投資した株式の株価が下がったらどうするか。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「多くの人は、保有株の状況が変化したとき『売るべきか』『保有を続けるべきか』迷ってオロオロしてしまう。
私はあることを意識することようになって、判断に迷うストレスが大きく軽減された」という――。
■減配発表で、資産10万円減…
2026年4月10日、高配当株として人気の大手住宅メーカ「タマホーム」が、減配を発表しました。それまでは2026年5月期の予想配当は196円だったのが、125円に下方修正されたのでした。これは前期(2025年5月期)の配当195円から、4割近くの大幅減額です。
当然、翌営業日には株価は暴落。減配の発表直前は4060円だった株価は3655円と約10%もの下落となり、その後も目立った反発もなく、5月11日時点では3620円と、株価はさらに下落しています。
私は200株保有しているので、発表直前のピークからは、約10万円もの資産減となってしまいました。
■減配が予想された、3つの理由
もっとも、今回のタマホームの減配は、ある程度は予想されていたことではありました。その理由は、大きく3つ。
1つ目は、業績の悪化。
業績悪化によって利益が落ち込めば、(原則として、利益が元となる)配当金の支払いは怪しくなるのは当然です。
タマホームはローコスト・高品質住宅を売りに、約10年前から急激な増収増益モードが続いていたのですが、2~3年前をピークに業績は落ち込み始めていました。
そう、タマホームの業績悪化はいまに始まったことではなかったのです。
とくに2025年5月期の利益は前年から大きく落ち込み、そして、昨今のインフレや人材不足といった逆風からも、今後の業績見通しも不安視されています。
2つ目は、配当性向の異常な高さ。
配当性向とは、利益のうち、どれだけの割合を配当金に回したのかの割合で、一般的には、30%程度が目安とされています。それがタマホームの配当性向は約380%(2025年5月期)と、異常なまでの高さとなっていました。
配当性向が100%を超えているということは、その年の利益では配当金は賄いきれず、それまでの利益の蓄積を食いつぶしている状態です。これは異例とも言える状態で、通常、それが何年も続くとは考えづらいわけです。
さらなる利益減が見込まれる2026年5月期も、引き続き多額の配当金を出せば、配当性向はさらに上がることから、これはさすがに減配濃厚かと囁かれていたのでした。
3つ目は、累進配当は掲げていないこと。
累進配当とは、配当金は減らさない、すなわち、配当金は前期と比べ、少なくとも維持もしくは増配をするという配当方針のことです。
この累進配当を掲げている企業では、利益の額にかかわらず、配当金の支払いが最優先とされています。
タマホームは前期(2025年5月期)まで、それまでの好調な業績を背景に、そして、業績に陰りが出てきてからも、長年にわたって(減配はせずに)増配を続けてきましたが、それはあくまでも結果的にであって、この累進配当を掲げていたわけではありません。

つまり、減配はしないという「縛り」は、とくになかったのでした。
■それでも売らなかった理由
もちろん私も、それらの理由から、タマホームはいずれ減配となる可能性は高いと予想はしていました。それではなぜ、減配となる前にタマホームを売らなかったのか、そして減配となっても(さらなる減配の可能性もあるのに)まだ持ち続けているのか?
それは、私がタマホームを買った理由は「配当金目的」ではなく、「株主優待目的」だったからです。
実は、タマホームは優待銘柄でもあり、100株保有で年間2000円相当(3年以上保有で4000円相当)の株主限定特製クオカードが受け取れます。それはタマホームCMのタレント・スポーツ選手などがデザインされた(2025年5月期はロゴのみ)非売品のオリジナル商品で、毎回異なるデザインを楽しみにする株主は少なくありません。
そんな株主優待目当てに、私は10年程前にタマホームを買ったのでした。ちなみに、当時のタマホームの配当金は15円で、配当利回りは2%台半ばだったと記憶しています。
ですので、当時のタマホームは決して高配当株ではなく、私は配当金(配当利回り)についてはさほど気にはしていませんでした。
それがちょうど私が購入したあたりから、タマホームは急激な増収増益モードとなり、そんな絶好調な業績とともに配当金もグングン増え続け、結果として、高配当株となったのでした。
もっとも、株主優待目当てで買った私としては、それは「棚ボタ」に過ぎません。ですので、今回の減配にも、狼狽えて売ることなく、心乱れることなく、冷静に見守っているのです。
■もし、株主優待が廃止となったら?
というわけで、今回の減配には「動かず」の私ではありますが、もし、株主優待が廃止となれば、もしくは廃止が濃厚と判断すれば、私は迷わずタマホームを売ることでしょう。

なぜなら、前述のとおり、私はタマホームを「株主優待目的」で買ったからです。ちなみに、業績の悪化は、(減配のみならず)株主優待廃止の大きな要因でもあります。
業績が悪化すれば、それは企業にとって、株主優待にかかるコストを負担するだけの余裕がなくなるからです。ですので、今回の(減配に踏み切るくらいの)業績悪化は、優待の廃止にもつながりかねない状況なのでした。
しかし、私の判断としては、業績悪化で「減配はした」が「優待廃止はしなかった」ことを、よほどのことがない限り、これからも優待は続けるというメッセージだと捉えました。ある意味、配当金を犠牲にして、株主優待を残したと解釈したわけで、すなわち今回の減配は、優待続行のサインとして、むしろ好意的に捉えたのでした(※)。

※これはあくまでも私の判断で、今回の減配を、優待廃止のサインと捉える人も少なくない(投資は自己判断でお願いします)
また、タマホームの株主優待は長年続いており、前述のとおり、オリジナルデザインのクオカードは根強い人気を誇っていること、そして優待利回りは(3年以上保有でも)1%程度と、さほど大きな負担ではないであろうことも、大きな安心材料として捉えております。
よって、株主優待目的の私にとっては、今回の減配で、より継続保有を決心させたわけです。
■買うより、売る方が、難しい
さて、今回のタマホーム減配の件で何が言いたいのかというと、それは、「投資目的がハッキリしていれば、その売り時で迷うことはない」ということです。なぜなら、「その投資目的(買ったときの理由)がなくなったとき」が、売り時だからです。
投資の世界では、買うよりも売る方が難しいと言われています。また、売りができてこそ一人前とも言われることもあります。


実際、何を買うか、いつ買うかを考えるのは楽しい作業でもありますが、保有銘柄のうち、何を売るか、いつ売るかを考えることは大きなストレスと思う人は多いのではないでしょうか。
それゆえ、売り時についてはいろいろな方法や考え方があるわけですが、その中でも、有力かつ単純明快な方法が、この「投資目的がなくなったとき」なのです。一般に、その売り時を考えるきっかけは、保有銘柄に絡む状況が大きく変わったときでしょう。
■投資目的が明確であることが大事
そのとき、さしたる投資目的がなければ(とくに目的をもって買っていなければ)、その状況の変化に狼狽え、その場の雰囲気や流れだけで判断し、後で後悔する可能性は高いでしょう。
しかし、投資目的がハッキリしていれば、あらためて、その目的といまの状況を照らし合わせることで、判断すべきポイントが明確となります。たとえば配当金目的であれば配当金の動向、株主優待目的であれば株主優待の動向と、その判断の視点がハッキリすることで、納得した判断を下せるようになるでしょう。
■購入段階でも、大いに役立つ
なお、その投資目的の候補としては、配当金(高配当利回りだから)や株主優待(株主優待が魅力だから)以外にも、「事業の強みに惹かれたから」「増収増益を続けているか」「株価が割安だから(例:PBRが1倍を下回っているから)」などが考えられます。
もし、タマホームの強みであるローコスト住宅に惹かれて投資をしたのであれば、その強みがなくならない(と判断している)限り、配当金が減らされようが、株主優待が廃止されようが、業績が悪化しようが、持ち続ければよいでしょう。
もっとも、私個人的な見解としては、昨今の物価高・人材不足を鑑みれば、ローコスト住宅を貫くことは厳しく、近いうちに、その強みは方向転換せざるを得ないのかな、とは思ってはいます。ですので、もし、私がローコスト住宅という強みをもってタマホームを買っていたなら、いまごろは売っている可能性は高いかと思います。
いずれにせよ、「投資目的がなくなったときに売る」ということは、逆に言えば、その投資目的がなくならない限り、ずっと保有し続けることになります。
すなわち、その銘柄とは一生付き合うかもしれないわけですから、おのずとその購入段階で、しっかり吟味する(勢いや気分に任せた、雑な選び方を避けることができる)ことでしょう。

■精神衛生上の、計り知れないメリット
もっとも、この「投資目的がなくなったときに売る」ことによって、その運用成績が向上する、儲かる確率が上がるというわけではありません。この方法(考え方)の効用は、あくまでも、精神的なものです。
前述のとおり、大きなストレスのかかる売り時において、その判断すべきポイントが明確となり(視点がハッキリすることで)、納得した判断を下せるようになることは大いにストレス軽減となり、その精神衛生上のメリットは計り知れないはずですから。
私自身、かつては、「この銘柄、いいな」程度の意識で、とくに投資目的を持たずに購入することが少なくありませんでした。
なので、その購入後に、利益の下方修正やら減配やらで株価が下落すれば、これはもう売ったほうががいいのかとオロオロし、また、株価が高騰したらしたで、このタイミングで売ったほうがいいのかと、やはりオロオロしていました。
つまり、その状況が大きく変化するたびに大きく狼狽え、しんどい思いをしていたわけです。
しかし、この「投資目的がなくなったときに売る」ことを意識するようになって(投資目的をしっかり意識して購入するようになって)、たとえ状況が大きく変化しても、その状況を投資目的と照らし合わせ、その売り時を冷静に考えることができるようになり、精神的にグッと楽になりました。
売り時に悩むことの多い人にとって、この方法が1つの解決策として参考になれば幸いです。

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藤原 久敏(ふじわら・ひさとし)

ファイナンシャルプランナー

1977年大阪府大阪狭山市生まれ。大阪市立大学文学部哲学科卒業後、尼崎信用金庫を経て、2001年に藤原ファイナンシャルプランナー事務所開設。現在は、主に資産運用に関する講演・執筆等を精力的にこなす。また、大阪経済法科大学経済学部非常勤講師としてファイナンシャルプランニング講座を担当する。
著書に『株、投資信託、FX、仮想通貨… ファイナンシャルプランナーが20年投資を続けてみたらこうなった』(彩図社)など。

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(ファイナンシャルプランナー 藤原 久敏)
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