再審制度を見直す刑事訴訟法改正案に自民党内から異論が相次いでいる。改正案が、再審決定に対する検察の不服申し立て(抗告)を引き続き容認する方向にあるためだ。
過去の冤罪(えんざい)事件に対する反省を踏まえれば、検察の抗告を禁止すべきだ。

社説

 検察の抗告を巡っては、再審を始める手続きをいたずらに長期化させているとの批判が強い。
 1984年滋賀県日野町で起きた酒店経営の女性殺害事件、いわゆる「日野町事件」では、大津地裁が2018年7月に再審開始を決定したが検察側は2度抗告を繰り返した。最高裁が最終的に抗告を退け再審手続きの開始が確定したのは約7年半後の今年2月だった。
 再審が始まる前の段階で足踏みすれば、証拠は散逸・劣化し証人の記憶が薄れるのは避けられない。時間の経過により再審を求める人は高齢化する。「日野町事件」では、本人は受刑者のまま死亡。その後再審が始まった。
 検察による抗告が、刑訴法が定める「(有罪の確定判決を)受けた者の利益のために」行うとの再審制度の趣旨を損なっているのは明らかだ。
 法務省は長期化に対する批判を避けるため、検察が抗告した後の審理期間に制限を設けるなどの修正案を検討し、近く自民党に提示する方向という。ただそれでは本質的な解決とは言いがたい。
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 検察による抗告の維持を決めた法相の諮問機関・法制審議会の部会では「三審制を経て確定した判決を下級審が覆すことになり不合理だ」との声もあった。
政府が検察による抗告禁止に及び腰なのは、こうした法制審の声に配慮したためという。
 問題の本質は無実の罪で苦しむ人の速やかな救済であり、制度を複雑にしても解決が遠のくだけだ。
 静岡一家4人殺害事件で逮捕から58年後にようやく再審無罪を勝ち取った袴田巌さん(90)の姉ひで子さん(93)は「そういう法律があるから(無罪確定までの時間が)長くかかった」と訴え徹底した制度改正を求めている。制度見直しのきっかけとなった当事者の声は重い。
 不満なら、検察は再審開始決定後のやり直し裁判の中で存分に主張できる。なぜ「入り口」で時間を費やす必要があるのか。
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 改正案では捜査機関が持つ証拠について、裁判所が必要と認めない限り弁護士がそれら証拠を閲覧・コピーできず、外部提供が罰則付きで禁止されているのも問題だ。
 日野町事件では、容疑者が捜査員を現場に案内したのではなく捜査員が誘導していたことが再審手続き前は非開示だった写真から明らかになり、再審開始の契機となった。
 改正案では開示された証拠を支援者らが分析することもできなくなる可能性がある。
 検察による抗告禁止も含め改正案は抜本的に見直すべきだ。
[社説]再審制度見直し 検察の抗告 禁止すべきの画像はこちら >>
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