仕事のデキる人の特徴は何か。営業コンサルタントの菊原智明さんは「稼げる営業は、周りの人とできる限り円滑なコミュニケーションをとる努力をする。
そのため旅行先では酔っ払って場の空気を読んで盛り上げ、チームのスタッフのミスを指摘して恥をかかせるようなことはしない」という――。
※本稿は、菊原智明『決定版 「稼げる営業」と「ダメ営業」の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■「飛行機でアルコールを飲む、勉強する」どっちがいいか
稼げる営業は旅行で酔っ払い、

ダメ営業は旅行先で仕事をする。

全国の営業が集まる表彰式のことです。
私の席だけ仲間と離れており、他県の営業の人と飛行機で隣の席になりました。
ここで今後のコミュニケーションの取り方に大きく影響する経験をしたのです。
隣に座ったAさんは席に着くなり、アルコール類を注文します。お酒があまり強くないのか? それとも飛行機の気圧の影響なのか分かりませんが、すぐに酔っぱらっていました。
酔っていることもあり初対面の私に対しても気さくに話しかけてくれます。
Aさん「どこからですか?」
私「私は群馬からです」
Aさん「群馬ですかぁ。じゃあ中村さん知っていますか?」
私「ええ、もちろんです」
Aさん「中村さんは有名ですからね。ところで群馬の名物は何ですか?」
その後もフランクにいろいろと話しかけてくれました。

一方逆隣りのBさんは、空港で購入した日経新聞を読んでいます。フライト中に熟読し、メモをとっていました。また日経新聞が読み終わると、タブレットでビジネス書を読みはじめます。「なんて勉強熱心な人なんだろう」と思いながらも、隣で雑談していて気が引けました。
会場に着いたAさんはパーティーがはじまっても楽しそうです。
Aさんのいるテーブルは宴会のようになっています。
■すぐに酔っ払ったAさんの方が高成績な理由
一方Bさんはパーティーでもほとんど誰とも話をしていません。しばらくすると会場から出て行ってしまいました。後から聞くと、パーティーが苦手なので部屋で本を読んでいた、というのです。その時は「パーティーの時まで勉強しているのかぁ、すごいなぁ」とつくづく感心していました。
翌日の表彰式でのことです。
見れば表彰式の壇上にAさんが立っているではありませんか。

「本当はあの人はすごい人だったんだ」と驚きました。
一方Bさんはランク外で、全く普通の成績の営業だったのです。
一見するとBさんの方がはるかに仕事ができるように見えます。
移動時間を無駄にしなかったり、パーティー中も本を読む人こそ営業成績がいいと思うものです。しかし、現実は違っていました。お酒を飲んですぐに酔っぱらい、話し疲れたら寝るといった人の方が圧倒的にいい成績を残していたのです。
その時は「不思議なこともあるもんだ」と思っていましたが、今から考えればそんなに不思議な話ではありません。
■場の空気を読み、みんなと楽しむことができるか
Aさんはただの酔っ払いではなく場の空気を読むのが上手な人です。飛行機では初対面の私に気さくに声をかけてくれました。緊張している私の様子を見てそうしてくれたのでしょう。
またパーティー会場でも、初対面の人もいる中、テーブルにいる人たちが一人残らず盛り上がるように振舞っていたのです。こうした人が売れないはずはありません。

一方、Bさんは移動時間やパーティーの時まで勉強しているのですから知識は多いでしょう。常に情報を吸収しようと努力している姿勢は素晴らしいと思います。しかし、場の空気を読む人ではありません。
稼げる営業は、周りの人とできる限り円滑なコミュニケーションをとる努力をします。逆にダメ営業は自分の殻にこもり、コミュニケーションを放棄してしまうのです。
盛り上げられるタイプの人もいれば、そうでない人もいます。しかし、積極的に話ができないとしても、笑ったりうなずいたりはできるはずです。
自分のできる範囲で、人とコミュニケーションをとるようにしましょう。
場の空気を読み、みんなと楽しもうとする!
■依頼した仕事のミスを指摘し続けた結果
稼げる営業はミスを見逃し、

ダメ営業はミスを指摘する。

あるお客様と2時間ほど商談をし、要望をまとめ、設計スタッフに住宅の図面依頼をしました。しかし「この部分は注意してください」と念を押したのにもかかわらず、変更箇所が間違って出てきます。その図面を見た私は、すぐに電話をして文句を言います。

私「この部分ですけど、注意してくれと念を押しましたよね! ここはお客様が一番気にしているところなんですよ。キチンと変更してもらわないと困ります!」
設計「分かりました。すぐにやり直します……」
すぐに図面を出し直してもらい、ことなきを得ました。
しかし、その後、その設計スタッフとの関係が悪くなった気がしたのです。
・仕事が依頼通りになっていない

・注意したのにもかかわらず、間違える

・前回と同じ間違いをする
などなどこうした時、私はすかさず文句を言っていました。
私は知らないうちに設計スタッフから距離を置かれるようになります。
しかし当時の私はそんなことは気にしません。
「仕事なんだから正確にやってもらうのが当たり前だ」と考えていました。
スタッフが一方的に悪く、私の方が正しいと思い込んでいたのです。
その後のこと、成績のいい先輩が私と同じように図面に間違いを見つけました。
■自分のミスでないのになぜ謝るのか
先輩は設計スタッフに修正を頼んでいます。「きっと一言くらい文句を言うのだろう」と見ていたのですが、全く予想と違う対応をします。

先輩「すみません。私の言い忘れでお願いしなかったのですが、1点変更いいですか?」
設計「そうでしたか」
先輩「忙しいところすみませんが、何とか今日中にお願いしたいのですが」
設計「このくらいでしたら大丈夫でしょう」
先輩「ありがとうございます。助かります」
明らかに設計のミスにもかかわらず、自分が悪かったということで修正依頼していたのです。
不思議に思った私は先輩にこう質問しました。
私「先輩のせいじゃないのにどうして謝っていたのですか?」
先輩「ミスをあからさまに指摘したら角が立つだろう」
私「まあそうですけど、ミスしたのは設計じゃないですか?」
先輩「だとしても、叱責しても何の得にもならないし、彼らのプライドを傷つけたら今後二度と協力してくれなくなるから」
それを聞いてハッとしました。今まで偉そうに上から目線でミスを指摘して、「なんてバカなことをしていたのだろう」と後悔しました。その後は先輩の姿勢をとり入れることで、徐々に設計スタッフとの関係がよくなっていったのです。
■稼げる営業はあえてミスを指摘しない
稼げる営業は、スタッフがミスしたとしても、よほどでない限り文句を言ったりしません。みんなの前でミスを指摘して、恥をかかせるようなことは絶対にしないのです。
営業は一人で全ての仕事をするわけではありません。スタッフに協力してもらえなければ仕事はまったく回らなくなりますし、結果を出すことなど不可能になります。
そのことを熟知しているため、稼げる営業はあえてミスを指摘しないのです。

文句を言ってスッキリするのではなく、相手のプライドを傷つけないようにコミュニケーションをとりましょう。
相手のミスを寛容に受け入れる!

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菊原 智明(きくはら・ともあき)

営業コンサルタント

営業サポート・コンサルティング代表取締役。関東学園大学経済学部講師。社団法人営業人材教育協会理事。1972年生まれ。群馬県高崎市出身。群馬大学工学部卒業後、トヨタホームに入社し、営業の世界へ。自分に合う営業方法が見つからず7年間、ダメ営業時代を過ごした後、手紙で情報を提供する営業に切り替えたことをきっかけに4年連続トップ営業に。2006年に独立し現職。主な著書に『訪問しなくても売れる!「営業レター」の教科書』(日本経済新聞出版社)、『売れる営業に変わる100の言葉』(ダイヤモンド社)、『面接ではウソをつけ』(星海社)、『トップ営業マンのルール』『「稼げる営業マン」と「ダメ営業マン」の習慣』『残業なしで成果をあげるトップ営業の鉄則』(明日香出版社)、『営業1年目の教科書』『営業の働き方大全』(大和書房)、『リモート営業で結果を出す人の48のルール』(河出書房新社)、『仕事ではウソをつけ』(光文社)、『使ったその日から売上げが右肩上がり!営業フレーズ言いかえ事典』(大和出版)などがる。

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(営業コンサルタント 菊原 智明)
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