■「ただ休む」よりもっと効果的
疲れたらソファーでダラッとしたり、スマホでSNSやYouTubeを見たり……したいですよね? でも、それらの行動は脳疲労に対する休憩では絶対にやってはいけない選択。
なぜなら、脳疲労の回復には「ただ休む」よりも「体を動かす」ことが有効だからです。たとえば先ほど、私は6階の研究室から5階の会議室前まで、内階段を「タタタタタッ」と早足で下りてきました。実はこれも脳疲労対策の1つ。
集中力が落ちてきたかもしれない……と感じたとき、私は階段を1~2階分テキパキ上り下りするようにしています。そのような短い運動でも、その後に認知機能を高める可能性がわかってきています。頭を使う仕事の効率を上げうるということです。
そんなふうに体を動かすことが脳の活動を高めることは広く知られるようになってきましたが、専門家からのアドバイスは「1日30~60分、週3~5回」の運動というのが一般的。
でも、みんな忙しいですから、そんな高いハードルを設定されたら、実践できる人は少ないですよね。そこで、脳疲労の研究の一環として脳の認知機能を高める最短の運動時間と方法を探りました。
その結果、たどり着いたのは「7秒」の全力運動を3セット行うという方法です。
■世界最短の脳疲労回復法「7秒腿上げ」
東大卒プロゲーマーの、ときど選手が試合前にダッシュしているのを知り、実験のヒントをもらいました。その後、筑波大学のeスポーツチーム選手たちに協力してもらい、試合の直前に全力で7秒間の腿上げ運動を3セット実施。
すると、この7秒3セットという超短時間運動が、その2~15分後の認知機能を高めることがわかりました。(※)1
今のところ脳機能を向上させる運動としては、世界最短の条件です。
7秒×3セット、21秒の運動は、全力ダッシュでも、腿上げでもいい。仕事中、脳疲労の影響が出ているかもしれないと思ったら、ぜひ試してみてください。短時間で息が上がる高負荷をかけることが、脳をブーストしてくれます。
恥ずかしさがある場合には、オフィスの片隅やトイレ、無人の会議室などでもいいですし、階段をテキパキ上り下りすることでもいいです。仕事の効率を上げたいという気持ちで体を動かすこと。その成果を実感することで、またやろうという意欲や楽しさを感じられるはずです。
■昼休みにおすすめの「6分散歩」
7秒×3セット、21秒の運動がスキマ時間での脳疲労への対処法だとすると、昼休みのようにまとまった時間が取れるタイミングにオススメの方法もあります。
それは6分程度の散歩です。
外へランチに出る。キッチンカーで買った食べ物をオフィスの近くの公園で食べる。デスクでお弁当を食べたら、近所のカフェまでコーヒーを買いに行く。そんなふうに歩く時間を取るだけで、脳疲労が改善します。
米国の実験ではeスポーツの選手に2時間ゲームをプレーしてもらった後、横になって休む休憩と6分間散歩する休憩を比較しました。すると、横になっても認知機能はほとんど回復しないか、むしろ少し悪化してしまいましたが、散歩の後は改善。座って脳を使い疲労した状態では、体を軽く動かしてあげると心身のバランスが整うといったイメージです。(※)2
■「仲間と一緒に散歩する」とさらに効果的
さらに、別の研究ではチームの仲間と一緒に歩くと効果が高まる可能性があるという結果も。
陸上同好会のみなさんにご協力いただいた研究では、一緒に走ると仲間同士の歩調が揃いました。そして、歩調が揃うと心拍数も揃いやすくなる。心拍数が揃うときには「絆」を形成するオキシトシンというホルモンが分泌されていました。(※)3
オキシトシンには疲れや痛みを緩和したり、脂肪の燃焼を促進したりする効果があるので、それらの影響ではないかと推測しています。
学生時代、休み時間に友人と一緒にトイレに行った経験がある人も多いはず。もしかすると、あれは本能的に脳疲労に対する休息を求めていたのかもしれません。
「こうしたちょっとした運動は最近『エクササイズスナック(おやつ運動)』と呼ばれています。おやつをポンと口に入れるように、軽く体を動かす。それが脳にとっては、ただおやつを食べるよりも、疲労回復効果を発揮してくれるのです。
■仕事中の炭酸水が脳疲労を遅らせる
もう一つ、仕事中も手軽にできる意外な脳疲労対策が、冷えた炭酸水を飲むこと。
コーヒーでも、エナジードリンクでも、白湯でもなく、シュワシュワと弾ける音と炭酸の刺激を口腔内に残してくれる炭酸水です。
アサヒ飲料との共同により、水を飲む場合と炭酸水を飲む場合で、3時間のeスポーツプレー中の脳の疲労度を比較する実験を行いました。最初に200ml、その後1時間ごとに100mlずつ、4℃に冷やした水もしくは炭酸水を飲んでもらいました。
結果、水を飲んだグループは徐々に疲労感が増し、判断速度が落ちていきました。一方、炭酸水を飲んだグループは疲労感が増しにくく、判断速度も元のレベルから低下せずに推移しました。(※)4
つまり、劇的な回復効果があるというよりは、脳疲労を遅らせる効果が確認された。
この実験で特に興味深いのは、冷えた炭酸水を飲んでいたグループはゲーム中の「ファール数」が減ったこと。
ファールというのは、プロサッカー選手でも試合終盤に疲れると、感情の動きをうまく抑制できず、正しい判断をする能力が落ちるのですが、そんなときに生じやすくなることが知られています。(※)5-6
認知症の方が衝動的になったり、手が出やすくなってしまったりするのと同じメカニズムです。
私たちも家庭やオフィスで、「ひと言多くなっちゃう」みたいなことがありますよね。あれは疲労によって衝動的になっているからです。炭酸水にはそういう抑制機能の低下を予防してくれる可能性があります。
これらの対策は、すべて私も実践しています。
「健康のために運動しましょう」では、なかなか人は行動を変えることができません。でも、「脳疲労対策を行い、脳のパフォーマンスを高めて、仕事・勉強・趣味で成果を上げたい」という自分の夢や目標と関連付けて脳疲労対策を役立てることが、生活習慣を整える意欲につながるのではないでしょうか。
出典
(※)1.Kasahara, R., Yamaguchi, T., Takahashi, S., Tachibana, Y., Matsukawa, S., Takamizawa, R., Dobashi, S., & Matsui, T. (2025). A brief bout of intermittent exercise promotes team performance in esports: A role of heart rate synchrony. Journal of Physical Fitness and Sports Medicine, 14(6), 137.
(※)2.DiFrancisco-Donoghue J, Jenny SE, Douris PC, Ahmad S, Yuen K, Hassan T, et al. Breaking up prolonged sitting with a 6 min walk improves executive function in women and men esports players: a randomised trial. BMJ Open Sport & Exercise Medicine. 2021;7:e001118.
(※)3.Matsui, T., Yasuda, S., Funabashi, D., Takahashi, S., & Dobashi, S. (2025). Paired running promotes physiological synchrony and oxytocin release in track athletes: A sports sociophysiological study. Journal of Physical Fitness and Sports Medicine, 14(6), 137.
(※)4.Takahashi, S., Kosugi, W., Mizuno, S., & Matsui, T. (2026). Sparkling water consumption mitigates cognitive fatigue during prolonged esports play. Computers in Human Behavior Reports, 21, 100943.
(※)5.Rampinini, E., Impellizzeri, F. M., Castagna, C., Coutts, A. J., & Wisløff, U. (2009). Technical performance during soccer matches of the Italian Serie A league: effect of fatigue and competitive level. Journal of science and medicine in sport, 12(1), 227–233.https://doi.org/10.1016/j.jsams.2007.10.002
(※)6.Sun, H., Soh, K. G., Mohammadi, A., Wang, X., Bin, Z., & Zhao, Z. (2022). Effects of mental fatigue on technical performance in soccer players: A systematic review with a meta-analysis. Frontiers in public health, 10, 922630. https://doi.org/10.3389/fpubh.2022.922630
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松井 崇(まつい・たかし)
筑波大学体育系 准教授・博士(体育科学)
1984年生まれ。つくば→京都→東京で幼少期を過ごす。
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(筑波大学体育系 准教授・博士(体育科学) 松井 崇 構成=佐口賢作)

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