黒澤が12月2日から12月21日にかけて監督した部分の音声テープは、映画録音用の6mmテープ11本で、主にワシントンDCの日本大使館のシーンと戦艦長門の艦内シーンからなり、スタッフによるシーン番号・テイク番号の読み上げ、俳優たちの台詞、黒澤監督による演技指導の声が収められている。なおこの映画の主要な役には、黒澤監督の意向でプロの俳優ではない旧軍人の方々が主に起用された。
国立映画アーカイブによると、音声テープを録音したのは、東宝撮影所の録音技師渡会伸氏(わたらい・しん、1918-2001)で、2022年、関係者より国立映画アーカイブが資料を受領した際に6mmのオープンリールテープが含まれていたという。内容を調査した結果、黒澤組における『トラ・トラ・トラ!』撮影時の録音物であることが判明したという。黒澤監督撮影時のフィルムは現存が確認されていないため、この音声は極めて貴重な記録となる。
その後、現在20世紀フォックス作品の権利を有するウォルト・ディズニー・ピクチャーズ(WDP)との話し合いを通じて、国立映画アーカイブの主催事業に限って音声データを使用することが同社より認められたという。
映画『トラ・トラ・トラ!』は黒澤監督が取り組んだ初の外国映画の企画。ハリウッド・メジャー会社の一つである20世紀フォックス社の製作により、1941年12月の日本軍の真珠湾攻撃をめぐる日米両国の動きを題材にしたこの大作は、日本のシーンを黒澤が、アメリカ側をリチャード・フライシャー監督が演出するという方針が固まり、まず1968年12月2日に東映京都撮影所で日本側のシーンがクランクインした。しかし、製作側との折り合いがつかず、12月24日に黒澤は解任された。その後、代わって舛田利雄・深作欣二の両監督が日本側の撮影を引き受け、当初の予定より大幅に遅れながらも映画は完成し、1970年9月に公開された。
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