■東大に落ちて「国語が苦手」とはじめて気づいた
私は普段、国語に特化した個別指導を行っていて、親御さんに「子供の国語の成績を上げるのが難しい」とよく相談を受けます。
わかる。とてもよくわかります。僕自身、1回目の東大受験(2次試験)で国語が120点満点中45点しか取れず落ちてしまったからです。60点は必要といわれるなか45点ですから明らかに致命傷でした。
結果としては、合格最低点にあと12点届いていませんでした。しかも私は、ずっと国語が苦手ということを自覚せずにいて、むしろ得意だと思っていました。
案外私のような受験生は、少なくないのではないでしょうか。
振り返って気づいたことがありました。他の科目だと、模試や試験で回答を間違えたとき、後日、その答えや解説を見れば、なぜそれを間違えたのかわかりますよね。例えば、世界史で答えられなければ覚えていなかったり間違えて覚えていたりしていた、数学だと計算ミスをしていた、など大体は理由がわかるはずです。
それに対して、国語は解答を見てもわからなかった。教えてくれる先生がいないので、答えを見てもなぜそれが正解なのかわからないから、放っておいてしまったのです。
■勉強の代わりにやったこと
国語は、私のように“じんわり”つまずく教科だと思います。明確に「何かができないから解けない」というものではなく、気づかないうちに、点数を取れなくなっているのが国語です。
東大が不合格とわかったときは、もちろん落ち込みました。といっても1時間半ぐらいで「落ちたものは仕方ない。来年もう一度受けるしかないんだから、落ち込んでいても意味がない」と回復しましたが。
では回復した私が何をやったのか。勉強? いいえ、勉強は一切やめて、3月から4カ月間は読書だけに没頭しました。1回目の受験では効率良く勉強したくて東大の過去問をやり込んでいましたが、この期間は過去問すら見ていません。
読書に振り切る作戦に出た、きっかけは父の言葉です。とりあえず基本問題からやり直すか、と思っていたら「勉強をやめろ。
わが家では昔から家族で問題を解くことが多く、父はぼくの頭の使い方をかなり理解していたのでしょう。当時の私は、読む力も考える力も書く力もなく、貧弱で装備のない自転車でカーレースに出場したようなものでした。
■「エンジンを詰め替えなきゃいけない」
父からは、「今から予備校的な勉強をして、頑張れば20点は上げることができるだろう。でも20点だと、どこかでミスをしたり、運が悪かったりするとダメになる。来年はインフルエンザになったとしても受からなければいけないから、現在から100点は上げないといけない。そのためにはエンジンを詰め替えないといけない」という話をされたのです。
確かにそうだなと納得した私は、父に言われた通り、「エンジンの詰め替え作業」と称して、ただただ本を読み続け、それを国語の勉強だと言い張る期間をスタートさせました。
読書は、1日平均11時間ほど。4カ月で、哲学や政治の本など難解なものから、マンガなど気楽に読めるものまで、いろいろなジャンルの本を200冊ぐらい読みました。
デスクに座って問題を解く「勉強」を再スタートしたのは、7月半ばになってから。8月半ばに東大模試があったからです。
1日11時間、本ばかり読んでいたので、読解力がついて現代文ができるようになるのは想定内でした。驚いたのは、完全に放置していた他の科目も目覚ましく点がとれるようになったことです。休んでいたはずなのに、なぜか全部できるようになっている。これは衝撃でした。
■告白のあとの「ありがとう」は…
考えるに、とにかく問題が私に何を問うているのかを理解できるようになったので、答えを簡潔に書けるようになったのです。難解な本を読んでいたことで“語彙力”もレベルアップし、複雑な文章も、スムーズに理解できるようになったんですね。
身体に10キロの重しをつけてトレーニングしつづけ、平気になったころに重しを外したらぐんと軽やかに動けるようになっていた! そんな感覚でした。
今回、私が語っている「語彙力」とは、語彙の“量”ではなく、語彙の“深さ”のことです。例えば「ありがとう」という意味は、感謝だけでなく、いろいろな意味で使われますよね。告白のあとの「ありがとう」は拒絶ですし、いらないときの「ありがとう」は遠慮。
語彙力が備わったことで、話す言葉や解答欄に記入する言葉(アウトプット)も大きく変わりました。特に感じた変化は2点。
一つは、言い換える力です。例えば「クビになって地方に行かされた」と言っていたのが「更迭された」とより簡潔に表現できるようになった。
■2度目の東大受験では、100点以上がアップ
もう一つは、階層的に説明できるようになったこと。例えば、牛丼をおすすめする理由を今までは「おいしくて、手頃に食べられて、国産牛がたまに使われるところがよくて……」など浮かんだ順にとりとめなく話して、魅力が相手にとっては伝わりづらかったと思います。
それが「私は牛丼をおすすめします。なぜなら、牛丼が最もコスパのいい食べ物と考えているからです。ここでいうコスパとは、コスト面のこと。時間とお金、この両方が最小化されたうえで、おいしさが最大化されています」。
例が正しいかは置いておいて、このように段階的に一番伝えたいことをわかりやすく話せるようになったわけです。
そして迎えた2度目の東大受験。結果は、96点上がって343点。国語の得点は1年前から23点アップの68点でした。センター試験はなぜか1年目より落ちていましたが、全科目の得点がアップし、全体では100点以上がアップ。2次試験は主席と3点差でした。センター試験で、ほぼ点数がとれなくても受かるというところまで持っていけたわけです。
■コスパが最悪な本と選ぶべき本
種々さまざまな書籍を読んだ私が断言するに、実際に試験に役立った本は“短くて難しい”ものです。これが最もコスパがいい。本にあまり親しみがない子供でも、短ければ「これくらいなら読んでみるか」と負担少なく、手に取ることができます。
反対に“長くて簡単”なものは、コスパが最悪です。子供に名作小説や新聞を読ませようとしたけれど、うまくいかなかったという家庭はたくさんあります。長くて読むのが簡単なものは、時間をかけても国語力が上がらないばかりか、興味を持てないものを長時間読むことを強いたせいで、国語が嫌いになってしまうこともあります。
今は、ゲームやYouTubeなどで簡単にドーパミンを分泌できる時代です。小説や新聞を読もうとしても、なかなか集中できないのは当たり前。例えば、1冊の本を読むのに2、3時間はかかりますよね。それだけでハードルが高いうえに、2、3時間我慢して読んでも、論理力や語彙力は身につきにくいのであれば、無理に読ませる必要はないはずです。
ですから選ぶべきは、負担は少ないけれど読解力や語彙力がアップする、短くて難しいもの。特におすすめの3ジャンルを紹介します。
■成績アップに「4コマ漫画」をおすすめする理由
では短くて難しい本とは、具体的に何を読めばいいのか。小中高、どの学生にもおすすめなのが、以下の3ジャンルです。
(1)4コマ漫画
(2)書き出し小説
(3)国語の問題集
それぞれ、説明します。
(1)4コマ漫画
私のイチオシは、短くて難しい読み物の最高峰“4コマ漫画”です。一作品40秒ぐらいで読める短さ。そんな短さでは、何でもかんでも説明できませんから、読者には行間を読む力が求められます。いわゆる起承転結といった論理の流れを感じながら、書かれていない行間を読み解く読解力、そして著者の言葉遊びから語彙力(語彙の深さ)を磨いていけます。
といっても簡単で国語力が育たない4コマ漫画もあるでしょうから、私のおすすめは『かりあげクン』(植田まさし、双葉社)と『OL進化論』(秋月りす、講談社)です。私はこの2冊が大好きで、本が擦り切れるほど何度も読みました。どちらも社会人の話で、学生からすると大人の世界をのぞき見できる感覚で、興味深く読むことができました。
本当に4コマで国語力が育つの……? と不安な方へ。
強調したいのは、日常系4コマは一見軽く読めますが、情報が少ない4コマの中で、「必ず意味が通り、オチまでもっていかなければいけない」という非常に制約の多い表現形式です。「どこで話題が転換し、なぜ最後で笑いが生まれるのか」を無意識に追いかけることになるので、結果的に、効率良く“論理のながれを素早くつかむ”訓練になります。論理的思考力までもが育まれるのです。
論理的思考力は、数学の文章題や理科の実験考察問題を解くのにも必要な力。ぜひ「計算は得意だけれど、文章題から算数にひっかかってしまった」という子供には、ぜひ読んでみてほしいですね。
■問題集は解けなくてもいい
(2)書き出し小説
書き出し小説とは、その名の通り「書き出しだけで成立させた極めて短い」小説のこと。書き出ししか書かれないので、そのあとの展開は、読者の想像力にゆだねられます。
例えば「彼女の頬を、マウスカーソルで撫でた」という一遍がありますが、これだけでいろいろな想像が膨らみます。彼女というのは二次元の彼女なのか、何らかの理由で会えない彼女の写真データを主人公がパソコンに保存しているということなのか……など。
極めて短いため、一つひとつの言葉の意味を逃さずつかみながら、行間を読み解かないと、書き出し小説は楽しめません。ぜひ書き出し小説集『挫折を経て、猫は丸くなった』(天久 聖一、新潮社)を手に取ってみてください。
(3)国語の問題集
いきなり退屈な響きを持ってしまいますが、実は国語の問題集は、短くて面白い文章がまとまっていて、読みものとして非常にすぐれています。それに問題という、つまらないものがくっついているだけ(笑)。
そもそも問題集の文章というのは、問題になるぐらいだから、ほどほどの難易度で、読みものとしても楽しいものが多い。まさに“短くて難しい”という条件をクリアしたものになります。ですから問題集は、読みものにとてもおすすめです。
■成績アップは「国語」で決まる
読むための問題集を選ぶコツですが、学力が平均的な小学生なら、1、2学年上のものを読むとよいでしょう。問題集の文章は解くことをベースに選ばれているので、学力が平均的な子にとっては、同じ学年の問題集だと読んでも退屈で、学習効果があまり上がらないと思います。
極端なことを言えば、小学生でも東大入試の問題文を読むことはできます。実際に僕が教える小5の生徒は読み物として楽しんでいます。もちろん難しい語彙は多少出てきますが、解かなくてもよいわけですから、読むことにトライするうちに論理力や語彙力が鍛えられていきます。問題がついているので気持ちとしては、解きたくなりますが、これは絶対に解いちゃダメです! 全く解けない挫折から国語が嫌いになります。
前述したように、私は語彙力、読解力をふくむ「国語力」を身に付けたことで、他の科目までも成績がアップし、結果として東大合格を掴むことができました。
では、ずばり、なぜ「国語力」が上がると他教科の成績も上がるのでしょうか? 私が言っている「国語力」とは、単に現代文が解ける力ではなく、次の3つの力の総体だからです。
■能力があっても「国語力」がないと損をする
① 文章を正確に理解する力
② 自分の知識や経験と照らし合わせて考える力
③ 自分の考えを、第三者に伝わる形で表現する力
例えば算数の文章問題を解く場合も
(1)問題文の条件を正確に読み取る
(2)既に知っている公式や解法と照らし合わせて考える
(3)途中式や答えを、採点者に伝わる形で書く
という、同じ思考プロセスを踏んでいます。
国語力は「国語という1教科の能力」ではなく、あらゆる教科の思考を支える“土台の力”なんですね。この土台が整うと、他教科の学習効率や理解の深さが一気に上がる、という実感がありました。
科目を超えた出題の長文化もあり、今は特に、理系センスや能力はあるのに、語彙力、読解力(合わせて国語力とします)がないことで、他の教科でも損をしている子供たちがたくさんいると思います。
子供たちの国語力を磨いていくためにも、ぜひ子供にとって負担の少ない“短くて難しい本”をはじめとする読書を試していただければと思います。
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神田 直樹(かんだ・なおき)
Overfocus代表
小中高生向け学習コーチングを行うOverfocus代表。学生時代は、高校にも塾にも通わず、完全独学で東京大学に合格する。学生期に、沖縄県石垣島や高知県で、東大合格を目指す高校生を支援するプログラムを立ち上げ、卒業後はMcKinsey & Companyに入社。同社退社後、これまでの学習経験と論理的思考術を活かし、小中高生向け学習コーチングのOverfocusを立ち上げる。著書は『成績アップは「国語」で決まる! 偏差値45からの東大合格「完全独学★勉強法」』(ダイヤモンド社)。
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(Overfocus代表 神田 直樹 構成=池田純子)

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