西部謙司が考察 サッカースターのセオリー
第97回 ベルナルド・シウバ
日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。
マンチェスター・シティのベルナルド・シウバは今季限りの退団を発表しましたが、チームに不可欠な存在として依然輝きを放ち続けています。屈強のフィジカルエリートが集結するプレミアリーグのなかで華奢なMFが活躍する、その魅力に迫ります。
【循環式ビルドアップの軸】
マンチェスター・シティが、プレミアリーグで首位アーセナルを捉えかけている。1試合消化が少ない状況で、第34節終了時点での勝点差は3、得失点差は1。一方、総得点では2上回っている。さらに当該対戦はシティの1勝1分なので、仮に勝点、得失点差、得点数が同じだった場合、シティが首位ということになる。
アーセナルとの直接対決だった第33節に、2-1で勝利したのが大きい。内容的にもアーセナルを上回っていた。
この試合でのシティのビルドアップは、他チームには見られない独特なものだった。
センターバック(CB)のマーク・グエイとアブドゥコディル・フサノフが大きく左右に開いて、ほぼサイドバック(SB)のポジションになる。その中間にMFロドリが下りる。ここまではよくある形だが、さらにMFベルナルド・シウバが下りてくる。
この時点で最終列の並びは右からフサノフ、ロドリ、ベルナルド・シウバ、グエイとなり、通常CBがいる位置がボランチふたりとなっている。
この循環するポジション移動によるビルドアップは、アーセナルをかなり混乱させていた。何度かアーセナルのハイプレスに引っかけられる場面もあったが、大胆なビルドアップはトータルで効果的だった。シティがこれをできるのは、ボランチがロドリとベルナルド・シウバだからだ。
【技術と頭脳の重要性を体現する存在】
ロドリ、ベルナルド・シウバはボールを持てばまず失わない。もともとMFをDFラインに下げるのは位置的変化による優位性を得るためだが、ロドリとベルナルド・シウバによって質的優位も確保できるわけだ。
パリ・サンジェルマンのヴィティーニャが、いつでもどこでもボールを受けて失わない優位性を生かしてマンマークのハイプレスを無効化しているが、シティはそれをロドリ、ベルナルド・シウバのふたりにした。これによってCBのグエイ、フサノフのプレッシャーも軽減される。サイドでパスを受けた際にプレスされても、ロドリやベルナルド・シウバに下げればいいだけ。
マンツーマンでプレスしようとしていたアーセナルだが、ロドリとベルナルド・シウバを捕まえることができず、選手間の距離が開いてプレス強度が拡散してしまっていた。
この循環式ビルドアップにおいて、ロドリとは時間差で最後尾に下りてくるベルナルド・シウバは、ボールを前進させたあとは再び前線のサポートへ動く。尋常ではない運動量なのに、最後までフィールドに残っていた。
ベルナルド・シウバが今季限りでの退団を発表したのは、アーセナル戦の直前だった。
ベンフィカからモナコを経てシティに移籍してきたのが2017年。以来、プレミアリーグ優勝6回、FAカップ優勝2回、EFLカップ優勝5回、チャンピオンズリーグ優勝も経験した。今季はキャプテンを務め、ジョゼップ・グアルディオラ監督から全幅の信頼を置かれている。
ウイング、センターフォワード、インサイドハーフ、ボランチとDF以外のあらゆるポジションでプレーしてきた。ボールを隠しながらクルクルと回るドリブルは奪い取るのがほぼ不可能。左足から繰り出すパス、シュートの精度は抜群。さらに疲れ知らずの運動量と献身性、アーリング・ハーランドが「最も賢い選手」と評したようにインテリジェンスの塊。ビルドアップの過程での一時的とはいえ、ついにCBでもプレーするようになった。
屈強なフィジカルエリートが集結しているプレミアリーグのなかで、173センチ65キロのベルナルド・シウバは場違いに思えるくらいだが、大きなケガもせずほとんどの試合にプレーし続けてきた。まともに当たられないからだ。フィジカル要素がどんどん肥大していく現代サッカーでも、依然として技術と頭脳の重要性を体現する存在と言える。
【完全なチームプレーヤーだが個性的】
ポルトガルは技巧と知性のMFを数多く輩出する土壌がある。
技巧派MFの量産という点では隣国のスペインもそうだが、組織のなかの歯車としてプレーするスペインに比べると、ポルトガルはより技巧的で創造的だ。スペインは戦術が発展していてパスワークに特化したタイプが多いが、ポルトガルは個の能力で打開を図る。正しいプレーがあらかじめ決まっているスペイン、その選手の正しさが問われるポルトガルという違いがあるかもしれない。
ベルナルド・シウバは完全なチームプレーヤーだが、同時に極めて個性的だ。彼しかできないドリブル、局面の読み方で解決していく。ヴィティーニャやブルーノ・フェルナンデスも同じで、チームの歯車として機能するが、それぞれ代替の効かない部品でもある。
ベルナルド・シウバはどんなチームのどんな役割でもこなせる非常に便利な選手なのだが、他の選手には真似のできないやり方でそれを全うする。だからチームにとって必要という以上の、不可欠な存在になっているし、なってしまうのだ。
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