丈夫な足腰を作るにはどうしたらいいのか。整形外科医の中山潤一さんは「ただのウォーキングより効果的な体操がある。
1日1分、片足を5センチ上げるだけで転倒予防や筋力アップが期待できるので参考にしてほしい」という――。
※本稿は、中山潤一『動ける体が大復活する1分体操』(アスコム)の一部を抜粋・再編集したものです。
■「1分5センチ」がヨボヨボ化を防ぐ
まずは、片足を軽く前に上げる体操です。
それだけで、立ち上がるときや歩くときに使う筋肉や、姿勢を良くする筋肉が鍛えられます。日常的な動作が軽やかにできるようになります。さらに、平衡感覚が高まります。骨粗鬆症の予防にもなります。
この〈ゆる片足上げ〉は、他の体操の基本ともいえます。足を高く上げればそれだけ負荷がかかって効果的ですが、それほど高く上げなくても効果はしっかり表れます。
少し上げればいいだけなので、「ゆる」という名前が付いているわけです。ゆるいのに「片足」で立つことで、ウォーキングに勝る筋力アップと平衡感覚アップの効果があるのです。
実際に、この〈ゆる片足上げ〉を、開始時点よりも10秒間長くできるようになった方は、歩くスピードが0.8メートル/秒速くなった、というデータがあります(※1)。

これは、「速筋(そっきん)」が強くなったことを示します。速筋が強くなれば、転びそうになったときに、とっさに踏ん張ることができます。
やり方は、次のとおりです。
①背筋を伸ばして立ち、足を肩幅に開きます。

膝を軽く曲げて、両手は楽な位置に下ろすか、軽く開くようにしてください。
②右足のつま先が5センチぐらい床から離れるように、右足を上げます。

そのまま1分間、維持します。

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■30秒でも「続ける」だけでいい
①のポーズで両足をそろえて立ったり、膝が真っすぐに伸びた状態だと、バランスがとりにくくなり、倒れやすくなります。足を上げてからも、膝は軽く曲げたままにしてください。
また、②のポーズで視線が上や足元を向いてしまうのも、平衡感覚を保てなくなり、ふらふらする原因になります。
少しでもふらつくようなら、机に手をついたり、柱や手すりを持ったりして支えに頼ってください。
それでも効果はあるので、だいじょうぶです。
右足を上げているとき、左足の外側に体重がかかって、体が左に傾くことがないようにしましょう。左足を上げているときも同様です。右足の外側に体重がかかって、体が右に傾くことがないようにしましょう。
常に、重心が体の中心にあることを意識するといいでしょう。それでも、体が左右に傾いてしまうかもしれません。そのときには、支えを頼ってください。
片足で立っているうちに、上体が反り返ったり、腰が「く」の字になったりするのは、最初は仕方ありません。そうなってしまったら無理に矯正しようとするのではなく、「支え」を使ってください。
はじめから支えを使った人は、慣れてきたら少しずつ支えを離していきましょう。ただし、無理のないようにしてください。

支えを使っても1分間が長く感じられるようなら、まず30秒ぐらいから始めます。けっして無理をせず、続けることがなにより大事です。
何セットやってもいいのですが、左右合計で2分間ぐらいすれば十分です。1日2セットが目安ですが、朝昼晩と3回できればさらにいいでしょう。
(※1) Brown C, Simonsick E, Schrack J, Ferrucci L. Impact of balance on the energetic cost of walking and gait speed. J Am Geriatr Soc. 2023 Nov;71(11):3489-3497. doi:10.1111/jgs.18521. Epub 2023 Aug 2. PMID: 37528742; PMCID: PMC12159796.
■たった5センチが、全身の筋肉を動かす
もしかすると、「たったの5センチでいい? そんな程度で、本当に効果が出るの?」と思われたかもしれません。
実は、そのように疑問に思う方はとても多いのです。ユーチューブをご覧になった方からも「こんなんじゃ、筋トレ(筋肉トレーニング)にならないのでは⁉」という声をよくいただきます。けれども、そこには誤解があります。
上げたほうの足にも負荷はかかっていますが、実は片足で立っている軸足の筋肉への負荷のほうが大切なのです。ですから、上げている足の高さは問題ではありません。この体操のポイントは、「片足を上げている」ことではなく、「片足で立っている」ことなのです。
〈ゆる片足上げ〉をすると、軸足のふくらはぎの筋肉や、膝を前に上げている筋肉や、太ももの筋肉などが鍛えられます。

さらに姿勢を保つ筋肉が強くなり、立っているときにバランスをとる下半身の筋肉や、足首まわりの筋肉も鍛えられます。それだけではなく、腹筋をはじめとする体幹も鍛えられます。
■3ステップで、さらに動ける体へ
〈ゆる片足上げ〉を「続ける」ことで、動ける体がどんどん作られていくということを忘れないでください。とはいっても、プレッシャーになってほしくはありません。ぜひ、楽しみの一つとしてやってください。
〈ゆる片足上げ〉に慣れて、「まだやれる!」「もっとやってみたい!」と思われた方は、ちょっとバリエーションをつけてみましょう。
基本の〈ゆる片足上げ〉よりも、さらに少しだけ「負荷をかける」ことになるので、体操の効果がさらにアップします。負荷を増やすことになるので、同じ時間や回数でも、効果が増します。
バリエーションは、①から③まであります。
だんだん難しくなっていくので、いっぺんにやる必要はありません。少しずつ段階を追って、チャレンジしていきましょう。少しずつでもやっていけば、確実に筋力も、平衡感覚も、鍛えられていきます。

①~③のバリエーションは、「難しい」と思う方が多いかもしれません。でも、「つらい」と感じることはないはずです。①~③のバリエーションは、基本の〈ゆる片足上げ〉よりも、ふらつきやすくなります。
ですから、他の体操にもいえることですが、必ず周囲に危険な物がない環境でなさってください。少しでもふらついて、万が一、転んだときに怪我をさせる可能性のある物は、すべて取り除いておいてください。
自信のある方でも、必ず支えがある所でやってください。壁や机や手すりでもいいし、誰かに補助を頼んでもいいでしょう。緊張せず、ゆっくり呼吸をしながらやりましょう。
もちろん、「基本の〈ゆる片足上げ〉で十分だ」と思われる方は、そのままのやり方を続けてかまいません。
■目を閉じるだけで、さらに転倒予防に
バリエーション①上げた足を振る
〈ゆる片足上げ〉で、上げたほうの足を前後に振ります。大きく振る必要はありません。軽くできる範囲でいいでしょう。
最初は壁に手を添えて、ほんの少し振るだけでもかまいません。
ただの〈ゆる片足上げ〉と違い、1分間も続かないでしょう。ですから片足1回、30秒ずつを目指してください。30秒でも、続けることによって、足の筋力が強くなります。
上げた足を前後に振るだけで、たんなる〈ゆる片足上げ〉を上回るバランス機能の運動になり、平衡感覚をより整えます。また、踏ん張っている軸足により負荷を与えるので、よりお尻の筋肉を鍛えることができます。
バリエーション② 目をつぶる
〈ゆる片足上げ〉を、目を閉じた状態でやります。
足を上げてから目を閉じるのではなく、目を閉じてから足を上げ、足を下ろしてから目を開けます。必ず、ふらついたときにつかまる物を、近くに用意してから始めてください。
大事な注意事項があります。
めまいやふらつきのある方は、絶対になさらないでください。めまいの薬など平衡感覚に影響のある薬を飲んでいる方も、このバリエーションは避けましょう。
目を閉じて片足立ちをするのは、目を開けたままでするよりも、ずっと難しいことを実感なさると思います。人は誰でも、視覚情報がなくなると、空間を認識する機能が落ちるものです。その状態で立ち続けるためには、いつも以上の平衡感覚が必要とされます。
だからこそ、このバリエーションは、平衡感覚を鍛えて、転倒を予防する訓練に最適なのです。
このバリエーションはけっこう難しいので、時間は短くしてかまいません。片足1回、30秒ずつで十分です。
もしかすると、はじめは加速したジェットコースターに乗っているような浮遊感をおぼえるかもしれません。ですが、週に3回でもやれば慣れてきて、とても効果が出てきます。
■10秒の首振りで、体幹まで効く
バリエーション③ 首を振る
〈ゆる片足上げ〉の姿勢で、首をゆっくり左右に動かします。必ず、ふらついたときにつかまる物を、近くに用意してから始めてください。
こちらも、めまいやふらつきのある方、めまいの薬など平衡感覚に影響のある薬を飲んでいる方、そして頸椎(けいつい)の悪い方も、なさらないでください。
このバリエーションも、時間は短くしてかまいません。片足1回、10~15秒間ずつで十分です。首を動かすことで、体全体が不安定になります。そのなかで体は姿勢を保とうとするのですから、バランス感覚が鍛えられるだけでなく、体幹も鍛えられます。
左右に振る角度は小さくてかまいません。ですが、周囲を見回すように大きく頭を動かすことができれば、さらに高度なバランス訓練になります。無理のない範囲で試すのもいいでしょう。

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中山 潤一(なかやま・じゅんいち)

整形外科医

中山クリニック院長、整形外科医、医学博士。大阪医大(現大阪医科薬科大学)卒業後、同年神戸大学整形外科入局。基幹病院で臨床経験を積み、医学博士号を取得。2005 年、神戸逓信病院医長、08 年、神鋼加古川病院医長を経て、11 年に兵庫県明石市で中山クリニックを開業。医療・健康情報を発信するYouTube チャンネルは登録者数10 万人を超える。

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(整形外科医 中山 潤一)
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