仕事や生活において、どうすれば目標を達成できるのか。経営コンサルタントの横山信弘さんは「いくら目標を立ててもうまくいかない原因のほとんどは、努力の量ではなく目標の立て方にある」という――。

※本稿は、横山信弘 『正しく立てて成果につなげる 目標達成の全スキル』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
■うまくいかない原因は「目標の立て方」にある
私が「絶対達成」をコンセプトにコンサルティングを始めて20年以上が経ちます。私のセミナーには、経営者やマネジャーだけでなく、若手社員、学生、主婦など、幅広い層の方々が参加されます。
ところが、みなさんの悩みはいつも同じです。
「なかなか目標が達成できない」

「どうやって達成したらいいのかわからない」
この声は20年以上前から、ほとんど変わっていません。
なぜ、目標は達成できないのか? 理由はいくつも考えられます。しかし、多くの場合、その原因は「目標の立て方」にあります。もし、正しく目標を立てることができたなら、その時点で目標の半分はすでに達成していると言っても過言ではありません。
“Well begun is half done.”

(うまく始めたら、半分は達成したも同然)
というイギリスの格言があります。私はこの言葉がとても好きです。
目標達成もまさに同じです。「うまく目標を立てられたら、半分は達成したも同然」と言えるでしょう。

■努力しているのに成長できない理由
先日、印象的な相談がありました。20代後半の会社員Aさんは、毎年のように「成長したい」と言い続けています。
「今年こそは、もっと成長して、会社で活躍できる人材になりたいんです!」
と同僚たちに宣言していました。その意欲は本当に素晴らしいことです。週末にセミナーへ通い、独自の「成長シート(マインドマップ)」も作成して運用しています。なかなかここまで前向きに取り組める人はいません。しかし、私は昨年も、一昨年も、その前の年も、同じ言葉をAさんの口から聞いています。
Aさんに尋ねました。
「こんなに努力しているのに、なぜ達成できていないと思いますか?」
すると、彼はこう答えました。
「毎年いろいろとがんばっているつもりなのですが、なかなか期待通りの成果が出ていません。読書もしていますし、異業種交流会にも参加して人脈を広げています。でも、自分でも“成長した”という実感が持てないのです」
たしかにAさんの意識は高く、行動スピードも速い人です。
それなのに、期待した成果にはつながっていないようです。さらに私は尋ねました。
「ところで、あなたの“目標”は何ですか? 成長することは“目標”ではなく、“目的”ですよね?」
Aさんは、ハッとした表情を見せました。
この瞬間、Aさんは目標達成できない本質的な理由に気づいたのです。すなわち、「目的」と「目標」を混同してしまっている。その違いを正しく理解できていないことが、多くの人の目標達成を阻んでいる根本的な問題です。
まずは、この「目的」「目標」、さらには「指標」の違いを明確にしていきます。ここを整理することが、目標達成の第一歩です。
■「測れない目標」は振り返れない
目標が達成できないもう一つの理由は、「測れない」ことにあります。
・成長する

・活躍する

・もっとがんばる
これらはすべて、方向性としては正しい。しかし、達成したかどうかを判定できません。
・どの状態になれば「成長した」と言えるのか?

・誰が見ても「活躍している」と言える基準は何か?

・いつまでに、何を達成すればいいのか?
ここが曖昧なままでは、振り返りも改善もできません。
振り返れないものは、成長しないのです。
目標とは、「未来の理想像」ではなく「検証可能な仮説」です。
たとえば、「営業として成長したい」ではなく、「3か月以内に新規契約を月3件獲得する」
ここまで具体化して、はじめて達成か未達かが判断できます。そして、未達であれば改善策を考えられるのです。
測れない目標は、努力を感覚の世界に閉じ込めます。測れる目標は、努力を進化させます。
■必要なのは具体的なゴールイメージ
経験上、達成しづらい目標のパターンは3つあると考えています。これはビジネスの世界だけでなく、日常生活においても共通です。
次の3点のような目標の立て方は、できるだけ避けたほうがよいでしょう。
(1)目標そのものがない(目的しかない)
以前、30代の女性がこう話していました。
「今年こそはダイエットを成功させたいんです」
そこで具体的な目標を尋ねると、次のような返答がありました。
「特に決めてないんです。
なんとなく太ってきたから、痩せたいなって」
期限も、目標体重も決めていない……。これは前節で紹介した「成長したい」と同じパターンです。
「ダイエットをする」「健康になる」というのは目的です。その目的を実現するために、どんな目標を立てるのかを決めなければいけません。
同様に、
「将来、課長になる」

「お客様に驚きと感動を与えるビジネスパーソンになる」
といった宣言も、方針やスローガンに近く、具体的なゴールイメージが見えません。
■「向上」「削減」は抽象ワード
(2)目標が曖昧
ある課長が、年間目標を「重点商材の品質アップ」としました。一見すると明確でよさそうですが、これも曖昧な目標です。どのような状態をもって「品質が上がった」と判断するのかが示されていません。
「生産性アップ」「経費カット」「市場拡大」「離職率削減」なども同じです。「アップ」「ダウン」「向上」「削減」といった表現はよく使われますが、抽象的すぎて行動に落とし込みづらいのです。
■「したくない」では現状維持が限界
(3)目標が否定形
意外と多いのが「否定形の目標」です。
「貧乏にはなりたくない」

「部下に嫌われるような上司にはなりたくない」
こうした言葉は、“何をしたいのか”ではなく、“何を避けたいか”を示しています。

しかし、「避けたい」という思考だけでは、現状維持が精一杯です。
「お金持ちになりたいわけではない。貧乏にさえならなければいい」という発想では、意外と年収は上がらず、将来の不安も消えないものです。
もし「貧乏になりたくない」のであれば、「10年後、年収700万円にアップする」という肯定形の目標を立てましょう。そうすれば、「そのために何をするのか(転職か、昇進か、副業か)」という具体的な行動が浮かび上がります。
■“Why”と“What”を取り違えてはいけない
ある30代の女性マネジャーが、ため息をつきながらこう言いました。
「健康的な体を手に入れたいんです」
たしかに素敵な言葉です。しかし、もう少し具体的にどうしたいのかを尋ねると、急に言葉に詰まってしまいました。
これは、多くの人が陥る典型的なケースです。
「健康的な体を手に入れる」というのは、一見すると“目標”のようですが、実は“目的”です。
では、目的と目標の違いとは何でしょうか?
わかりやすくするためのキーワードは、「なぜ?」と「何を?」です。
目的(Why)=「なぜ、それをするのか?」

目標(What)=「何を、どこまでやるのか?」
目的は抽象的で、広い意味を持つものです。

たとえば「健康的な体になる」「信頼されるリーダーになる」「お客様に喜ばれる存在になる」などが目的にあたります。
一方、目標は具体的で、計測できるものです。
「3カ月で5キロ痩せる」「2年後、課長になる」「年間売上2億円を達成する」といったハッキリしたもの。
これを山登りでたとえてみましょう。
「目的」は、「あの美しい山に登って朝日を見ること」。
「目標」は、「午後3時までに八ヶ岳連峰の最高峰、赤岳の山頂へ到着すること」。
こう考えるとハッキリします。
■3階層の溝を埋める作業こそが大切
ビジネスでも個人の目標でも、もう一つ大事な要素があります。それが「指標」です。
指標(How)=「どうやって判断するのか?」
目的だけでは行動に落とせません。目標を設定しても、指標がなければ日々の進捗を評価できません。
この3つがセットになって、はじめて私たちは迷わずに進むことができます。
目的と目標の間には、深い“溝”があります。同様に、目標と指標の間にもギャップがあります。この溝を埋める試行錯誤こそが、目標達成の核心です。
目的:健康的な体を手に入れる



目標:3カ月で5キロ痩せる



指標:週ごとの体重変化、食事記録、運動時間
このように3層を明確にすると、「何を」「どこまで」「どうやって」改善すればよいかが見えてきます。
目的だけでは「やる気」はあっても行動が定まらず、目標だけでは「達成感」はあっても意味を見失いがちです。そして指標がなければ、達成を正しく判断できません。
この3つを明確に区別し、つなげることができれば、あなたの行動は“目的に直結する努力”へと変わります。

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横山 信弘(よこやま・のぶひろ)

経営コラムニスト

1969年、名古屋市生まれ。アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。15年間で3000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラム、昨今はYouTubeチャンネル「予材管理大学」を通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモソフトバンクサントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。メルマガ「草創花伝」は3.8万人超の企業経営者、管理者が購読する。著書に『絶対達成マインドのつくり方』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズのほか、『「空気」で人を動かす』などがあり、その多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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(経営コラムニスト 横山 信弘)
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