俳優の永作博美が主演を務める、TBS系火曜ドラマ『時すでにおスシ!?』(毎週火曜 後10:00)。佐野史郎が演じるのは、みなとが通う鮨アカデミーの生徒の一人・立石船男。
仕事をリタイアした後、趣味として鮨を習いにやってきたダンディで多才な紳士という役柄だ。そんな立石を演じる佐野にインタビュー。役への向き合い方や撮影現場の雰囲気、そして本作に込められた思いを聞いた。

■“もう一度ドラマを”――再び声をかけられた喜びと覚悟

――本作の出演を聞いて、どんな感想を持ちましたか?

素直にうれしかったです。『リコカツ』(2021年)では、90年代に助監督だった植田博樹プロデューサーや、本作のプロデューサーでもある鈴木早苗さんがトップに立って、ドラマを作られていて。昔ながらの撮影方法で、もう一度ドラマを撮ろうとしていたことに、僕も当時の仲間として共感して、何か貢献できたらと思っていたのですが、大病を患ってしまい、途中降板という形でご迷惑をおかけしてしまいました。

今回、あらためて早苗さんはじめ皆さんにお声がけいただけたことが何よりもうれしかったですし、今度こそはご迷惑をおかけできないという強い思いがあり、自分の中ではリベンジというか、少しでもお役に立てればという思いでした。

ただ、それ以上に責任の重さも感じていました。それはこの火曜よる10時『時すでにおスシ!?』という作品だけでなく、子どもの頃から慣れ親しみ、大好きなドラマをたくさん見てきたTBSの一視聴者だからこそ、そこに関わる俳優としてなおさら。

特に90年代はずっとお世話になっていましたし、言ってしまえば、実家に帰ってきたような、通い慣れたTBS緑山スタジオでした。息子役から夫役、そしておじいちゃん役へと、自分が重ねてきた時間を、今度は後輩たちにバトンタッチしていけたら――そんな役割なんだなと思って臨みました。

――脚本を読んだ印象は?

TBS作品の王道をやろうとしているんだな、という印象を受けました。
実際に第1話を見ても、その思いはより強く感じましたね。

時代の流行に左右されない、きちっとしたドラマ作りの原点に立ち返っているといいますか。学園ものであり、ホームドラマであり、ラブストーリーでもある。そういった要素が全て入った、いわばTBSドラマの原点のような作品。“本当に大事なものは何なのか”をもう一度見つめ直しながら、そこから未来を切り開こうとしている。そんな意志を感じました。

■「何か企みが?」――“できすぎた人物”の先に見えてきた立石像

――立石はダンディな人物ですが、演じる上で意識されていることは?

ト書き(セリフ以外の動作や表情、心情などの指示文)に「ダンディ」と書いてあり、そういったセリフがちりばめられているので、最初は一体何者なんだろうと思いました(笑)。

ただ、“ダンディなことをやろう”とするといかにもそれらしくうそっぽくなってしまうので、そこは意識しすぎないようにしています。与えられた状況や役柄の中で、できるだけ自然体でいられたらいいなと。その結果として、どこかダンディに見えたり、意識の高い人に感じてもらえたらいいなと思っています。

――そういった“ダンディ”のテンション感について、監督やプロデューサーと対話されますか?

僕の中では、「ダンディ」という言葉から、どうしてもバブル期のトレンディードラマがよぎるんです。なので、「これは自分の役じゃないんじゃないか」と思ったりもして。


正直、最初に台本を読んだ時、立石は“詐欺師”かと思いました(笑)。「こんな人いるのかな」というくらいできすぎていて。好々爺で家族思いで……何か企んで鮨アカデミーに潜り込んでいるんじゃないかと。

でもスタッフの皆さんに相談したら、立石は本当にそういう人物なんだと言われましたし、鮨アカデミーに入って学ぼうとしているのも事実だと分かって。

それでも、ただの好々爺でダンディな男が、孫や家族のために鮨を学んでいるだけではないだろうな、という感覚はどこかにあります。

■所作の難しさと撮影現場の温度――“家族”のようなチーム

――鮨アカデミーの生徒として所作指導も受けられていますが、実際に握りなどをやってみていかがですか?

もちろん、何もかも難しいです。普段はそんなに料理をするほうでもないので、生徒役としてはそれでいいのかなとも思いますけれども、今年に入ってから練習していますが、特に握りが大変です。

一番練習したのはアジの三枚おろしで、やり方は何とか覚えました。家でも練習しているのですが、イカが本当に難しくて、何度やってもできないんですよ(笑)。

このドラマを見たら、きっとお鮨が食べたくなると思うんですよ。そこから技術だけでなく、いろんなことに興味が広がる作品だと思います。

――撮影現場の様子を教えてください。


みなとと渚(中沢元紀)の待山親子の物語でもあり、それぞれの家族の物語でもあるんですが、鮨アカデミーに集まった4人が、だんだん家族になっていくドラマなんだなと思っています。

撮影が進むにつれて、その関係性もどんどん深まっていって。僕は最初から“おじいちゃん”の立ち位置なので、一歩引いて全体を見ているような感覚なんですが、大江戸先生は先生なのですが親を超えた息子のようであり、みなとさんは娘のような存在ですね。

永作さんとは、29年前に共演した時は、まだ世代感覚もそれほど離れている印象ではなかったんですが、今は長女という感じで。柿木胡桃さん(ファーストサマーウイカ)が次女でおてんば、森蒼斗くん(山時聡真)は孫みたいでかわいい(笑)。回を追うごとに本当に家族になってきているなと感じますし、控室でも自然とそういう空気ができてきています。ホームドラマとしての魅力も強い作品だと思います。

それから、松山さんの存在はやはり大きいですね。20年ぶりくらいの共演になりますが、本当に真面目で努力家で、真っすぐな方だなとあらためて感じました。青森・むつの風土が体に染み付いているような、頭で考えすぎないリアリティがあって。

職人の手元って普通は吹き替えだったりするんですが、今回は違うんですよね。実際にご指導してくださっている「銀座おのでら」の大将も太鼓判を押すくらい。
短期間であそこまで体に入れていく力は本当にすごいですし、体で覚えていくその感じが素晴らしいなと思います。

――山時さんとは一緒に所作指導を受ける日が多く、それがきっかけで仲を深められたそうですね。

ずっと一緒にいましたからね。本当に孫みたいでかわいいです。ご本人はちょっと笑い上戸で、本番でもつい笑ってしまったりするような、そういう天然なところがあって(笑)。おじいちゃんとしては、かわいくてしょうがないですね。

――最後に、視聴者の方へメッセージをお願いします。

とにかくお鮨が食べたくなるドラマだと思います。TBSらしい王道の作品で、人が生きていく中で避けて通れない問題や、その解決の糸口を描いていると思います。それはドラマの中でも現実でも変わらないものだと思うので、この作品がそのヒントになればうれしいです。ぜひ最後まで楽しんでいただけたらと思います。
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