※本稿は、頼藤太希『会社も銀行も役所も教えてくれない 定年前後の人生戦略』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■今年8月、来年8月の2年連続の見直し
病気やケガをして病院にかかっても、医療費の自己負担額は最大でも3割。年齢や所得によっては1割、2割で済むこともあります。なぜなら、健康保険に加入しているからです。窓口で保険証を提示すれば、医療費を大きく減らすことができます。
しかし、病気やケガの状態によっては、入院や通院が長引き、医療費が高額になってしまう場合があります。そんなときに役立つ制度が、高額療養費制度です(図表1)。
高額療養費制度は、1カ月(毎月1日から末日まで)の医療費の自己負担額が上限を超えた場合に、その超えた分を払い戻してもらえる制度です。
■月約10万円の負担増も
自己負担額の上限は、年齢や所得の水準によって変わります。
たとえば、年収200万円の人(70歳未満)の1カ月の医療費が100万円で、3割負担で30万円を支払ったとします。それでも、この人の自己負担限度額は5万7600円です。
さらに、過去12カ月以内に3回以上自己負担額の上限に達した場合は、4回目から自己負担額の上限が下がります。
なお、高額療養費制度は2026年8月・2027年8月の2回に分けて見直される見通しです(図表2)。
2026年8月からは、現行の所得区分のまま自己負担限度額の上限が引き上げられます。また、新たに「年間上限」が導入され、年間上限を超えて支払った自己負担額が戻ってくるようになります。2027年8月からは、所得区分が細分化され、所得区分によっては自己負担限度額の上限がさらに引き上げられます。
■高額療養費「以外」の費用に注意
高額療養費制度は、いったん先に医療費を支払って、あとから払い戻しを受ける制度ですが、前もって健康保険に「限度額適用認定証」を申請しておけば、自己負担分だけの支払いで済ませることもできます。あとから戻ってくるとはいえ、一時的に立て替えるのが大変な場合もあるでしょう。そんなときに役立ちます。
高額療養費制度はとても心強い制度ですが、カバーできない費用もあります。たとえば、入院中の食事代、差額ベッド代、先進医療にかかる費用などです。入院中の食事代は、基本的に1食あたり460円となっています。
また、差額ベッド代は、希望して個室や少人数部屋(4人まで)に入院した場合にかかる費用です。金額は人数や病院によっても異なりますが、中央社会保険医療協議会の「主な選定療養に係る報告状況」によると、2024年8月1日時点では、1日あたりの平均は6862円となっています。もっとも、個室の平均が8625円と突出して高く、2人部屋だと3149円、4人部屋は2780円となっています。
そして先進医療とは、厚生労働大臣が認める高度な技術を伴う医療のことです。先進医療の治療費は健康保険の対象外なので、全額自己負担です。
■介護保険の「第1号被保険者」になったら?
日本では40歳になると介護保険に加入し、介護保険料を負担します。とはいえ、40歳から65歳未満までの間は、介護保険の「第2号被保険者」。第2号被保険者のうちは、保険料を支払っていても、介護保険による介護サービスを利用できるのは16の特定疾病に該当したときのみとなっています。
しかし、65歳からは介護保険の「第1号被保険者」です。第1号被保険者になると、各種介護サービスの対象となります。
介護サービスは、介護認定を受けることで利用できるようになります。
介護サービスの利用限度額は、要介護度に応じて決まります。要介護度が高いほど、利用限度額も高額になります。また、利用者の所得によって自己負担の割合が変わります。通常は1割負担ですが、所得が多い人は2割、3割負担となります。
介護サービスを利用し、1カ月の自己負担額が一定の上限額を超えた場合に、その超えた部分が戻ってくる「高額介護サービス費」という制度もあります。上限額は住民税が課税される世帯(現役並み所得者がいる世帯)で14万100円、住民税非課税世帯で2万4600円となっています。高額療養費制度の医療費と同様に、介護費用の負担も一定の上限額までに抑えられる、ありがたい制度といえます。
ただし、介護保険料は滞納すると延滞金が発生するうえ、介護保険のサービスが全額自己負担になるなどの不都合が生じます。最悪の場合、財産の差し押さえといったことも起こりえます。
忘れずに支払ったうえで、将来介護が必要になったときにはしっかり活用するようにしましょう。
■医療費と介護費を合算できる制度も
医療費は高額療養費制度、介護費は高額介護サービス費制度によって、1カ月の負担を一定額に抑えることができます(図表4)。しかし、長期間にわたって医療費と介護費がかかり続けると、家計の負担が大きくなってしまいます。
そんなときに利用したいのが高額医療・高額介護合算療養費制度です。
高額医療・高額介護合算療養費制度では、同一世帯で毎年8月1日~翌年7月31日までの1年間にかかった医療費・介護費の自己負担額の合計額が上限(自己負担限度額)を超えた場合、その超えた金額を受け取ることができます。
高額療養費制度や高額介護サービス費制度を利用して自己負担が減っても、自己負担額が高額になる場合もあります。高額医療・高額介護合算療養費制度を利用すれば、その自己負担をさらに軽減できるというわけです。
■合算制度も今年夏以降に限度額見直し
高額医療・高額介護合算療養費制度の自己負担限度額は、年齢や世帯の所得によって異なります。年間の医療費・介護費を計算して、制度が利用できるか確認しましょう。
ただし、高額療養費制度・高額介護サービス費制度の対象外となっている費用は、高額医療・高額介護合算療養費制度でも対象外です。
高額医療・高額介護合算療養費制度の申請は、公的保険の窓口で行います。国民健康保険や後期高齢者医療制度の場合はお住まいの市区町村、協会けんぽや健康保険組合などの場合は勤務先を通じて申請を行います。
2026年夏以降、高額療養費制度の見直しに合わせて本制度の負担限度額についても引き上げが検討されています。
■「世帯分離」で自己負担額を減らす
「世帯分離」とは、同居している家族が住民票の世帯を分けることです。世帯分離をすることで、介護費用を削減できる場合があります。もちろん世帯分離をしたあとも、そのまま同居していて構いません。
「高額介護サービス費」の自己負担の上限額は、本人の所得で決まる場合と世帯の所得で決まる場合の2つのパターンがあります。
たとえば、介護サービスを受ける親を世帯分離して、親単独の世帯にすれば、世帯としての所得が大きく減るため、高額介護サービス費の自己負担を大きく減らせる、というわけです。
介護サービスを受けている親(住民税非課税)が、住民税が課税される世帯と同一世帯の場合、高額介護サービス費の負担上限額は月額4万4400円になります。しかし、世帯分離をして親だけの世帯になった場合、高額介護サービス費の負担の上限額は月額2万4600円となります。
さらに、仮にこの親の前年の年金収入とその他の所得金額合計が80万円以下だったとした場合、負担の上限額は月額1万5000円になります。同じ介護サービスを受けていても、負担が月約2万~3万円、年間で約24万~36万円ほど減らせることになります。
■世帯分離は損得をトータルで考える
世帯分離は介護費用の削減にとても役立つ方法なのですが、欠点もあります。まず、高額療養費制度や高額介護サービス費の「世帯合算」はできなくなります。
高額療養費制度や高額介護サービス費は、世帯ごとにかかった費用を合算して申請することができます。しかし世帯分離をすると、同居していても親と子で別の世帯になってしまいますので、合算できなくなってしまうのです。とくに2人以上介護している場合には、かえって損になる可能性があります。
したがって、世帯分離を検討する場合には、損得をトータルで考える必要があります。
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頼藤 太希(よりふじ・たいき)
経済評論家・マネーコンサルタント
Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。日経CNBCコメンテーター。慶應義塾大学経済学部卒業後、アフラックにて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に現会社を創業し現職へ。日本テレビ「カズレーザーと学ぶ。」、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など書籍110冊超、累計200万部。日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。X(@yorifujitaiki)
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(経済評論家・マネーコンサルタント 頼藤 太希)

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