■市内全域での路上喫煙禁止へ…、「隠れ喫煙」が深刻化する懸念も
観光地として名高く、多くの人々が行き交う神奈川県横浜市。現在、同市が進めている「路上喫煙の全域禁止」に向けた動きが大きな注目を集めている。横浜市はこれまで、駅周辺などの一部地域を「喫煙禁止地区」に指定してきたが、これを市内の路上全域へと拡大し、違反者には過料を科すという踏み込んだ条例改正を目指す方針だ。
しかし、この野心的な試みの裏には解決すべき課題も少なくない。民間シンクタンクの試算によれば、全域禁止を実効性のあるものにするためには、600ヵ所以上の喫煙所を新たに整備する必要があり、そのための予算確保や場所の選定が大きな壁となっている。現状のままでは禁止だけが先行し、路地裏や公園などでの「隠れ喫煙」が深刻化する懸念も指摘されている。
そこでオリコンニュースでは、この施策が市民や来街者にどのように受け止められているのか、その実態を探るべく2026年3月に意識調査を実施。調査対象は、横浜市在住者および市外からの訪問者(週1回以上来街)。「横浜在住・喫煙者」「横浜在住・非喫煙者」「市外在住・喫煙者」「市外在住・非喫煙者」の4属性に分けられ、各125名、計500名から有効回答を得ている。
■ 約半数が「知らない」、施策の壁となる“認知不足”の現状
まず調査で明らかになったのは、施策そのものの「認知度」である。横浜市が市内全域で路上喫煙を禁止する方針であることを「知っている」と答えた人は全体で51.4%と、約半数にとどまる結果となった。喫煙者層の認知が約6割に達する一方(在住60.8%・市外59.2%)、非喫煙者では認知率が大きく低下(在住47.2%・市外38.4%)。とくに、来街者に対する周知が決定的に不足しているのがわかる。
内容の理解度についても、喫煙者層は公式発表を詳しく把握している割合が比較的高いものの(在住42.1%・市外36.5%)、非喫煙者層では著しく低く(在住13.6%・市外10.4%)、「言葉だけ聞いたことがある」という表面的な理解に留まっている層が多数派だ。条例を施行し、実際に過料を徴収する段階になった際、「知らなかった」という混乱を招かないための広報戦略が急務である。
一方で、方針そのものに対する社会的合意は非常に強固だ。「市内全域での路上喫煙禁止」に賛成(どちらかといえばを含む)と答えた人は、全体で84.4%という圧倒的な数字を記録した。特筆すべきは、規制の対象となる喫煙者自身も約7割がこの方針を支持している点である。歩きたばこやポイ捨てに対する問題意識は、属性を問わず共通している。
しかし、手放しで歓迎されているわけではない。
実際、「この方針は現実的に守れるか」という問いに対し、喫煙者層の中でもやや差が出ている。「守れる(どちらかといえばを含む)」と答えたのは、市内在住が72.0%、市外が60.8%。市外から訪れる喫煙者の約4割が「守れない(どちらかといえばを含む)」としている。不慣れな土地でどこに喫煙所があるか事前に把握しにくい不安が、「遵守困難感」に直結している格好だ。
■非喫煙者も認める「喫煙所不足」という共通課題
今回の調査で最も重要なポイントとなったのが、「喫煙所の数」に対する評価である。現在の横浜市内の喫煙所の量や分布、使いやすさについて、「十分だと思わない(どちらかといえばを含む)」と回答した層は全体で51.6%と半数を超えた。驚くべきは、喫煙者の約6割が不満を抱いているだけでなく、非喫煙者の約4割も「不十分である」と認識している点だ。
非喫煙者層における不足感は、喫煙所の不在が路上喫煙や吸い殻のポイ捨てを誘発しているという認識の表れだろう。つまり、喫煙所の整備は喫煙者の利便性向上のみならず、非喫煙者の快適な環境を守るための「防波堤」として期待されているのだ。
不十分だと感じる理由の第1位は「数が少ないこと」。
条例を形骸化させないために、横浜市が取り組むべき優先順位は何か。調査では「全域禁止を進めるなら、禁止と同時に対策を先にすべきだと思うか」という問いに対し、全グループで88%以上という極めて高い同意が得られた。喫煙者層が9割超え(在住93.6%・市外92.0%)で対策先行を求めているのはもちろん、非喫煙者層でも8割以上(在住82.4%・市外87.2%)がこれに同意。「禁止先行ではなく環境整備と並行すべき」という意識は、全属性共通の課題認識といえる。
具体的に最優先すべき対策としては、圧倒的に「喫煙所の増設」を求める声が多く、喫煙者では約6割に達した。対照的に非喫煙者は「環境改善」や「運用基準の明確化」を重視する傾向にあり、グループによって期待する対策に差異が見られる点も興味深い。
また、「喫煙所が増え、場所がわかりやすくなるなら、実効性は上がると思うか」という問いにも、全グループで80%以上が肯定的な反応。喫煙者(在住89.6%・市外91.2%)、非喫煙者(在住76.8%・市外81.6%)ともに、「思う(どちらかといえばを含む)」と回答している。
インフラの整備が条例の実効性に直結するという認識は、属性を超えた共通見解となっている。
■ 施行までの“準備期間”をどう捉えるか、双方が納得できる「喫煙環境の再構築」を
最後に、条例施行までのスケジュール感では、喫煙者と非喫煙者の間で大きな意識の差が見られた。喫煙者の約7割が、準備期間を「短すぎる、あるいはやや短い」と感じているのに対し、非喫煙者の約半数は「適切」と捉え、さらに「長すぎる(早く施行すべき)」という声も一定数存在する。
この30~40ポイントにおよぶ感覚の乖離は、今後の合意形成において無視できない課題だ。喫煙者にとって生活動線の変更や喫煙所の確認といった「準備」が必要なのに対し、非喫煙者にとって「一刻も早い迷惑行為の解消」が優先されるためである。
横浜市が進める路上喫煙全域禁止。その成功の鍵は、単なる厳罰化ではなく、喫煙者と非喫煙者の双方が納得できる「喫煙環境の再構築」にある。街の景観と健康を守るための新しいルールが、どのように横浜の街に根付いていくのか。行政の次の一手と、市民一人ひとりの意識が今、問われている。
【調査概要】
調査対象:男女 20~60代
サンプル数:500名(横浜在住喫煙者/市外訪問喫煙者/横浜在住非喫煙者/市外訪問非喫煙者)
調査期間:2026年3月3日(火)~3月9日(月)
調査手法:インターネット調査
調査企画:オリコンニュース
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