる
基本的に、2年受給した段階で納付した保険料分は受け取れる点が、付加年金に加入するメリットです。40歳から60歳までの20年間(240カ月)にわたって、付加保険料を納付したケースで考えてみましょう。
今回のケースにおける納付額の合計は、96,000円(400円 × 240カ月)です。一方、年金受給開始年齢を迎えると、老齢基礎年金に加えて毎年48,000円の付加年金を受け取れるようになります。
「48,000円 × 2年」は96,000円のため、2年受給してからは納付額以上を受け取れるでしょう。
納付額は所得控除(社会保険料控除)の対象になる
付加年金として納付した額は、全額所得控除の対象となる点もメリットとして挙げられます。
所得控除とは、要件を満たす場合に各所得合計から一定額を引ける制度のことです。健康保険・国民年金・厚生年金保険などの保険料で被保険者として負担するものは、その年に支払った全額を「社会保険料控除」で控除できます。
そのため、付加年金保険料を支払って、課税所得を下げることで、所得税や住民税の負担軽減につながるでしょう。
付加年金に加入する際のデメリット・注意点
付加年金への加入を検討する際は、以下のデメリットや注意点も理解しておきましょう。
・納付額が受給額を上回ることもある
・インフレのリスクがある
・加入月以前にさかのぼって納付はできない
それぞれ解説します。
納付額が受給額を上回ることもある
状況によって、納付額が受給額を上回ることがある点が、付加年金に加入することのデメリットです。
付加年金は、受給期間が2年未満の場合に、付加保険料の納付額を下回ります。そのため、受給開始年齢を迎えてから、2年も経たないうちに万が一のことがあると、付加年金のメリットを活かせないでしょう。
なお、年金を受け取る前に万が一亡くなってしまった場合も、これまで納付した額は返金されません。
インフレのリスクがある
インフレのリスクを伴うことも、付加年金に加入する際のデメリットとして挙げられます。
インフレ(インフレーション)とは、モノやサービスの価値が上がり続ける(お金の価値が下がり続ける)ことです。例えば、インフレが進むとこれまで100円で購入できた商品に対して、150円支払わなければならなくなる場合があります。
付加年金には物価スライドがはたらかないため、受け取る額は原則として「200円 × 付加保険料納付月数」です。そのため、年金受け取り時にインフレが進んでいると、実質的な価値が目減りしてしまうでしょう。
なお、公的年金の年金額自体は、賃金・物価の変動率に応じて年度ごとに改定されます。
加入月以前にさかのぼって納付はできない
付加年金は、加入した月よりも前にさかのぼって納付できない点にも注意が必要です。
例えば、2026年6月中に付加保険料の納付を申し込んだ場合、2026年5月以前の分は納付できません。より多く付加年金を受け取りたいのであれば、早めに納付の手続きをしておいたほうがよいでしょう。
なお、加入した月以降に未納があった部分については、2年前の分までさかのぼって支払いできます。
付加年金の申込方法
付加年金の納付を開始するには、まず「国民年金付加保険料納付申出書」を市役所・区役所・町村役場や年金事務所に提出します。申出書は、日本年金機構の公式HPよりダウンロード可能です。
また、電子申請でも申し込めます。電子申請を使えば、より簡単かつ素早く手続きできるでしょう。
付加保険料の納付は、申込月(郵送の場合は、提出先の受付月)より始まります。納付期限は、各月の翌月末日(※)です。
※月末が土日祝日や年末年始にあたる場合は、翌月最初の金融機関等の営業日が納付期限
付加年金と他の制度の違い
付加年金と混同しやすい制度として、国民年金基金やiDeCoなどがあります。それぞれの概要や付加年金との違いについて、押さえておきましょう。
付加年金と国民年金基金の違い
保険料や受給額の決め方が、付加年金と国民年金基金の違いとして挙げられます。
国民年金基金とは、自営業の人やフリーランスなど加入することで、将来受け取る公的年金の額を増やせる制度です。付加年金の保険料は毎月400円、年金額は「200円 × 付加保険料納付月数」と一律で決まっているのに対し、国民年金基金の保険料や受給額は種類・性別・加入時年齢によって異なります。
なお、すでに国民年金基金に加入している場合は、付加保険料を納付できません。国民年金基金についてより詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。
国民年金基金とは?加入するメリットや国民年金との違いについて解説
付加年金とiDeCoの違い
付加年金とiDeCoでは、加入できる対象者が異なります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、自分が拠出した掛金を自分で運用し、資産を形成する年金制度のことです。65歳まで掛金を拠出可能で、原則として60歳以降に老齢給付金を受け取れます。
付加年金の対象者は、国民年金の第1号被保険者や65歳未満の任意加入被保険者であるのに対し、iDeCoは基本的に20歳以上65歳未満の公的年金の被保険者が加入できる制度です。
iDeCoと付加年金は、同時に加入可能です。ただし、第1号被保険者や任意加入被保険者は、iDeCoの掛金と付加保険料の合計を拠出限度額(68,000円/月)以内に収めなければなりません。そのため、付加年金に加入している場合は、掛金の上限が実質的に67,000円/月(※)となる点に注意しましょう。
iDeCoの始め方を知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。
4ステップでiDeCoの始め方を理解しよう!申込後の手続きも解説
※付加保険料は月額400円ですが、iDeCoの掛金は1,000円単位で設定されるため、実質的な上限は67,000円/月となります。
付加年金を納付すれば国民年金に上乗せできる
付加年金制度とは、付加保険料を上乗せして納付することにより、将来老齢基礎年金に付加年金を上乗せして受け取れる制度のことです。付加保険料として納付した額は、毎年社会保険料控除で所得から控除できる点がメリットです。
一方で、付加年金にはインフレのリスクがある点などに注意しなければなりません。将来受け取る年金額に不安がある場合は、メリットやデメリットを比較してどのような制度や商品を利用すべきか考えておきましょう。
参考:日本年金機構「付加年金」
参考:日本年金機構「付加保険料の納付」
ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。

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