次代を担う逸材たち~アマチュア野球最前線
第10回 関東学園大附・田村瑛輝
4月22日。群馬県伊勢崎市のセブンナッツスタジアムで行なわれた春季関東地区高等学校野球大会群馬県予選の3回戦は、水曜日の昼間とあって応援席以外は閑散としていた。
【無名左腕を変えた運命の出会い】
彼らのお目当ては、関東学園大附の田村瑛輝(てるき)だった。188センチ、88キロの恵まれた体格から、やや腕を下げて投げ込むストレートが魅力の左腕だ。
球速は最速140キロだが、ほとんどが130キロ台。それでもスカウト陣からは「球速表示よりも球が来ている印象があります」「指にかかった時のストレートはすばらしい」と、球質のよさを評価する声が聞かれた。
また牽制やフィールディングも、大柄な体格を感じさせないほど軽やかだ。福岡ソフトバンクホークスの福元淳史スカウトは、「やはり、あの体格は魅力がありますし、しっかり体を操れていて器用な印象も受けます」と評し、「球威もありますし、夏以降さらに伸びていきそうな将来性の高さを感じました」と期待を込める。
そんな田村だが、群馬県太田市立毛里田(もりた)中学時代は、決して騒がれた投手ではなかった。
「ある程度は知られていましたが、チームとしてはほとんど勝てておらず、本人も選抜チームに入るような投手ではありませんでした」
そう語るのは、昨夏まで関東学園大附の監督を務め、現在も田村の育成に深く携わっている羽鳥達郎コーチだ。
羽鳥コーチは田村について、「左投げでサイズがあり、指先の感覚がすばらしかった」と、その才能に非凡なものを感じたという。
また田村も、「投手育成がうまく、プロを目指すならここが一番近い場所だと思いました」と進学を決めた。
【股関節改善から始まった覚醒】
関東学園大附が甲子園に出場したのは、1986年春の一度のみだが、近年は将来性豊かな選手を複数輩出している。
右腕の西濱勇星は、ルートインBCリーグ・群馬を経て、2022年の育成ドラフトでオリックス入り(現所属はヤクルト)。
その土台となっているのが、前出の羽鳥コーチだ。埼玉県立伊奈学園総合高から一浪を経て早稲田大へ進学。1学年上には斎藤佑樹(元日本ハム)ら3人のプロ入り投手がおり、さらに3学年下には有原航平(日本ハム)もいた。
のちにプロへ進む有原から、ブルペン捕手として厚い信頼を獲得。その泥臭い姿勢を、4年時に就任した岡村猛監督(当時)に高く評価され、東京六大学では代打として6試合に出場した。
ちょうどその頃、関東学園大附から早稲田大へ「教員志望の適任者はいないか」と相談があり、羽鳥コーチは翌春、新卒で同校へ赴任した。その年の秋から野球部監督に就任し、長年にわたってチームを率いてきた。
甲子園から遠ざかっていることもあり、毎年のように全国トップクラスの選手が集まる環境ではない。だが、羽鳥コーチは「言い方に語弊があるかもしれませんが、餅は餅屋です」と、外部の専門家を積極的に招聘。専門性の高いトレーニングを取り入れることで、選手たちの可能性を大きく広げてきた。
田村の場合は、プロ・アマ問わず多くの選手が師事する『DIMENSIONING』のCEOである北川雄介氏、そしてその弟子でもある羽鳥コーチのもと、体の使い方から一つひとつ丁寧に磨き上げてきた。
羽鳥コーチは、「中学時代の田村は、股関節のケガもあって走り方が悪く、X脚気味でした。そういった部分から改善していきました」と振り返る。北川氏も「来た当初は股関節が硬く、体が早く開いて頭を振るフォームだったので、『このままではケガをしやすいだろうな』と感じました」と、当時の課題を見抜いたうえでアプローチを重ねていった。
そうした地道な積み重ねの結果、田村は体を大きく、そして効率的に使えるようになった。高校入学当初は最速106キロだった球速も、現在は最速140キロまで向上。じつに34キロもの伸びを見せた。
また体重も70キロから88キロまで増加しており、今後さらに球速や球威を増していく可能性は十分にある。
【未完の大器が挑む最後の夏】
そして、この急成長を支えている要素として、ふたりの恩師が口を揃えて評価するのが、田村の人間性だ。
「気合いは入っているのですが、気持ちがブレない。やると決めたらやるし、違和感を感じたら、それもしっかり言える。私や北川さんと対等に話ができる、精神的に自立した選手です」(羽鳥コーチ)
「真面目でしっかりしていることに加え、選手としての成長に必要な"他者に気を取られない"ところがあり、純粋に自らと向き合えています」(北川氏)
また、やや腕を下げた独特の投球フォームについても、「ホワイトソックスで今季台頭してきたノア・シュルツのようなイメージです」と羽鳥コーチが言えば、北川氏も「スライダーがよくなってきているので、オリックスの曽谷龍平投手をイメージしています。この投げ方でも、フォークをしっかり落とせるようになってきました」と評価。
スカウトの間では「超素材型」との声もあるように、安定感や完成度という点では、まだ発展途上だ。実際、4月25日の準々決勝の前橋商戦では、3回2/3を投げて8安打7失点で降板。悔しさの残るマウンドになった。
それでも、羽鳥コーチが「誰よりも勝ちたい気持ちを持っている選手です」と語れば、田村自身も「目標はプロ入りと甲子園です」と言うように、将来だけでなく、夏の大会もしっかり見据えている。
羽鳥コーチは、「投手陣のなかで、田村だけ別メニューにしていた時期もありました。これだけ田村の育成にエネルギーを注いでいるのも、今の群馬で勝ち抜くには、プロに行くレベルの投手が必要だからです」と明かす。
伸びしろたっぷりの大型左腕は、これからどんな成長曲線を描いていくのか。この夏の高校球界を沸かせ、やがては日本球界全体にその名を轟かせる存在へと飛躍していってほしい。










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