デビュー31年目を迎えた“ご当地ソングの女王”水森かおりが、新曲「恋の終わりの名古屋にひとり」を3月31日にリリースし、オリコン週間演歌・歌謡シングルランキング1位(2026/4/13付)と好調な売れ行きを見せている。楽曲の舞台となる名古屋は、2003年に『NHK紅白歌合戦』初出場の知らせを受けた場所で、水森にとってはまさに「縁起のいい街」。
全国津々浦々173曲ものご当地ソングを世に送り出してきた水森に、ご当地ソングへの思いや醍醐味、さらにデビュー31年目を迎えた現在の心境を聞いた。

■ラッキースポット名古屋を舞台にした新曲はニコニコ歌える世界観

 これまで45都道府県を舞台に173曲ものご当地ソングを世に送り出してきた水森。その第一歩は1999年にリリースした7枚目のシングル「竜飛岬」だった。1995年に「おしろい花」でデビューするもなかなか結果が出せず、クビになりかけたこともあったというが、同作で水森の名はカラオケなどを通じて徐々に浸透。そして転機となったのが、2002年にリリースした10枚目のシングル「東尋坊」だった。

 日本海に面した最大高さ25メートルもの断崖絶壁が約1キロにわたって続く福井県の景勝地を舞台に、叶わぬ恋への決別しがたい思いを抱えながら、右と左のどちらに進むかを迷う女性の心を、哀愁漂う歌声とスケール感あふれる歌唱で大ヒットを記録。さらに翌年リリースした「鳥取砂丘」は約1年間のロングセールスを続け、水森はその年の『第54回NHK紅白歌合戦』に初出場。こうして、その名を広く知らしめるとともに、水森の“恋に破れた女性が明日に向かってひとり旅を続ける「ご当地ソング」の旅”が始まったのだ。

 そんな水森の37枚目のシングルとなる「恋の終わりの名古屋にひとり」は、たかたかし作詞、弦哲也作曲という黄金コンビによる名古屋=“尾張(おわり)”と、恋の“終わり”を掛け合わせたキャッチーな歌詞とメジャーなメロディーが印象的な演歌。名古屋を舞台にしたご当地ソングは水森にとって初となることから、「名古屋は『紅白』初出場の報を受けた場所であり、初めて座長公演をやらせていただいた場所でもあり、私にとって大切なラッキースポット」とその地を歌う喜びを語る。

 しかし、最初に曲を受け取った時は、実は「ちょっとごねた」のだと!?

 「デビュー30周年だった昨年リリースした『大阪恋しずく』は、ご当地ソングの中で初めて幸せをつかんだ女性を歌った“幸せ演歌”だったので、私としてはもう1作くらい幸せでいる状態を歌いたいなと思っていたんです。なのに、冒頭の歌詞が“やっと掴んだ しあわせなのに いつの間にやら こぼれ落ち…”って、また破れちゃったのかと(笑)。
で、『名古屋にひとり』ではなく『名古屋にふたり』にしません? ってごねたりしたんですけど、『“終わり”と“尾張”をかけているから』って言われて、なるほど、それはうまい! と(笑)。それに楽曲を聴いてみると、恋が終わった女性の切ない歌ではあるんですけど、悲しさをあまり感じないというか、すごく晴れやかな主人公が浮かぶ世界観で。きっとこの主人公は大阪での恋がとても幸せで、その恋にちゃんと納得して区切りをつけて新しい一歩を踏み出しているんだなってイメージできたんです。その通り、歌っていてとても気持ちがいいし、ニコニコしながら歌っています(笑)」

■ご当地ソングを通じて得た地元の人との交流は私の財産

 これまで173曲もの“ご当地ソング”を歌い、全国28の自治体で観光大使を務める水森。ご当地ソングではその土地の匂いや風景を表現する必要があるが、ここまで増えるとその歌い分けは難しくはないのか。そう尋ねてみると「私の歌は常に旅をしている女性が主人公で、その土地に根付いている女性の歌ではないので、入り込みやすいんです」とニッコリ。

 さらに「私は東京下町生まれだから、海や山など比べるものがない分、ダイレクトに景色に感動できて、そこもイメージしやすい」とも。

 「初期の頃は、その土地に縁もゆかりもない私が歌っていいのかな、皆さんに受け入れてもらえるのかなという不安もありましたが、最近は先々で『(自分の土地を)歌ってくれてありがとう』とか、同じ県の方に『あっちもいいけど、こっちも歌って』とか嬉しいお言葉をたくさんかけていただけるので、なおさらもっといろいろな土地を歌いたいと思えています」

 “ご当地ソング”を歌う何よりの醍醐味は「歌を通じて出会えるその土地の人たちとの交流ができること。その交流は発売した年を過ぎても途切れることなく続いて、皆さんが私の歌を大事に思ってくれたり、娘みたいな気持ちで応援してくださったり。これは私の自慢であり、誇りであり、財産です」と目を輝かす。

 ただし「福岡と徳島はちょっと気まずい」と苦笑い。というのも、47都道府県中、その2県だけまだ歌っていないのだ。
しかし、「全国制覇が目標ではないから」とキッパリ語る。

 「『早く制覇してください』って言われることも多いのですが、私もスタッフもそこをゴールには考えていなくて、常に一番大事にしているのは詞でありメロディーであり作品の世界観。それに市町村の数で言ったら、日本には1700以上ありますから、今、173曲なので、毎週リリースしても死ぬまでに間に合わない(笑)。それだけ日本にはいろいろな景色があるので、まだまだ長い旅は続きます」

■バラエティ等への出演でみせる明るくキュートなキャラクターでファン層も拡大

 明るく、飾らず、気取りなく、フレンドリーでキュート。東京下町出身ならではの気っ風の良さで近年はバラエティや旅番組、通販番組等への出演も多い水森。23年連続出場の『紅白』では近年、巨大衣装やイリュージョン、ドミノなどさまざまな企画で楽しませてくれ、フジテレビ系バラエティ『千鳥の鬼レンチャン』では、扮装モノマネ芸人のキンタローとタッグを組んで衝撃的なコスプレ姿で歌唱を披露し大きな話題を呼ぶなど、キャラクターの魅力も広く浸透し始めている。

 「デビュー当時、『同年代の人たちと演歌を結びつけられる架け橋のような歌い手になりたい』という目標を持っていたのですが、今では、キャンペーンやコンサートに同年代の方が増えて、さらに私より若い方が小さいお子さんを連れて来てくれたり、お孫さんと3世代で来てくれたり、目標が叶えられているかもって思うんです。そういう方々の中にはバラエティ番組で私の存在を知ったという方も多いので、出演のオファーをいただけているのは本当にありがたいなって思います。私自身、バラエティへの出演は本当に楽しんでやらせてもらっていますしね。ただ、『鬼レンチャン』の扮装についてはよく会社がOKしてくれたなって思いますけど(笑)」

 今後については「とにかく立ち止まることなく、がむしゃらに進んでいくしかない」という水森。筆者の「大御所」との語りかけに「いやいやいやいや」と大きく首を横に振る姿には謙虚な人柄も垣間見え、印象的だった。

 「自分でも、52歳なんだ、もう30年もやってるんだって考えるとちょっとビックリなんですよ。
デビュー当時は『紅白』に出たいとか、たくさんコンサートをできるようになりたいとかいっぱい夢を思っていましたし、1回テレビに出れば有名人になれるみたいにも思っていましたけど、実際、デビューしてからはそんな生ぬるいものじゃないという現実を目の当たりにして、毎年毎年、来年大丈夫かなって不安な日々で。ただただがむしゃらに歩んできたので、振り返って30年経ったんだって思うと本当に不思議なんです。でも、なぜ30年間も続けてこられたんだろうって考えると、スタッフの皆さんやファンの皆さんに支えてもらえたからだなって、感謝の気持ちでいっぱいで。だからこそ、これからも笑顔で皆さんにその思いを伝えていきたいし、先輩方が作ってくださった道筋を歩かせていただいていることにも感謝していますので、その道を後に続く若い世代に繋げられるよう、いろいろな形で盛り上げていけたらと思っています」

取材・文:河上いつ子

<作品情報>
■水森かおり「恋の終わりの名古屋にひとり」
発売日:2026年3月31日

【タイプA】
品番:TKCA-91687/1550円(税込)
収録曲
1 恋の終わりの名古屋にひとり
作詩:たかたかし/作曲:弦哲也/編曲:伊戸のりお
2 能登の春
作詩:さくらちさと/作曲:弦哲也/編曲:伊戸のりお
3 恋の終わりの名古屋にひとり(オリジナルカラオケ)
4 能登の春(オリジナルカラオケ)
5 恋の終わりの名古屋にひとり(半音下げカラオケ)
6 能登の春(半音下げカラオケ)
7 恋の終わりの名古屋にひとり(半音下げカラオケ・ガイドメロ入り)
8 能登の春(半音下げカラオケ・ガイドメロ入り)

【タイプB】
品番:TKCA-91688/1550円(税込)
収録曲
1 恋の終わりの名古屋にひとり
作詩:たかたかし/作曲:弦哲也/編曲:伊戸のりお
2 天空の里
作詩:鮫島琉星/作曲:大谷明裕/編曲:竹内弘一
3 恋の終わりの名古屋にひとり(オリジナルカラオケ)
4 天空の里(オリジナルカラオケ)
5 恋の終わりの名古屋にひとり(半音下げカラオケ)
6 天空の里(半音下げカラオケ)
7 恋の終わりの名古屋にひとり(半音下げカラオケ・ガイドメロ入り)
8 天空の里(半音下げカラオケ・ガイドメロ入り)
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