せっかくいいものを作っているのに、売れない—— 。そんな課題を抱える老舗や地方企業は少なくない。
販路拡大・新規顧客獲得をめざし、大手ECプラットフォームを活用しても「ブランドを知っている顧客」しか集まらないケースも多い。一方、“発見型コマース”の手法を取り入れた新たなECプラットフォームを活用してこの課題をクリアした企業もある。今回は「さとう精肉店」(宮城県塩竈市)と「JAてんどうフーズ」(山形県天童市)の2つの事例から、地方企業が“全国区で戦う”ためのヒントを探る。


「検索型EC」では知名度・ブランド力の高い企業には勝てない?
従来のECプラットフォームは「検索型」と呼ばれ、広告費をかけて検索順位を上げ、リーチ数を増やして売上アップを狙うのが一般的。基本の顧客層は“お目当ての商品”を検索する「ブランドや商品を知っている人」となるため、既存顧客が中心の地方企業にとっては新規客からはそもそも検索されず、顧客層の拡大という成果につながりにくいのが現状だ。

“馴染み客”が中心の地方の地元密着企業などは特に、潤沢な広告予算を持つ大手企業やブランド認知力・知名度の高い企業にはなかなか太刀打ちできない。せっかくいいものを作っていても、届けたい人に届かないという歯がゆい状況に陥る結果に…。


「発見型コマース」で“知らなかった商品”に出会う機会を創出
そこで、新規顧客開拓のカギとなるのが「発見型コマース」という新たな手法。消費者が能動的に商品を『探す(検索する)』のではなく、消費者の興味や関心・購買行動などを基にアルゴリズムでその人に合った商品やサービスを自動表示して『偶然の出会い』を創出する仕組み。興味関心の高いコンテンツが自動的に表示されるSNSでもよく見られる手法だ。

宮城県の「さとう精肉店」と山形県の「JAてんどうフーズ」はこの“発見型コマース”で新規顧客層獲得への活路を見出した。

きっかけとなったのはグローバルオンラインマーケットプレイス「Temu」が2025年より開始した「国内販売事業者の募集プログラム」。
「Temu」は、利用者の興味や購買傾向をもとにアルゴリズムにより商品を自動表示する“発見型コマース”の手法を活用したECプラットフォームで、検索せずに“知らない商品と出会う”という新たな買い物体験を提供している。

さとう精肉店とJAてんどうフーズの2社は、日本の地域事業者の販路開拓を後押しする同プログラムを活用して新規顧客へのアプローチをスタートさせた。


【さとう精肉店】季節に左右される売上…安定した販売基盤の確保が課題

ここからは実際に事例を紹介していく。
1949年創業の「さとう精肉店」は、漁港の船団や地元飲食店への卸を起源とする老舗精肉店。もともとは遠洋漁船や地域住民への販売が主だ。三代目の佐藤浩紀さんは自社サイトの開設や大手ECプラットフォームへの出店など、オンライン販売に挑戦するも、注文は季節やイベントに左右され、4~5月は急減するなど安定した販売基盤の確保が課題だった。

そこで国内販売事業者の募集が開始されたTemuへの出店を決意。初日から3件の注文が入り、その後売上は安定的に伸長。


出店から2カ月でTemu店舗が同社が展開する全チャネルの売上4位に。また、一人暮らしでも購入しやすい仙台牛・牛タンの小分け真空パックを展開したところ若年層からの反応が増加。注文エリアもこれまで中心だった宮城県内から東京・神奈川・名古屋など全国各地へ拡大した。

佐藤さんは「他のECサイトでは、最初の注文が入るまで広告を出して1週間ほど待つのが普通でしたので、本当に驚きました」と話す。


【JA てんどうフーズ】他ECでは伸び悩んでいたカレーパンが月5倍の販売量に
「JAてんどうフーズ」は、これまでも大手ECプラットフォームで複数チャネルを運営してきた。歴15年の“ECベテラン”だが、既存チャネルでは届かない新規顧客層の開拓が課題だった。

Temu出店後、すぐに山形県産米「雪若丸」がヒットし、りんごも完売。瞬く間に通販部門の月間売上トップチャネルに。営業部通販課課長の加藤真友美さんは「立ち上がりは他のモールと比べても早いと感じました」と評価。
さらに、他モールでほぼ売れなかったカレーパンがTemuでは月5倍の販売量を記録するなど「これまでとは違う購買層がいる」と実感しているそう。

広告費に依存せず新規顧客へリーチできる「発見型」が地方中小の成長の一手に
「さとう精肉店」や「JAてんどうフーズ」の事例を見ても、短期間で新規顧客層への確実なリーチが実現している。能動的に検索する「検索型」と異なり、消費者が受動的に商品やサービスと出会える「発見型」は、ブランド力や認知度で劣るケースでも広告費や検索順位に依存せず新規顧客へリーチすることが可能なため、新規顧客の開拓に課題を抱える地方中小企業にとって、有効な一手となり得る。

「発見型コマース」という手法は、地方企業でも“全国”の新規顧客に商品の魅力をしっかりと届けられる、まさに“令和のEC新手法”ともいえそうだ。




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