緊迫した国際情勢の中で開かれた会議だ。難航が予想された一方、各国が4週間膝詰めで話し合う機会として期待も広がっていた。
失敗の落胆は大きい。
 ニューヨークの国連本部で開かれていた核拡散防止条約(NPT)再検討会議は最終日の22日(現地時間)、成果文書を採択できず決裂し、閉幕した。
 決裂したのは2015年と22年に続き、3回連続となる。1970年の条約発効以来初めてだ。
 最大の要因は米国とイランの対立にある。
 「国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れ義務に違反している」としてイランの名指しに固執する米国に対し、イランが強く抵抗。成果文書は全会一致が原則だが、両国は終始非難し合い、歩み寄りの姿勢は見られなかった。
 米国はイスラエルとともにイランを先制攻撃した。NPT創設国でもある米国が会議の前に攻撃を仕掛けたことで、イラン側の態度は一層硬化している。
 他にも会議ではロシアやフランスなど核保有国のエゴが目立った。
 成果文書案は4回にわたって修正され、核使用の非人道性を指摘する文言や、最終版からは北朝鮮の非核化に支持を表明した項目なども削られた。
 最終日ぎりぎりまで調整が続けられたにもかかわらず、議長は「合意に至る見込みがない」として採択断念を表明するに至った。

 会議中、国連本部では日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が「原爆展」などを開くなどし合意を強く願っていた。被爆当事者の失望は計り知れない。
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 NPT体制は非保有国への核の不拡散、核保有国の軍縮努力義務、原子力平和利用の権利-という3本の柱で成り立っている。
 しかし、ロシアによるウクライナ侵攻や、米イスラエルのイラン攻撃など核保有国の戦争が、体制を大きく揺るがしている。
 大国が自国のエゴをむき出しに軍拡に走れば、非保有国が「安全保障には核保有が必要だ」と考える拡散リスクを増大させかねない。
 核保有国はNPT体制の維持・強化へ核軍縮の責任を果たすべきだ。
 唯一の被爆国である日本も十分に役割を果たせたとは言えない。
 今回の再検討会議に日本代表として出席したのは外務副大臣だった。「核なき世界」の実現へ、熱量を示すためには首相や外相が出席すべきだった。
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 今年2月には、米国とロシア間で唯一残る核軍縮合意「新戦略兵器削減条約(新START)」が失効した。そうした中でNPTの意義はますます重要になっている。
 次回の会議は5年後の2031年と決まった。

 NPTの第6条では核保有・非保有に関わりなく、加盟国の全てに核軍縮のための誠実な交渉義務を課している。
 各国は体制の立て直しに向けて緊張緩和や核リスクの低減に尽力しなければならない。 
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